『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』横断車道(59)**<2010.3. Vol.63>

2010年03月05日 | 横断車道

仕事で、よそのお宅に上がり込みます。最近、気になることがあります。電話が鳴っても奥様方は、電話に出ることはありません。考えてみれば、昼間にかかってくる電話に、ろくなものはありません。詐欺まがいのセールスが多いのも事実です▼電話機の機能も高度化し、かかってくる相手で、着信音が違う設定ができます。掛け時計の時報も、時間で違ったメロディーが流れます。機械時計の時代は、オルゴールがなったものですが、デジタル時代の昨今、シンセサイザー演奏が主流です。炊飯器の炊き上がりも、デジタル音楽の場合もあり、突然の音楽が鳴ると、インターホンなのか電話なのか………、いやはや賑やかです▼最近では昼間の電話に出る人は、少数のようです。緊急だとか、親友からであれば、携帯電話に掛かってくる筈なのでしょう。セールステレホンレディーの電話を取るのは、限られた人ということになり、その人たちは従来の何倍もの電話に出なければならないようです▼しかしながら、阪神淡路大震災から15年。あの時、携帯電話を持っている人など、殆どいなかったわけです。加入電話の回線がパンクしている傍で、携帯電話は難なく通じたものです。そんな携帯電話ですが、今日、加入電話を追い抜いて普及しています。家族全員が持っている状態。携帯電話を持たない私などは、貧乏人か変人と思われているようです。私が携帯電話を持ったならば、一日のうちの殆どの時間は通話に消費されて、それでなくても仕事が消化できないのが、機能不全になるのは明らかです▼70年代の初頭では、加入電話もない家庭がまだまだ有りました。訪問のアポを取るのにも、葉書を出したものでした。急ぎの用事でなければ、電話ではなく、葉書で済ませるように上司に注意されたものです。あの頃の電話の市内3分以内は30円で、葉書が7円だったと覚えています▼のどかな時代で、お客様との約束も、午前中とか午後とか、はたまた夕方とかという約束をしたものです。現在、約束の時間を10分でも遅れると、問い合わせが来る時代です。外回りをしていると、30分や1時間のずれは当然のように生じます。携帯電話の普及は、それを許さず、結局のところ、約束時間の1時間前は開けておかねばなりません。仕事の密度を下げなければ、携帯時代を生き抜けないという、逆の現象が生じているのに気がついている人も少ないのでしょう▼また、待ち合わせの場所や時間も、結局はアバウトになり、大体の目標しか約束せずに、その場所に行ってから携帯電話で探し合うというのが実態のようです。駅のターミナルなどで、携帯電話で話しながら、すれ違ってゆく2人を見ると、滑稽ではあります。また、約束の時間の意識が双方で違っており、会ってから喧嘩をしているのも、よく見る光景です▼携帯電話の普及に異論を唱えているわけではありません。社会が流されてゆくままに、客観的視点を見失わないようにしたいと思っています。企業サイドのビジネス論理で、携帯電話の普及で儲けようという戦略に乗って、踊らされているのは如何なものでしょうか? 電車の中で、携帯電話とニラメッコしている人は多いのですが、覗いて見るとゲームをしている人が多いのには驚きました。友人からのメールが来るか否かで、自分の社会的価値を判断するようになる。そうすると、本当の友人が見えなくなり、仮想友人を信じるようになり、出会い系サイトにはまったりします。現実と仮想空間との区別がつかなくなるのは、人間性の崩壊につながるので心配です▼さて、阪神間道路問題ネットワークの月例会のご案内ですが、初代 代表世話人の故 砂場徹さんは、必ず葉書を出しておられました。私が引き継いで、FAXを中心に送るようになってしまいました。葉書50円とFAX10円の経費勘定だけではありません。広い紙面に、色々と書ける利点もあります。そのFAXも、そろそろ旧式になりつつあります▼今、ご連絡を差し上げている過半数は、電子メールなのです。FAXも機能が高度化し、熱転写用紙のロールペーパーも要らなくなってきているようです。しかし、私のFAX機は旧式で、お1人づつ送信しなければなりません。私と同じようなFAX機の方も多いようで、エラーで送信不能が生じることが多々あります。そうした際は、FAXが無い方とともに、郵送させていただいています▼電子メールの優れているところは、1団体の何人にでも、登録しておくだけで手間なく送信できることです。団体の代表者が、メンバーの方々に連絡する手間も省けます。また、会場地図も、自治体ホームページのURL(電子宛先)を挿入しておくだけで、住所・電話番号・電子地図などがお知らせできます。とはいえ、FAXもインターネット接続もない方も居られます。郵便の重要性は、まだまだ大きいものがあります▼通信手段のあれこれを書きましたが、固定電話の普及していなかった60年代から半世紀、携帯電話が珍しかった震災前後から15年。インターネットも普及し、機能が高度化したのも僅か20年の間です。その間に、機器の機能に生活様式を変更させられるという、本末転倒がまかり通ってきました。企業利益に消費者を従属させるという、儲け中心、人間性排除の論理です。人が造ったモノですから、人を豊かにするために使いたいものです▼20世紀の最大の発明は自動車であるという人もいます。鉄道王国を目指した戦前までの日本が、GHQの戦略で、歴史も社会システムも無視し、急激な自動車対応型道路建設に走りました。結果、色々の弊害が生じました。それに気付くのにも、公害被害者の血の出る叫びが必要でした。急激な経済発展がツマヅキ、社会の歪に気がついた今日。人の視点で考える勇気を持ちたいものです。   (コラムX)

