『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』**日航機と海保機の羽田空港事故について**≪2023.冬季号 Vol.118≫

2024年02月23日 | 藤井隆幸

日航機と海保機の羽田空港事故について

藤井隆幸

 正月早々、元旦の能登半島地震に次ぎ、2日には羽田空港における大事故。海上保安庁の事故機は、能登半島地震の支援に向かうことになっていたという。何ともやりきれない気分なのは、多くの人々と共通するものだろうと思う。

 気になるのは、なぜ起きた事故なのかと言うこと。正式な手続きとして、運輸安全委員会(旧 航空事故調査委員会)が結論を出すことになる。それには様々な調査が行われ、今後の安全に生かすことになるというのが立場ではある。国民は即日、結論を知りたがるのではある。期待に応えると言うことか、早々と斎藤国交省大臣は「海保機がC滑走路の手前で待てという管制塔の指示を、離陸許可と認識間違いしたことが原因である。」との会見をした。

 さて、空港管制業務も航空会社も、国土交通省の所管。運輸安全委員会は国土交通省の内局。海上保安庁は国土交通省の外局。意地悪い見方とは思うが、総ては内々なのではある。物語を作り上げるのには、極めて都合が良い。運輸安全委員会くらいは、法務省か総務省の所管であるべきではないのか。

 海保機はC滑走路に40秒もスタンバイしていたという。空港管制官が気付かなかったミスもあるのだろうし、日航機側も確認できなかったのかという疑問もある。素人が論評すべきことではないが、海保機の機長の認識間違い(離陸許可が出たという)が主だった原因とすれば、もっとも事なきことと納められるのではないかとの疑問がある。

 気になるのは、昨年の8~11月に多くの新聞記事があることである。NHKのWeb News(2023年11月30日16時16分)【成田空港 増便など受け入れられる見通し3分の2に 人手不足で】と言う記事だけを紹介する。

 コロナ禍での航空需要の減少で、航空機の地上誘導や荷物の積み降ろし、チェックインカウンター業務などを行う「グランドハンドリング」の従業員の数は4年前と比べて全国で15%近く減少し、人手不足が深刻になっています。……(中略)……その結果、海外の航空会社の新規就航や増便の希望は週152便あり、空港の発着枠には余裕があるにもかかわらず、今年度中に受け入れられる見通しが立っているのは101便と、3分の2にとどまったということです

 これはグランドハンドリング(地上) 諸業務であって、空港管制業務の事ではない。が、コロナ禍での仕事の減少で、新規採用が縮小したのと定期退職があったのが同じであれば、人手不足という、同じことが言えるのではないのか。成田空港や全国の空港であることは、羽田空港でも同じ現象があるものとは思う。

 ここで指摘したいことは、1985年8月12日に起きた日航機123便の墜落事故。さまざま不可解な疑問が多くの人から指摘されている。運輸省航空事故調査委員会(当時)の結論は、以前に着陸時に尻もち事故を起こした機体で、ボーイング社の不適切な修理により、圧力隔壁が吹飛び、垂直尾翼と油圧系統が脱落することにより、操縦不能となった事が原因とされた。

 事故機のボイスレコーダーは回収されており、当初アクシデント時の機長の声が公開されている。聞き取りにくいのだが「オレンジ・エア」と言っているとの意見がある。オレンジ・エアというのは、海上自衛隊の使用する標的模擬ミサイルだという。それが日航機123便と衝突したのではないかと言う疑問。この機長は海上自衛隊出身だったとのこと。オレンジ・エアの存在を知っていたのだろう。

 横田基地の米軍輸送機が事故直後から目撃していたという。当初、米軍は事故機を横田基地で受け入れると連絡してきたという。日本政府は支援を断り、輸送機も撤収したらしい。その後、日航機は御巣鷹の尾根の方向に変更して飛ぶこととなった。

 墜落した場所が中々分からなかったので、救出活動が遅れたというが、F4ファントム戦闘機(自衛隊機)2機が日航機を伴走していたという目撃証言は多くある。地元捜索隊が御巣鷹の尾根に到着した時には、既に自衛隊員が活動していたし、その後撤退したのだという。その自衛隊員は何をしていたというのか。

 航空燃料はナフサである。現場では遺体は不自然に焼けていたという。その匂いは火炎放射器の燃料の匂いだったという専門家の意見がある。生存した4人の証言では、墜落当初は多くの人の声が聞こえたという。生存した人は後部座席にいて、墜落した時には谷の下まで落ちていたのだという。自衛隊が活動していなかった場所だという。

 当時、中曽根内閣は自衛隊増強の方針を打ち出していた時期で、自衛隊が事故を起こしたと言うことはあってはならないのだった。ボーイング社は、当初、事故機の修理は完璧であったと主張していた。その後、我社の修理ミスと認めることとなるのだが。以後、しばらくは日本の旅客機購入がボーイング社に偏ったという、本来の反対の事が起こっていた。田中角栄のロッキード事件を思い出すのではある。

 この日航123便の事故が、何が原因であったのか。書いてきたことが本当かどうか、小生には分からない。とは言うものの、羽田事故は、これから検証されることになるのだが、納得の行く結論になるのだろうか。

 日本政治はもとより、世界でも混乱しているように見える。G7が世界の中心であったように思っていたが、今やマイノリティーだと言われるほどになっている。歴史上の帝国も総ては滅んでいった。驕れる平家久しからずや。欧米天下の思い込みも、崩れる時代の混乱であるのか。マスコミは事実を報道しなくなった。ジャニーズの崩壊のように、悪あがきが続くのではあろう。

  【投稿日 2024.1.14.】

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『みちしるべ』**11月例会「箕面公園紅葉狩り」**≪2023.冬季号 Vol.118≫

2024年02月23日 | 藤井隆幸

 

11月例会「箕面公園紅葉狩り」

藤井隆幸

 2023年11月27日(月)午後1時に阪急電鉄箕面駅に集合して、モミジを堪能してきました。夏の酷暑の影響か、奇麗に発色せず、葉先が枯れているものもあり、例年より見事でなかったのかも。それでも、季節を逸したとの心配もなく、規模の大きさの美しさを堪能してきました。

