フィクション
どうやら台風もそれたようで、一見梅雨時の空模様のここ松本もこれ以上雨の心配はなさそうである。水量を増した女鳥羽川にはハグロトンボが群れている。<まずは街の情景描写、そしてその時の天気もさりげなく入れる>
今日目指す店は、二ヶ月ちょっと前にオープンしたイタリアン、「トラットリア河西」。この店、前を通るたびに気になっていたが、先日グルメ友達のMちゃんの話を聞いてからというもの、その気持ちを押さえられなくなってとうとう来てしまった。最近はやりの自分の名前を店名に入れる店だが、それほどに自信があるのだろう。<来るまでの過程を少々恩着せがましく、そして、その店に挑んでいく本人の決意を表明する>
ちょっと判り難い、あまり人通りのない場所にあるその店は、通りに面した部分がガラス張りで明るく清潔感が溢れている。<店のロケーションと店の構えを説明する、これは重要な情報であると本人は思っている>
ドアを開けると、店のマダムらしき女性の明るい声が。思うに、店の第一印象はその店の人の最初の対応にかかっている。私はそういうことに関して決してうるさい人間ではないが、時にあまりにひどい対応で食べる気がなくなる時がある。店は人が作るということを店側はもう少し考える必要がある。となんだか柄にもなく力説してしまった(笑い)。<うるさくないという割にはうるさそうなのがこういうことを言う人間の特徴、そして最後に(笑い)を入れて、本人の優位性或いは余裕を強調する>
店には先客が数組、すでに常連らしくランチを楽しんでいる。彼女らの表情を見ていると、何となく店の味も想像できる。ランチメニューはパスタがいくつか選べるようになっている。その中の...を選ぶ。シェフは最初に対応した女性の旦那さんか?半オープンキッチンのような作りで手際よく作業している姿が見える。運ばれてきたパスタは、予想通り優しい味で野菜たっぷりで女性にも嬉しいものだった。<共通するのは、唯一の体験を一般化してそれで全てを判断する所、しかし肝心の料理に関しての描写は抽象的で貧弱、が、同じような料理の写真は無闇に多い>
食後にコーヒーをすすりながら改めて店内を見渡すと、シンプルな店内のところどころにイタリアを思わす小物が。ひょっとしてシェフはイタリアで修行したのかな?それで思わず聞いてみると、果たしてそうであった。道理で一味違ったわけである。<良く質問するのも特徴、それはいろんな情報があればあるほど価値が高まると思っているからだ>
店の外に出ると、そこには台風一過の青空が。気持ちもすっきりお腹も満足。<よかったよかった>