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『みちしるべ』斑猫独語(39)**<2010.3. Vol.63>

2010年03月04日 | 斑猫独語

澤山輝彦

<キーワードは"命" >

 活きている伊勢エビに串を刺しそのままテーブルの上で焼く料理をテレビで見て、これは残酷だ、私は目の前でこれをやられればとても食えないな、と思ったのですが、では見えないところで料理されて来ればいいのかと言えば、それはいいのだ、と言わねばしょうがないでしょう。勝手なもので、命のやりとりという根本にまで遡れば、この問題の答を私見で言うのは難しいもので、何か遠大な思想に頼らねばならないでしょう。

 私たちは、普段から生き物の命を頂戴していますが、目の前で命を絶たれ食品になるのを見ることはまずありません。大昔のように狩猟採集生活をしているのならこれを避けては生きて行けません。でも今は貨幣を仲介して生きて行く社会です。誰かに命を絶ってもらい食品にしてもらう、食品には命がないのだ、こう考えて毎日喰って生きているのです。命の根本へのこだわりを消してしまうのです。

 今日テレビニュースを見ていたら、日本の捕鯨に関係することが二件続きました。一つは反捕鯨団体、シーシェバードの捕鯨妨害実力行使船の乗組員一人が日本の調査船に乗り込んだということ、もう一つは調査捕鯨で得た鯨肉を盗んだとか、いや乗組員の横領を告発するものである、とかいう裁判のことでした。シーシェバードの行為は犯罪的であることは確かでありますが、阻止行動というものの現場は相対的なもので片方には犯罪行為に映るものであります。がまあ程度の問題だ、というのも確かで、誰が見ても過激過ぎるというような行為は賛成出来ません。だが、おとなしくなりすぎて、なめられてしまっている現状を打破するための抗議行動まで自己規制してしまっているような最近の世情に私は腹立ちを感じています。調査捕鯨とは何なのでしょう。私たちには分かりません。何をどう調べているのか、その結果がどう公表されたのか、知らないお前が悪いのだ、というようなことではなく日本国民なら誰でも知っているという状態にしておく位の配慮がいるのではないか、その上でシーシェバードの行為に反対出来るのです。日本船がやられている、船員が負傷した、というような報道で国民感情に訴えるというようでは、安易なナショナリズムを掻き立てるだけで問題の核心に迫らない結果しか生まれないのです。

 日本は世界に名だたるペット残酷国家なのだ、というテレビ番組を見たことがあります。ペット動物の小さい時分の可愛さがなくなったら捨てる、老犬を保健所へ持って行く、そんな人がいっぱいいるのだそうです。いわゆる西洋では考えられないことだそうです。こんなことをきっちりとしておかないと、シーシェバードは陸のシェバードになって乗り込んでくるかもしれません。