 昔は名物だったお猿さんも、一切見なかったのは、良かったのか残念だったのか。その代わり、小鹿を何頭か見ることが出来ました。川西自然教室のTさんの説明では、斜面の草木を鹿が食い荒らすので、土が崩れるという問題があるとのこと。確かに岩場でなく土の斜面の草は殆どなくなっていました。

 TさんやS画伯の動植物の解説があり、理科の勉強になりました。また、ご当地マンホールにも着目したりしました。Tさんが「モミジの天婦羅」を買ってくれ、みんなで試食しました。

 最高齢のS画伯は、マイペースで歩けないので、けっこう疲れたようです。今後のフィールドワークは、高齢者モードに配慮しなければならないのかも。最後は池田駅に移動し、ファミレスで盛り上がりました。

           【投稿日 2024.2.9.】

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『みちしるべ』**終戦?敗戦?その報道で気になること**≪2023.秋季号 Vol.117≫

2023年11月17日 | 藤井隆幸

終戦?敗戦?その報道で気になること

藤井隆幸

 ♪夏がく~れば想いだす~ 遥かな尾瀬~♪ でもないのだが、夏の定番報道。戦争の悲惨さ、原爆や大空襲。南太平洋や沖縄での玉砕、シベリア抑留などなど。アジア侵略での、現地の人々へ与えた大量の被害。悲惨さを語継ぎ、次世代へ伝え続けるのは大切な事であることは、否定するものではない。

 気になることは、戦争が何故起こったのか? その歴史的背景は、殆ど語られることの無い日本の報道である。戦争が再び起こらないためには、その真相を充分に検証すべきではないのか? 日本の軍国主義だけが、太平洋戦争になったという、単純なものではあるまい。

 年末になれば「忠臣蔵」がTV番組での定番になる。まっ、TVを見ない生活が数十年になり、時代劇や西部劇が時代遅れになった今日、「忠臣蔵」が年末の定番でなくなっているのかもしれない……。

 「忠臣蔵」が今日に伝えられるのは、江戸末期に「仮名手本忠臣蔵」という歌舞伎が流行したものが走りだと言われている。当時は江戸幕府体制下で、史実であった浅野内匠頭の切腹と、吉良家への討ち入りは、そのまま演じることはできなかった。時代を鎌倉幕府に置き換えたものだそうだ。「仮名」というのは、いろはにほへと……は47音で、討入の志士が47士であったことの隠語であるらしい。

 史実はさておき、松の廊下の刃傷事件が、一方的な裁きになったことがテーマのようだ。当時の喧嘩両成敗という原則に違ったということか。徳川体制が崩れ出す時代に、幕府への反発が、「仮名手本忠臣蔵」の流行になったものと思われる。

 さて、太平洋戦争は真珠湾攻撃とインドシナ半島進駐に始まる。日本の軍国主義が、単に侵略を進めたというのは、余りにも単純化しすぎではなかろうか。忠臣蔵を良しとするならば、帝国日本を無謀な進攻に追い込んだ背景にも触れなければ、歴史に忠実とは言えないのではないか。

 日本の軍国主義・帝国主義を擁護するつもりは毛頭ない。日本との戦争を可能とするために、アメリカは如何なる手続きを行っていたのか。アメリカ国民を戦争に駆り立てるために、為政者のしたことは何か。

 「勝てば官軍(戦勝国)」で、広島・長崎の原爆投下や大都市の絨毯爆撃が正当化されている。非戦闘員の無差別殺傷は、戦後のジュネーブ条約改定で禁止されている。日本の報道は触れていないのだが、世界の大半の国々は、批判的報道もしている。敗戦国であっても、言うべきことは言うべきだと思うのだ。

 現在、ウクライナで戦争が行われている。この報道でも、客観的な報道は一切ないと言っても過言ではない。日本人でウクライナ情勢を正確に知っている人は、どれほどいるのだろうか。国営放送も含めて、マスコミはNATO側からの報道しか一切しない。それを信じている人が殆どであろう。それってプロパガンダそのものだろう。

 戦後、70以上のアメリカが気に入らない政権が、破壊工作を受けている。ベトナムはもとより、イラク・アフガニスタン・シリア・リビアなどは、最近の出来事だ。アメリカの「民主主義」という説教は、アメリカに従属すべきということ。正義とか平等という価値観からは、とんでもなくかけ離れている。

 戦後の日本は、アメリカナイズされてきた。知らず知らずの間に、アメリカの都合がまかり通るようになっている。そのアメリカが、とんでもない状況に陥っている。出口が見えずに暴走しだすかも知れないと思う。

 戦後も急速に発展してきた日本を、アメリカは危険視していたのだと考える。隣国の中国や韓国と仲良くなるのを、懸念してきたように思う。その為に、様々な画策をしてきたのだろう。ところが、ここへ来て日韓関係の修復に熱心である。アメリカの暴走に都合よく、日韓同盟を利用しようとしているのではないか。

 8月の暑い夏、終戦・敗戦報道の中で、益々暑くなる夏と、益々きな臭さが匂う日本情勢に懸念している。マスコミがいよいよアメリカのプロパガンダ一色になることが、非常に懸念材料である。

【投稿日 2023.8.26.】

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『みちしるべ』**5月例会《安治川隧道視察会》報告**≪2023.夏季号 Vol.116≫

2023年08月27日 | 藤井隆幸

5月例会《安治川隧道視察会》報告

藤井隆幸

 安治川隧道は川底を南北に通るトンネルです。1944年に開通した日本初の沈埋トンネルというのも、特筆すべきもの。「沈埋トンネル」とは、海底・湖底などに鉄筋コンクリートなどで出来たパイプを沈め、それを繋いで造るトンネルです。このトンネル使用には、両岸にある5階建ての鉄筋コンクリートのエレベータ建屋、又は93段の階段を使用するのも、非常に珍しいものです。

 JR大阪環状線・西九条駅、阪神なんば線・西九条駅より南へ500mほどの所に、北側のエレベータ建屋があります。大阪市此花区と西区を結ぶ延長80.6mの歩行者・自転車専用トンネルとなっています。

