ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

チェンジリング

2009年03月12日 | 映画


昨日の続き

貸しきり状態のレイトショーというのも落ち着かない
が、それより何とかしてほしいのは暖房。
一人しかいないからか、効きが非常に悪い。
足元が寒いのだ。
しかし、我慢するしか無さそうだ。
ほぼ定刻どおりに映画は始まった。

この「チェンジリング」、いろんな評を見る限り、かな
り評価が高い。
あまりにも評判が良いと、むしろ警戒してしまうのが悪
い癖だが、イーストウッド好きとしてもやはり今回の評
価の高さはちょっと行き過ぎではないかと思っていた。
そもそも、一般受けはあまりしないのがイーストウッド
だ。
例えばアカデミー賞の「ミリオンダラーベイビー」、皆
本当に良いと思ってるのだろうか(個人的には<ミスティ
ックリバー>の方が良い)。
どうも、イーストウッドの名前だけで無理して評価して
いるのではないか、と思えるような昨今の状況。
評価されるのは嬉しいのだが、本当に?とつい疑問をは
さみたくなる。

で、今回観ての感想はどうなのかというと、確かに良い。
全編を流れるイーストウッドのリズム。
このリズムが心地良い。
他の作品と同じく、間違いなくイーストウッドの映画
であるし、しかも上位に位置する。
前半20分ほどは、「アンジェリーナ.ジョリー」の熱
演でどうしたものかと思ったが(熱演俳優は好みでは
無い、それとこの女優もともと演技がくどいと思って
いた)、徐々に気にならなくなり自然と引き込まれて
いった。
いわば助走がちょと長かっただけである。

それにしても今回の「アンジェリーナ.ジョリー」は、
アカデミー賞的言い方だと、新境地を開いたなどとい
う表現になるのではないか。
メイクもちょっと凄く、決して美しくしようとしてい
ないところも良い(映画の一要素として)。
しかしこれは、1928年頃の標準メイクでもありそうだ。
市電の走る風景といい、ムルナウの「サンライズ」に
出てくる風景と同じであると思ったら、時代が殆ど同
じだった(こちらは1927年作)。
そんな当時の風俗雰囲気が、実によく表わされていた
と思う。
内容も、猟奇的な事件、或いは精神病院の実態などと
際どいものを扱っているのだが、イーストウッドが撮
るとえげつ無さより何故か気品すら感じる。
謎解き要素もある物語だが、説明調の、物語を物語る
だけの映画に収まらないのがイーストウッドのイース
トウッドたる所以である。
結末がすっきりしないなどと言われるが、それこそが
イーストウッドらしさでもあるのだ。

映画の長さも感じず終わったあと、劇場を出でると、
そこは係員すらいない無人の世界だった。
無人のシネコン、見ようによっては、ホラーの世界だ。
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