今日は文化庁が言葉の本来の意味を解説しているページ、「ことば食堂」からご紹介します。
ご紹介する内容は、昨年12月18日に公開された第17話「琴線に触れる」」です。
「琴線に触れる」とは、本来どのような意味でしょうか?
広辞苑には、「琴線(きんせん)」・・・①琴の糸。②感じやすい心情。心の奥に秘められた、感動し共鳴する微妙な心情。「―に触れる」と説明しています。
辞書に説明しているように、「琴線」は、元々は琴の糸のことで、それを、物事に感動する心の奥の心情を表すものとして比喩的に用いる言葉なのです。
一部の辞書には、注意として、「琴線に触れる」を、触れられたくないこと。不快な話題に触れる意で使うのは誤り。と書いており、例えば、「 私の一言が彼の琴線に触れたのか、急に怒り出した」などの表現は誤りと説明しています。
・昨年12月18日に公開された「ことば食堂」の「琴線に触れる」の動画です。
ところが、文化庁が平成19年度に行った「国語に関する世論調査」で、「琴線に触れる」の意味を尋ねたところ、結果は次のとおりでした。
(ア) 怒りを買ってしまうこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35.6%
(イ) 感動や共鳴を与えること・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37.8%(本来の意味)
(ア)と(イ)の両方の意味で使う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.4%
(ア)、(イ)のどちらの意味でも使わない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.6%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24.6%
全体では、本来の使い方である(イ)の「感動や共鳴を与えること」と回答した人が37.8%、本来の使い方ではない(ア)の「怒りを買ってしまうこと」と回答した人が35.6%で、その割合に大きな差はありませんでした。
「琴線に触れる」が「怒りを買ってしまうこと」という意味での用法が広がっている理由としては、目上の人などの怒りを買ったときなどに使われる「逆鱗(げきりん)に触れる」という語との混同などがあるとも考えられるということです。
では、正しくはどのように使用したらよいのでしょうか?
例えば、子供のたどたどしい言葉であっても、人の胸の奥の心情を揺り動かし、感動の涙を誘うことがある、ということを「琴線に触れる」を使って、「片言でいう小児の言葉が胸中の琴線に触れて、涙の源泉を突くことがある。」と、表現することもできます。
このように「琴線に触れる」の本来の意味は、感動や共鳴を与えることです。
「触れられたくないこと」、「不快な話題に触れる」の意味で使うのは誤りです。
十分気をつけたいですね。