 建設当初は、両岸に歩行者用と車両用エレベータ、それに歩行者用階段を備えていて、最盛期(1961)日交通量は歩行者約8,500人・自転車約4,600台・自動車約1,200台の通行があったそうです。自動車は維持費一部負担で通行料を徴収していたようです。その後、下流の国道43号線安治川大橋が開通してからは、車両利用減少により、1977年に車両の通行は中止となったとのこと。

 とはいえ、歩行者・自転車(押して通行)にとっては、今でもとても便利なようで、視察日の状況はひっきりなしの利用者がありました。深夜はエレベータが休止して、階段のみの利用となるようです。自転車は利用禁止になり、かなりの迂回路となります。防犯対策として、監視カメラが作動していて、24時間の監視がされているようです。

 夏は涼しく、冬は暖かいという、地底ならではの特徴があり、当日は雨模様で外の気温は高くなかったのですが、トンネル内はひんやりとした感じでした。帰りは全員が階段を利用しましたが、結構な運動量でした。お年寄りが深夜に利用することは、余り無いのでしょうが、チョットしんどいですね。

 S画伯の少年時代の生活エリア、Hさんの若かれし頃の仕事地域ということで、ご両人には懐かしさもあったようです。ということで、全メンバーは視察後会議ということで、大衆酒場での交流となりました。

【投稿日 2023.6.8.】

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『みちしるべ』**国土交通省のレベルの低さを笑ってあげましょう**≪2023.夏季号 Vol.116≫

2023年08月27日 | 藤井隆幸

国土交通省のレベルの低さを笑ってあげましょう

藤井隆幸

 かつて建設省・運輸省・国土庁と別れていた官庁が、現在は国土交通省となっています。しかしながら、かつての省庁の仕事が合理的に合体しているかというと、疑問を呈さずにはおられません。建設省の大部分を占めていた道路行政は、国土交通省道路局・都市局として、独立独歩というか、利権範疇確保というか、体制が変わっていないのです。

 省庁再編以前から、公共事業の7割は建設省。その内の4割は道路事業と、田中角栄以後は長きに亙って現在まで変わることが無いのです。これは世界でも珍しいことで、予算配分の官僚の喧嘩を、政治屋が仲裁できないという、まことに稚拙な国家体制ということです。

 結局、日本には政策決定権がなく、アメリカの指令で動くしかないということ。その指令は官僚トップに指令され、その指令を官僚が政治屋に伝えるという、奇妙な構造になっているからです。

 明治以来、富国強兵で鉄道王国を目指し実現していた政策が、戦後、自動車対応型に変更させられたのもGHQの指令であった。そして、日米貿易摩擦の問題で、海部内閣に対して公共事業を膨大化させられ、更に村山内閣で肥大化させられたのも、日米構造協議で官僚たちが呑まされたアメリカ政策でした。

 アメリカは日本の政治を鑑みて指令をしているのではなく、アメリカの都合を押し付けているだけです。80年代頃までは、アメリカにとって急速に経済大国になる日本は、敵性国家であったようなものです。ところが、バブルの崩壊で30年及ぶ日本経済の低迷で、世界的国力のなくなった日本。アメリカも戦後世界の憲兵を自称していた地位から、中国・ロシアの台頭、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)がG7を凌駕し、グローバルサウスと言われる勢力が世界で大きな地位を占めるに至っています。

 危機感を抱いたアメリカは、「日米同盟の強化」という日本の経済・軍事がアメリカの補足をするように仕向けています。これまで、日韓が手を組むとアメリカ離れを起こす懸念から、対立を陰で煽っておきながら、今日、手を組ませる方向転換をしだしています。

 さて、そういった情勢の中で、我らが日本の道路情勢を如何に見るかということです。70年代には、日本の高速道路延長は欧米に比べて短いものでした。しかしながら、急速に進展する日本経済の中で、延長距離で欧米を凌駕してくると、一人当たりの道路延長が短いと言い出しました。

 欧米の人口密度は、日本の様な高密度社会ではないので、一人当たりにすると当然ながら長くなるのは道理です。それが、高速道路が足りないという理論にするのは、あまりにも稚拙というもの。とはいうものの、一人当たりの道路延長でも、欧米に追い付いてしまうと、高速道路が足りないという言い訳が出来なくなりました。

 そこで考えたのが、高速道路の都市間速度が、欧米よりも遅いという理屈です。どのようなデータによって言っているのかは知らないのですが、データを出さないのは道路族の何時もの手法ですね。ここで欧米人が日本に来て不思議に思うことをご紹介します。列車に乗っていて、「この街はどこまで続くのですか?」とよく聞かれます。東京から横浜まで列車が走って、人口が密集する家々が途切れることが無いのです。阪神間で言うと、大阪から神戸まで、森や林があるわけがない。

 欧米は人口密度が少ないのと、歴史的に都市が集まってできた国が殆どで、城を中心に街があるのです。街を出ると、そこは森しかないのです。そのような都市と都市を結ぶ高速道路では、制限速度一杯に走れるのは当然。日本のように、出入路が小刻みにあり、圧倒的な交通量があれば、都市間速度が落ちるのは改善しようもない現実です。

 道路交通工学で以て道路施設を考える欧米では、交通が混雑すると、道路を増やすと逆効果であることは自明なので、そんな馬鹿なことはしません。交通量を削減することを考え、例えば通行料金を取ったり値上げしたりします。

 アメリカは既に、日本の公共事業を増やせとは言っていません。でも、日本の官僚機構が、既得権益を守ろうとする属国棄民政策が止められない。アメリカは中露を念頭に、軍事予算を要求するようになりました。道路族と防衛族の喧嘩を、アメリカは如何に支配するのでしょうか。

 欧米との違いを言うのなら、欧米の道路は長き歴史の中で建設されたものです。道路メンテナンスも考慮に入れた中でのもの。ところが、日本は急速に建設した高速道路網。特に高架橋やトンネルが多用されており、使用不能の老朽化時期が急速に固まって発生する事態に遭遇しています。

 道路族よりも防衛族にシフトが考えられる中、新設道路を考える余地は全くないということです。維持管理もままならない事態になっていることを自覚すべきですが、古き良き時代に浸っている道路族。地元に高速道路計画が降ってくると、一世一代の金儲けなどと、淡い考えを持つ時代ではなくなっていることを、高学歴の頭の悪い官僚たちに、みなさん、憐れみをもって教えてあげましょう。