 鯨肉は今本当に食料として必要なのか、私の経験からすれば、料理法にも一因があったのでしょうが少年時代に喰わねばならなかった鯨肉はうまいものではなかったのです。今求められている鯨は趣味の食材のような気がしてならないのです。無理して捕る必要はあるのかどうか、考えてみる必要があると思うのですが。

 去年だったかおとどしだったか、田辺か勝浦かとにかく南紀の湾ふかく、マッコウクジラが迷い込んだことがありました。昔はこんな鯨は、寄り鯨と呼んでありがたく頂戴したものだとある本で読みました。あの鯨は結局元気を回復して外洋へ出たそうですが、町はいろいろな費用が数百万円かかったそうです。それほどまでして見送った鯨です。だのに調査捕鯨の名目で南極海では鯨をとっているのです。なにか解せないところがあります。

 「道路予算13都府県で増」という新聞の見出しが目につきました。増もあれば減もあります。この道路予算、該当都府県でどう使われるのか知りませんが、私が一番気になるのは、よくある事故で、集団登校中の児童の列に車が突っ込み子供の命を奪う、というやつ、あれだけは絶対無くさねばなりません。歩行者と車両の分離を徹底的にやる、歩道を設置するかまたはガードレールをつける、これに予算を使うべきであると思うのです。取って付けたような道路問題で終わったな、とお思いになりましたでしょう。タイトルをご覧下さい。食われる命で初め、守らねばならない命で終えたのです。

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『みちしるべ』街を往く(其の四)**<2010.3. Vol.63>

2010年03月03日 | 街を往く

街を歩く(其の四)

藤井新造

 今回は、短期間のポルトガル旅行の印象記です。今年の2月中旬1年を通じ、最も格安のポルトガルツアーに参加した。ツアーの料金が安かったせいか、総勢41名という多数者である。

 今までの海外旅行は何ヶ国も廻るツアーを避け、1国のみにしていた。それが一昨年はクロアチア・スロベニア、昨年はオランダ・ベルギー・ルクセンブルグと3国めぐりの2回を経験し、今回から、又1国のみにすることにした。理由は簡単で、2度とその国には経済的理由もあり行けそうもないからである。

 従って1国だけでその国の表面だけでも充分に見たいという気持ちがあるからである。それにしては短いポルトガルの断片記になったが、以下は私の感じた印象記である。

 その前に、利用する交通手段として多い飛行機であるが、ドイツ航空機の機内食が今回は大変おいしかった。全日空との共同便で、日本人の乗客が多いせいか、日本人が食べやすい味つけをしていたのと温かいものが出たせいによるものであったろう。

 それとポルトガルはユーラシア大陸の西の果のため、飛行時間を長く要し、フランクフルトで燃料補給し、ミュンヘンでも乗換えたので、合計17時間の長時間の飛行であった。当然機内食が多く出てくる。それ故、航空会社が機内食には気を遣っていたのかもしれない。今回の飛行時間は、キューバの旅行の時、23時間を要したのについでのものであった。

 ユーラシア大陸は、東の中国より延々とはじまり、ポルトガルのシントラにあるロカ岬にて終わり、ここより大西洋に向うとの有名な文言を、ずばり実感できる遠い国であった。

 この遠い国より1549年、フランシスコ・ザビエルが伝道のため鹿児島へやってきたのはあまりにも有名である。そのことは、16世紀の中頃の大航海時代に、ポルトガルの国が多くの富を有し、いかに航海術にたけていたかの証であろう。

 前置きはそれ位にして、私はどこの国に行ってもスーパーに足を運ぶことにしている。それもできるだけ大きいスーパーを探して行く。そこでは色々な商品がみられる楽しみがあるからである。果物など日本と違った味と色と形をしている。それらの一つを買って帰えりホテルで食べるのが楽しみだ。(内証で日本に持って帰える時もある。)又、値段がどの位するか、日本と比較して計算して知ることもできる。