【投稿日 2023.6.10.】

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『みちしるべ』**3月例会(旧黒川小学校見学)に参加して**≪2023.春季号 Vol.115≫

2023年05月24日 | 藤井隆幸

3月例会(旧黒川小学校見学)に参加して

藤井隆幸

 3月例会は3月28日(火)でした。記憶の確かなうちに、書いておかなければならないと思いつつ、今になってしまいました。廃校になった旧黒川小学校(現公民館)の見学会ということだったのですが、色々ありましたので有意義でした。

 旧黒川小学校の事については、「終戦直後に建設された黒川小学校保存について」(『みちしるべ』2022年夏季号 Vol.113)という記事を、田中廉さんが書かれているので、割愛させていただきます。要するに、文化財的価値のある木造校舎を、開発のために取り壊す話が出ているとのことで、保存運動を展開されているということです。

 さて、久しぶりに集合場所の[能勢電鉄]妙見口駅まで出かけました。街中の立派な駅舎があるということではなく、昔懐かしい駅ではあります。とは言うものの、自動改札機が完備され、時代を感じさせます。改札建屋には、燕が巣作りをしていて春を感じさせていました。ヨッシーが土筆(つくし)を見つけて採取していたところ、何の問題もなさそうだったのですが、「そちらのホームには入らないで下さい」と駅員さんに言われ、収穫はそこまでに。

 出席届のあった5名がそろったので、現地まで田舎道を進むことになりました。見知らぬハイカーとすれ違うたびに、お互いに挨拶するなど、心豊かな気分にさせられる道歩き。道中、直径1mで厚さが40cmほどの大きな石傘の灯篭が、いくつかありました。江戸時代のものと思われるのですが、お光を入れるところだけが、御影石の現代的構造物で、何とも違和感がありました。

 田中さんと澤山さんがいることで、さまざまな植物の説明があり、ヨッシーなどは食材の取入れに懸命でした。国道からわき道に入り、台場クヌギを見せてもらいました。ご当地は菊炭(切口が菊の文様)の生産地で、今もわずかに生産されているとのこと。直径5cm程度に成長した枝を切って炭にするので、地上から1m程は30cm径程度の樹木なのですが、その上は小枝ばかりになっていて、とても妙な樹形なのです。生産活動が殆ど縮小しているので、台場クヌギも放置され、枯れてゆくものが多く見かけられました。今は使われていない炭焼き窯も、見ることが出来ました。

 妙見山へのケーブルカーの駅で、トイレ休憩をしました。出したので入れなければならないと、ビールを購入することになりました。どう見ても酒屋さんなどないのですが、その昔、営業していたというお宅に寄り、それぞれビールを購入し、川西自然教室が地主さんに借りている山小屋(というより掘建て小屋)で戴きました。

 旧黒川小学校に着いたのですが、先ずはトイレに。入れたら出すの原理です。現代風の水洗トイレで、川西自然教室のイベントでもよくお借りするとのこと。靴を脱いで廊下を行くと、突き当りに昔のトイレがありました。勿論、汲取り式の完全木造です。今は使われていないので、異臭などもなく、清潔に清掃されていました。

 中には入れなかったのですが、昔そのままの教室があり、木製の机と椅子がありました。我らが小学生の頃に使ったものです。床もガラス扉も、昔のままのものでした。何とも懐かしい限りです。別の部屋は、公民館として使われているので、現代のテーブルとパイプ椅子が設置されていました。

 入口玄関には、昔の児童が書いたものとされる絵画が展示してあり、現代の子供たちと感性の違いがあることを思わせていました。

 帰り道は別ルートを通りましたが、一番若手の平出さんはグッタリ疲れ果てた様子。都会生活では山道を歩かないので、仕方ないのかもしれません。澤山さんがバスの時間が合えばということで、妙見山ふもとまで行き、妙見口駅までバスで帰りました。行きのコースよりも随分遠回りらしいのですが、あっと言う間に到着。

 さて、文化財的木造校舎の保存運動は如何に。日本は地震大国であり、大火も多く発生するお国柄。お伊勢さんなどは、内宮・下宮を交互に30年で建て替える仕来たりです。スクラップ・エンド・ビルドの風潮が色濃くあります。しかしながら、現代日本社会は、文化は金にならない。儲けの方向に、不必要に急伸する流れになっているのではないか。欧米の建物保存する流れを、欧米崇拝日本は真似をしてみては。法隆寺だけが文化財でもなかろうと思いますが。

【投稿日 2023.5.16.】

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『みちしるべ』**母屋が雨漏りで床が抜けているのにサンルームを増設**≪2022.秋季・冬季合併号 Vol.114≫

2023年03月31日 | 藤井隆幸

「母屋が雨漏りで床が抜けているのにサンルームを増設」するような道路行政に気がつかない世論

藤井隆幸

 「道路が出来れば便利」といった単純な思いは、世間に一般的に定着している。「道路を新設すると渋滞が解消される」という誤った考えもまん延している。政・官・財の悪魔のトライアングルが、そうしたプロパガンダを普及させてきたのが実態。

 井の中の局地的な現象では、「道路が出来れば便利」もまんざら嘘ではない。社会全体を見回すと、保有されている自動車を総ての車線に並べると、東京都では5m間隔に並ぶと言われたことがある。殆どの車が車庫に眠っているので、道路の効用がある。少しでも利用率が上がると、渋滞が発生する。新設道路は必ず利用率を上げてしまう。道路が延長するたびに渋滞が多発する統計から、明確に証明されている。

 東日本大震災では、多くの人々が車で避難しようとして大渋滞に陥り、津波に呑まれて殆ど死亡した。盆や正月に高速道路が何十キロもの渋滞になったと騒がれるが、日交通量の数パーセントの交通量が減れば、論理的に渋滞は発生しないことになる。

 江戸時代は各地の大名が謀反を起こさないように、馬車交通などは極力禁止されていた。明治維新後の富国強兵でも、鉄道網の整備に殆どの力は注がれた。戦前まで、日本中どこへでも、鉄道網を利用して行ける国土が完成していたと言っても過言ではなかった。戦後はアメリカの圧力で、道路整備にシフトし、鉄道は急激な廃止に追いやられることになった。

 そんな日本の事情の中で、最近、NHKのウェブニュースに興味深い記事が二つ載った。NHKは世界情勢ではアメリカのプロパガンダ一色ではあるが、道路族連中には耳の痛い話であろう。高速道路が永久に有料になるという話と、修理が出来ずに供用を廃止している橋が多数存在するというニュースだ。

高速道路 有料期限を最大2115年まで延長する方向 無料化厳しく
NHK Web News 2023年1月14日 23時30分

国土交通省は、高速道路を有料とする期限を今の制度の2065年から最大で50年延長する方向で調整しています。高速道路の老朽化に対応するための費用を確保する目的で、今回、期限が大幅に延長されれば無料化の実現は一段と厳しくなります。

全国の高速道路は建設費などの借金を料金収入によって返すことになっていて、今の制度では高速道路の有料期限と借金の返済期間を2065年までと定め、その後は無料化するとしています。

関係者によりますと国土交通省は、有料とする期限と借金の返済期間を最大50年延長して2115年までとする方向で調整しているということです。

高速道路の有料期限をめぐってはおととし、有識者で作る国土交通省の作業部会が、高速道路の老朽化が進む一方、維持や更新などに伴う費用の財源が確保されていないとして、有料期限の延長に向けた検討を求めていました。

国土交通省は関係部門との調整を踏まえ、関連する法律の改正案を今月23日に開会する通常国会に提出する方向です。

高速道路の有料期限は2014年に、それまでの期限を15年延長し2065年までとなりましたが、今回、期限が大幅に延長されれば、無料化の実現は一段と厳しくなります。

 そもそも戦後の財政がなかった時代に、道路建設費用を如何に捻出するか。アメリカの巨大銀行が支配する世界銀行から、高金利の借金をして東名・名神高速などを建設した。借金返済と新たな新設のために、「特定財源制度」「有料道路制度」などが出来た。「特定財源制度」は自動車税・揮発油税・重量税などを道路財源に使うというもの。そして、「有料道路制度」というのが、借金で道路を造っておいて、通行料金で借金を返済するというもの。

 儲かる道路もあれば、採算の合わない道路も政治屋先生の為に造らねばならず、当初の30年で無料にする話は延期に次ぐ延期に。過剰に儲けた料金を新たに建設する道路の不採算に充てる「プール制」ということにした。

 国鉄分割民営化の際、主に新幹線建設で出来た多大な借金24兆円を、国鉄清算事業団に負わせた。電電公社の民営化の際には、NTT株を売却して大儲けをしたことで、JR各社株と800兆円規模の土地の一部売却で、何とかなる筈だった。が、バブルの崩壊で、株も土地も売れなくなり、清算事業団の借金は36兆円に膨らんだうえ、国民負担の税金で解消したのは、忘れられたのだろう。

 道路公団民営化も同じ運命で、高速道路資産と建設借金残高は、国の特別行政法人「高速道路保有機構」が所有している。各高速道路(株)に道路を貸し付け、通行料金の利益の一部を「保有機構」に納めてもらい、建設借金の40兆円を解消するというもの。しかし、現実は国鉄清算事業団と同じ運命。

 高速道路が永久に有料だからと騒ぐよりも、こちらの方が大変だろう。それに関連して、もう一つの記事を紹介する。

修理や撤去できず 1年以上“通行止め”橋 全国265か所 NHK調査
NHK Web News 2023年2月9日 19時20分 

インフラの老朽化が進むなか、国が義務づけた点検で緊急の老朽化対策が必要とされた橋のうち、修理や撤去の対応が取られず、1年以上「通行止め」が続いている橋が、全国で265か所にのぼることがNHKの調査でわかりました。

専門家は「老朽化が集中して予算が確保できない状況が国全体で起きている。すべて維持するのは不可能で、インフラ全体で対応策の優先順位を考えていく必要がある」と指摘しています。

「数が多く手が回らない」「費用が不足」

2012年に中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落し9人が死亡した事故を受け、国土交通省は橋やトンネルについて5年に1度の点検を自治体などに義務づけていて、必要な対応の緊急度合いに応じ4段階で判定しています。

NHKは、国土交通省が公開した去年3月末時点の判定結果のデータを基に、4段階のうち最も老朽化が進んで「緊急に対応が必要」と判定されたもののうち、「未対応」とされている全国の343の橋について調査しました。

その結果、去年12月の時点で、全国41の都道府県の合わせて265の橋で、修理や撤去の対応が取られず、1年以上「通行止め」が続いていることがわかりました。

さらに通行止めの期間が

▽5年以上の橋が131か所、
▽10年以上が33か所、
▽20年以上も7か所あり、

▽最も長いものでは1985年からの37年間にも及んでいて、各地で通行止めが長期化している実態が浮き彫りになりました。

「通行止め」が続いている理由を自治体などに聞いたところ、

▼「橋の数が多く手が回らない」が96か所と最も多く、次いで
▼「対応する費用が不足している」が80か所、
▼「地域住民との合意が形成できていない」が42か所でした。

通行止めの橋のなかには、腐食して一部が崩れたり、台風や大雨で流されたりするケースもありました。

≪途中略≫

専門家「インフラすべて維持するのは不可能」

インフラの老朽化問題について詳しい東洋大学大学院経済学研究科の根本祐二教授は、通行止めのままとなっている橋が全国で相次いでいることについて「現在、インフラの老朽化が集中的に起きていることで予算が確保できず、補修も撤去もできない状況が国全体で起きている。予算を工面できない以上は通行止めにせざるをえないのではないか」と指摘しています。

今後については「橋は1970年代に年間1万本架けられていて、コンクリートの耐用年数が60年だとすると、2030年には1万本を架け替えなければならない。インフラの老朽化は、始まったばかりで、今後さらに深刻になると考えられ、すべて維持するのは不可能だ」と話しています。