 ヨーロッパのユーロ圏内で、ポルトガルはギリシャに次いで経済が悪いと新聞の記事をみているのに、そのあたりも少しわかればいいと思っていた。

 だが、その国の表層だけをわずか1週間位滞在してそんなに簡単にわかる筈がない。でも、そうとは言えない。

 ポーランドなどで、市バス、車の窓が破損し、それをダンボールとか板をはりつけ応急処置をして走っているのを見ると、経済的豊かさは感じない。勿論、そのことからポーランドの人々の生活の貧しさには直結しないことがわかっているが………。

 話題をスーパーに戻すと、どの品物も安い。通貨がユーロなので計算しやすい。品物の値段を日本円に概算してみればすぐわかるからである。だから、多くの色々な品物を物色する。自由市場(広場)の果物も豊富である。ポルトガルは比較的暖かく気候が果物を生産するのに向いているせいであろう。緯度は日本の仙台市位といっており、日本を出発する時仙台地方は雪が降っていた。滞在中、午前中は霧がたちこめ、天候の変化も激しい。小雨が降ってはすぐやみ、又降るという具合である。それでもそんなに寒く感じないのは、大西洋の暖流のせいによるものであろうか

 このように朝夕の温度差が大きく、適当な降雨により、良質のブドウが採れ、おいしいワインが醸成され、完成品になる。ワインも安くておいしい。

地下鉄(メトロ)、バスの安い料金にびっくり

 次に、最終日の自由時間に夕食をとるため、元万博のあとがある駅ビルのオリエンテ駅まで地下鉄に乗って足をのばす。ホテルより5駅あるだけである。そこに丁度西宮北口駅の西宮ガーデンズのようなショッピングセンターがあった。

 ここでいくつかの店をのぞいてみたが、どこも値段が高かそうなので、夕食を簡単にすますことにした。マクドを少し大きくした30人~40人収容の店に入る。

 珍しかったのは、野菜もパンも果物も肉類も一緒くたにして重さで値段が決る売り方をしている。計り売りである。だから適当に品物を撰びトレイに乗せレジに持って行けばすぐ料金が表示される。但し、ビール、コカコーラなどは別料金になっている。

 私は他の国では経験したことがなかったので珍しかった。

 次に、地下鉄の運賃である。英語を話せずましてポルトガル語はボンディア(おはようございます)と朝の挨拶しか知らない。それでもつれあいと2人で地下鉄に乗車する。

 今回は、1回のみの乗車で、しかも乗換えをしない路線を選んで夕食にでかけた。ホテルへの帰りをまちがわないように簡単なルートにした。今まで、ウィーン、ブタペスト、台湾、ニュージーランド、サンクトペテルブルグでの地下鉄、トラムに乗ったことがある。ウィーンのトラムは1周しても1時間もかからず、又もとの所に帰ってくる。大阪の環状線みたいなものである。外国人でも乗りやすい。しかし、ブタペストでは乗換えるホームがわからず、うろうろしていたら老婦人が地下2階まで(50段程ある)一緒に降りて案内してもらったうれしい経験もある。

 それで今回もあまり時間がなくて簡単なわかりやすい路線にした。欧州では、日本と違い券売機が少ない。定期か往復券を買い利用しているせいであろうか。そのあたりはわからない。ポルトガルでは1回券が1.3ユーロである。往復で2.1ユーロで安い。私が行った国では日本のように距離が長くなれば運賃が高くなるのを経験したことがない。同一の路線であればどこまでも行ける。ちなみに、オランダで1番長い路線は長距離で16駅もあり同じ料金である。

 そして、トラム、地下鉄、バス、ケーブルカー、一日中乗れる共通券が4.2ユーロ(日本円で約550円)である。それも専用カードを利用すれば2回目は割引がある。人が利用し、乗りやすい料金にしている。

 日本の交通政策は、その意味では全然遅れていると思う。都市での綜合的な交通政策の視点が欠けているせいであろう。

 京都など、地下鉄、バスの安い共通券を発行したら観光客はずい分利用しやすい乗り物になると思うがどうであろう。

 次に、小鳥を売っている自由市場に行く。丁度日曜日なので開店しているという。小公園らしい広場に大きいテント小屋を設営し、各々が店をカーテンで仕切りおよそ50店以上が並んでいる。