そのうえで、どう対応するかについて「日本は人口減少期にインフラの老朽化が集中的に起きているので予算の確保は簡単ではなく、いまあるインフラをたたむという発想が必要になる。その際には橋だけではなく、道路などほかのインフラの予算もあわせて考え、優先順位をつけて対応する必要がある」としています。

そして、利用者の意識も変える必要があるとして「自分の利便性ではなく、地域全体を持続可能にしていくために何ができるのかという観点で考えることが大事だ」と話していました。

 もう、道路建設をしている場合ではないのは明白。とは言っても、国交省の予算では新設道路計画が予算の殆どを占めている。

 「一人当たりの高速道路延長が欧米より短い」とか、「都市間自動車走行速度が欧米より遅い」などと理屈をこねる。少子化傾向と言うものの、欧米よりも人口密度が極端に多い日本において、一人当たりは短いのは当然。可住面積当たりの道路延長では、欧米より桁外れに群を抜いる。都市間は森林の欧米と比べ、都市が連結している日本で、高速移動できないし、その必要もない。

 最近は役に立たない兵器を買えと言ってくるアメリカだが、公共事業の割合を増やせと難癖をつけてきたアメリカ。言われるままに公共事業費を増やしに増やしてきた日本。予算配分を差配できる政治屋が存在せず、官僚の掴み合いの喧嘩を制することも出来ず、「シーリング」という対前年度比しか決められない政治。

 よって、公共事業費の7割は建設省(現国交省道路局など)、その内の4割は道路事業費と、半世紀にわたり変化がない。それも悪魔のトライアングルにとって、維持管理よりも新設が儲かるので……。

【投稿日 2023.2.26.】

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『みちしるべ』**「ありがとう」の言葉を大切に**≪2022.夏季号 Vol.113≫

2022年08月25日 | 藤井隆幸

「ありがとう」の言葉を大切に

藤井隆幸

遅ればせの仁義、失礼さんでござんす。
わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
…………………………
帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎。
人呼んでフーテンの寅と発します。
…………………………
西に行きましても東に行きましても、とかく土地土地のおあ兄さん、おあ姉さんに御厄介かけがちなる若造でござんす。
以後、見苦しき面体(めんたい)お見知りおかれまして、向後万端(きょうこうばんたん)お引き立って、よろしくお頼み申します。

 これは御存じ、映画「フーテンの寅さん」のあいさつの口上です。よく似たものに、任侠ヤクザ映画でも高倉健や鶴田浩二が、同じようなセリフを言っていたように思います。

 この口上、古くは江戸時代の渡世人の世界にあったようです。農家の次男三男は厄介者。田圃を分け与えるのは「たわけ(田分)者」と、忌み嫌われていたようです。そんな者たちが渡世人となって、旅をしたとか。そんな際に、土地土地の親分衆のところで一宿一飯の世話になるのですが、その際の挨拶が口上となって伝わっているのか。挨拶もせずに他所の土地に侵入したなら、切り殺されることもあったそうな。

 今日、挨拶をしないから殺害されることは無いので、その点では良い世になったのかもしれません。が、挨拶というのは大切なコミュニケーションの初歩というところでしょうか。挨拶が上手く行われていると、そのコミュニティーはスムースに交流し合え、その反対ではギクシャクしますね。

 みなさんは、スーパー・レジのお姉さんからは、「いらっしゃいませ」とか「こんにちは」と、必ず挨拶されているでしょう。だったら、あなたは挨拶を返し、レジが済んだら「ありがとう」と言っていますか? こちらは客だからと、高飛車になっていませんか。

 もうお亡くなりになったので、悪口は言いたくないのですが……。三波春夫さんが、「お客様は神様です」と言っていたのには違和感があります。お客だから高飛車で良いのでしょうか。社会主義の国で、店の店員が客に対してぞんざいであることが、日本では良く思われていなかったように思います。

 そもそも人類は生産上の進歩のために、分業を社会的に取り入れたものです。レジのお姉さんは、販売の仕事の一部を、そして貴方は他の仕事を。それぞれの価値の交換を、金銭で交換しているというのが実態です。社会主義国の店員がぞんざいなのを良くは思わないのですが、批判も出来ないのではないのかな。

 現代世界では、多くの人の働きを搾取して、ごく一部の輩が大金をせしめ、大多数の人々は働いた価値の一部しか受け取れない。そんな歪な社会の合理化のために、働く人の連帯を切り崩してきた背景があると思います。働く人同士が、仲間として連帯感を持つ。つまり、レジのお姉さんには「ありがとう」を言う。バスを降りる時、運賃を支払う際に、運転手さんに「ありがとう」と言う。

 話は変わるのですが、最近の自動車交通で、運転手同士が連帯感を持つことが減っているように思います。70年代には免許証を持っている人も少なかったし、自動車の量も少なかった。一種、運転免許証はステータスでもあった。運転手同士は、何か連帯感を感じていたのだと思っています。

 昨今、若者の自動車離れが言われますが、運転免許証など誰でも持っているもの。車の量もやたらと多く、スピードも速まっているし、何よりスモークドガラスで運転手が見えない。その昔は、運転手同士が譲り合い、顔を見合わせて手を振って挨拶したものでした。

 近年、社会問題化している「あおり運転」などは、運転手同士の連帯感の欠如からも来るもののようです。70年代に脱輪した車があったりすると、多くの人たちが集まって、みんなで助け合ったものです。が、昨今、事故があっても関わりたくない人が多いのは残念です。ひき逃げなど、以ての外。

 フーテンの寅さんが多くの人に好かれるのは、「ありがとう」の言葉が自然に定着してる、そんな物語だからなのかもしれません。これから、みなさんも「ありがとう」の言葉を、日々大切に連発しようではないでしょうか。

【投稿日 2022.8.16.】

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『みちしるべ』**世界情勢と参議院選挙2022**≪2022.春季号 Vol.112≫

2022年07月18日 | 藤井隆幸

世界情勢と参議院選挙2022

藤井隆幸

ウクライナ紛争の本質は何か

 日本のマスコミも政府も、「プーチンは悪、ゼレンスキーは英雄」の一辺倒ではある。日本国民の殆どが、それを無批判に受け止めているようだ。が、世界情勢に詳しい向きでは、かなり違った見方をしているように見える。

 そもそもソ連時代(1991年以前)は、ロシアとウクライナの区別は確たるものではなかった。ロシア語を話すウクライナ国民と、ウクライナ語を話す国民が存在する。ウクライナ語はロシア語の方言のような存在という人もいる。

 ソ連崩壊後のロシアでは急速な資本主義化の中で、国営企業を叩き買って急速に富を得たオルガルヒ(新興財閥)と、社会保障の急落による貧困に陥った大多数の国民がいた。それを立て直したのがプーチンで、国民的支持は強い。

 一方、ウクライナはソ連時代には、航空機・宇宙産業や原発・重工業の中心地であった。しかし、資本主義化の中で、国家の体をなさないほどの貧困国になり下がり、現在はネオナチが支配する国になり下がっている。戦争がなかったにしても、国家財政が破綻しているのだ。

 汚職と貧困の中で、アメリカはウクライナに深く介入していた。第二次世界大戦下の民族過激主義者の残党(ネオナチ)を、対ソ連作戦で擁護してきたのもアメリカである。特に2014年の暴力クーデターは、オバマ政権の副大統領であったバイデン(現大統領)と、国務次官補のビクトリア・ヌーランド(現国務次官)が指揮していたと言われている。

世界はウクライナを如何に見ているか

 ウクライナ紛争は今年(2022年)2月24日に、ロシア軍が侵攻した時に始まったと思っている人が多いようだが、既に8年前から始まっていた。2014年の暴力クーデター後に、支持率は数パーセントのネオナチ政党が、国の要職を占めるようになり、ロシア語話者を排斥しだした。ロシア語話者の多い東部と南部は、それに抵抗をし、対してウクライナ政府軍(特に外人傭兵多数のネオナチ・アゾフ大隊)は軍事進攻を開始した。

 このような背景は、西ヨーロッパの首脳陣は百も承知なのだが、ネオナチ政権に兵器を供給し続けている。アメリカの圧力が如何にあるのかは分からない。東ヨーロッパ諸国は、旧ソ連が憎いという感情が強いのは理解できるが。

 そんな中でのアメリカ主導のロシア制裁ではあるが、世界広しと言えども制裁しているのは41ヶ国に過ぎない。アジアでは日本・韓国・シンガポールのみである。岸田首相と林外務大臣が、制裁同調行脚に回ったのだが。

日本とアメリカの本当の関係

 その日本であるが、戦後はアメリカの属国となり下がり続けているようだ。昨今、日米同盟と言っているが、70年代にアメリカは日本バッシングに明け暮れていたのは、忘れてしまったのだろうか。

 かつて日米貿易摩擦が話題となり、日本の半導体王国が叩かれた。日本の最大貿易相手国は中国となり、米中貿易摩擦に日本は忘れられたようだ。かつての半導体王国も、半導体劣国となってしまっている。世界では厄介者の原発産業を、東芝と日立が買わされ、企業崩壊しだしている。その内、三菱も同じ運命になるのではないのか。

 台湾と中国本土は、密接に結びついているので、両者はお互いの紛争に最も否定的だ。が、アメリカと日本は紛争ありきで準備をしている。アメリカの思惑で、日本がウクライナと同じ目に遭い、アメリカが傍観するという事態も考えられる。

参院選2022の動向

 この『みちしるべ』が、皆さんのところに届くころには、参院選2022の結果が出ているのかもしれない。予想が外れると、みじめになるのだが、選挙戦の裏側事情を見てゆくことにする。

 ネット社会になり、TV・新聞よりもWeb情報が国民を支配しているのだろう。そのWebの在り方の中で、支配層の国民コントロールが強力になってきている。とはいえ、完全に支配層の思うようには、なり切っていない所に未だ面白いところがある。

 ウクライナ情勢で、CIAによるマスコミ情報と対立するWeb情報が結構ある。日本の左翼も右翼もCIA情報一辺倒なのであるが。「プーチン悪、ゼレンスキー英雄」と言わない流れには二通りある。日本の左派に絶望したリベラルと、そもそも右派なのに、そういう主張をする勢力である。

 トランプ元大統領がウクライナから手を引く考えであるようだ。キッシンジャーもダボス会議で、同じことを言っている。アメリカの中でも、意見が割れているようだ。対して、トランプ派は対中強硬派でもある。日本の右派でウクライナ(ネオナチ)支援否定派は、トランプ勢力の応援団なのだろうか。

 トランプ寄りで有名な安倍元首相だが、自民党最大派閥でありながら、バイデン勢力に批判的なのだろうか。維新の鈴木宗男氏は、ロシアの立場に理解を示しているが、維新自身は不正事案に明け暮れている。今秋のアメリカ中間選挙次第では、ジャパンハンドラーが、一気にトランプ派になるのだろうか。

【投稿日2022.6.17.】

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『みちしるべ』**坂本龍馬は英雄か国賊か?国際的視点から**≪2021.秋季&冬季合併号 Vol.111≫

2022年03月01日 | 藤井隆幸

坂本龍馬は英雄か国賊か?

国際的視点から

藤井隆幸

はじめに

 何だか唐突な表題ではある。中身がなくとも、読者に興味を持たせる方法として、週刊誌などが良く使う手法。くだらないか否かは、皆さんで評価願いたい。

 歴史に興味がない方でも、坂本龍馬の名を知らない日本人は少ないように思う。彼を有名、そして英雄にしたのは、司馬遼太郎だと聞き及んでいる。物語の主人公を、英雄に仕立て上げるのは別に構わない。が、それに乗っかって、行過ぎたご当地自慢になったり、商業目当てに煽り立てるのは如何なものか。

 NHKの大河ドラマで、徳川家康が主人公になると、豊臣秀吉や織田信長は悪人に仕立て上げられる。また、反対の事も起こっていたりした。作り話であるから、良しとしよう。が、視聴者はそこそこ真実として受け止めるきらいがある。

 その昔、足利尊氏が主人公の大河ドラマがあった。当然、彼は英雄に仕立て上げられた。ところが、戦前の絶対主義的天皇制の教育を受けた人たちには、違和感があったものと感じている。足利尊氏は南北朝時代に、後醍醐天皇に刃を向けたということで、国賊という汚名を着せられた教育を受けていたからである。

 歴史に誤解を持っていても、現代生活に支障はないように感じる向きもあろう。しかしである。そんな風潮に惑わされて、現実生活に迷っているのは災難ではある。

明治維新は何であったのか

 さて、坂本龍馬である。最初に断っておくが、歴史に詳しいわけでもなく、司馬遼太郎のように勉強を深くしたわけでもない。あくまでも、槍玉に挙げやすい人物であっただけで、良くも悪くも思っているわけではない。

 日本は島国ということで、近代にいたるまでは、国際的な情勢に巻き込まれることが多くなかったように思う。それはアメリカ大陸やオーストラリア大陸、それにアフリカ大陸が、植民地侵略される前の現地人らと似ているのではないか。反対に、ヨーロッパ大陸は、常に支配者が入れ替わり、国際的荒波にもまれてきた地域である。常に国際的感覚を持たざるを得なかったものと考える。

 日本では江戸時代の後半には、鎖国を解き開国を求める、列強帝国主義国の圧力が加わる。その中で開国に向かい、急速に軍事帝国主義化を推し進めることになる。その端緒に、「明治維新」という出来事があった。これをめでたいことととらえる向きが多いのは事実だろう。その名を冠した政党が出来たのではある。

 幕末の出来事を殆ど、日本人の動きだけで語られることが殆どである。しかしながら、欧米列強は東アジアの殆どを植民地化し、残る日本を標的にしていたことは間違いない。現代軍事技術では、島国を制圧することは簡単なのかもしれない。が、江戸時代の日本は、世界最強の軍事国家だったと聞く。上陸しても、一夜にして殲滅されることは、欧米列強も心得ていたものと考える。それに、識字率などは欧米列強に劣らなかった。

 そんな日本を陥れるためには、内紛を起こさせるのが良いと考えられたのではないか。漁夫の利である。イギリスは薩長連合に加担し、フランスは幕府に加担した。両者が争ったのは、ご存じの通りである。

 龍馬については色々と説がある。本当のところは迷宮入りというところか。とはいえ、脱藩した浪人が軍艦を持ち、何十人もの社員を食わせるのは、如何にして可能となったのか。様々疑問が生じるのではある。イギリスのスパイであったのかも……。

 浦賀に黒船を乗り込ませたペリー提督は、本国の南北戦争で幕末の介入に後れを取った。ヨーロッパでもクリミア戦争があり、戦後処理で日本どころではなかったのかもしれない。日本が植民地にならなかったのは、幸運な世界情勢の中であったという説もある。

 世界情勢の中で、「明治維新」を考えてみると、多くの日本人の思いとは乖離があるのではないのか。

現代日本社会の国際的視点

 話は現代社会に戻り、身近な生活問題に言及したい。世界はグローバリズムの極限で、日本国内にだけ目を向けていても、自らの生活を規定しているものが見えない。ところが、政治の世界では国際情勢が、よそ事以上に語られることがない。

 幕末に外国人の裁判権を放棄させられた、いわゆる不平等条約。その撤廃に成功するのは、半世紀を過ぎた明治になってから。それが戦後の米軍に、またも復活しているのである。

 日米合同委員会というものが、毎年行われているが、日米地位協定を名目に、日本の行政の殆どに影響を与えていると言われている。この委員会、アメリカ側のトップは太平洋軍副司令官で、日本側は外務省北米局長なのだ。

 貿易摩擦で公共事業を世界で異例の規模にさせたり、最近は軍事費をGDPの2%にせよとの圧力が。口の悪い人は、日本人は自らの生活の為には3割、アメリカのマネーゲームに吸い上げられるのは5割の労働をしている、と言っている。

 政治の世界で、このことに切り込む話は、あまり出てこない。日米地位協定には、米軍基地からの新型コロナ・オミクロン株の蔓延など、多少の意見があるのだが。

ウクライナ情勢とキューバ危機

 ところで、東ヨーロッパがきな臭い。マスコミではロシアがウクライナに進駐しそうだと大いに騒がれている。プーチンに味方するわけではないが、余りにも一方的だと感じている。

 かつてキューバ危機というのがあった。ケネディー大統領は戦争も辞さないと、キューバの上空に戦闘機を飛ばした。当時は大陸間弾道ミサイルがなく、中距離ミサイルだけであった。ソ連が中距離ミサイルをキューバに持ち込んだのだ。喉元にミサイルを持込まれたアメリカは、慌てたのだが。そもそも、イタリアとトルコに中距離ミサイルを先に持ち込んだのはアメリカであった。

 当時、ホットラインと言って、米ソに直通電話が開設されていた。ケネディーとフルシチョフは電話で話し合い、双方がミサイルを撤去することで事なきを得たのである。

 今回、NATO(北大西洋条約機構=アメリカ中心の軍事同盟)がウクライナに、ミサイルを持込む下地を作ろうとしていることに起因する。モスクワ近傍にである。バイデンはキューバ危機の事を失念してしまったのか。

台湾有事が何を意味するのか

 ウクライナは対岸の火かもしれないが、台湾はお隣の話。中国本土は台湾の経済に大きく依存している。台湾とて同じこと。最も有事を忌み嫌うのは、両者であることは間違いない。

 ところが、お隣の家庭内の問題を、ことさら介入しようという輩がいる。そう、アメリカである。ウクライナも台湾も遠い他国だからなのだろう。その尻馬に乗っかって、事を荒立てようとする日本政治家がいるのは、驚きなのである。

 台湾有事は米軍が出張らないと有り得ないことだ。そうなると、日本は戦争に巻き込まれることになる。戦闘とは別問題でも、日本の最大貿易相手国の中国と、事を構えて得をすることは100%ありえない。壊滅的被害である。自立国であれば、中台に対して平和であることを求めるのが筋であるのだが。

 なんだか、台湾有事を望んでいるような発言が、有力政治家から飛び出すのは何ということか。国民が、それほど反発していないのも不思議なのだが。本当は、怒り心頭を通り越しているのかもしれないが……。

 生きていれば、坂本龍馬に聞いてみたい気がするのだが。はたして、彼は何というのだろうか。

【投稿日 2022.2.17.】

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