 勿論どの鳥もかごに入っているが、なかにはうさぎ、マウスなど小動物もいる。大きい鳥では尾長鳥もおり、小鳥でもこんなに沢山の種類がいるのかと珍しくなり見て廻わる。

 気に入った鳥を買い、かごに入れているのをそばで見ているだけで、こちらまで喜びが伝わってくる。多分かごの値段も安いのでなかろうか。ここが日本であればもって帰りたいような可愛い鳥が沢山いた。

 大人がこのように喜々とした顔を全面に見せ、鳥を買っているのを見たのは初めてである。私も、幼い時、にわとりだけでなくチャボなど美しい鳥を飼った経験がある。そのことを想い出した。

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『みちしるべ』**「はり半跡地開発問題」開発許可取消訴訟**<2010.3. Vol.63>

2010年03月02日 | 前川協子

「はり半跡地開発問題」開発許可取消訴訟
第1回公判(神戸地裁 2010/2/9)に於ける意見陳述

原告団代表 前川協子

1. 私は甲陽園に移り住んで30年余りになります。

 その頃同居していた主人の母が「まるで故郷に帰ったようだ」と緑に囲まれた静かな環境を喜び、穏やかな晩年を過ごすことができました。

 その後、昭和の高度成長期から平成のバブル期にかけて、当地は開発ラッシュとなり平和だった甲陽園も発破の音や工事騒音に悩まされるようになりました。

 新たなマンション建設のたびに豪雨時は土砂崩れや道路の陥没、鉄砲水が起き、近隣住民が「これではおちおち寝ていられない、何とか対策を」ということで、東山町自治会としては平成2年に「快適環境・安全推進宣言」を行い、風致地区にふさわしい「まちづくり」を心がけ、行政と業者に対しても「開発事業の場合は、住民との合意形成を諮り、紳士協定を結んでからの円満な着工を!」と呼びかけました。

 幸いに当時の背景として、西宮市が全国に先駆けての「文教・住宅都市宣言」を行ったことや、事業者側にもそれなりの社会貢献意識のあったことが、住民協議に役立ちました。

2. しかし、残念なことに、阪神・淡路大震災後は、規制緩和や特例措置に乗じた、ファンド系企業が土地転がしに走り、その結果、地元の基盤整備や公共設備をないがしろにしたままで、投機的なマンション建設ラッシュになりました。

 その最たるものが、本件の開発計画です。

 西宮市が作成した断層図や業者の行った複数回にわたる地盤調査を分析した専門家の意見によれば、本件開発区域の南側と北側には甲陽断層と甲陽園断層が走っています。また、兵庫県が指定した「土砂災害警戒区域」に含まれ、開発区域を縦断する水路の上流は「土石流予想危険渓流」に含まれています。しかし、開発業者は、事前の水位調査など十分な調査も行わず、行政もこれを黙認しているのが現状です。

 また、本件開発区域の南斜面下辺りには、旧海軍の地下壕跡が存在しており、兵庫県は当初、事前調査の実施を指示していましたが、結局開発許可前の調査は実施されませんでした。

 更には、本件開発区域を縦断する渓流の埋め立てによる水路の付け替えや、マンションの居住棟地階最下部に大規模な調整池を設ける等、これまでの開発行為でも例を見ないような異様な計画です。

 本件開発区域のような谷地形の所に、切土・盛土による宅地造成を行うことは、阪神・淡路大震災時に造成地における土砂災害で34名の人命を奪った仁川百合野地区に匹敵する惨禍を招きかねません。

 また、近年の異常気象による豪雨災害(一昨年夏の兵庫県都賀川事故、昨年夏の山口県防府災害、兵庫県佐用被害等)を目の辺りにし、それら被災地と本件開発区域との類似性を考えると、私たち住民は.いつ自分たちの住んでいる場所で同様の災害が起こるかと不安で一杯です。

 このように自らの経験から本件開発行為の危険性を予測している周辺住民は、無謀な乱開発に反対する署名約14,000筆を西宮市に提出しました。

 そして、私達は、その危険性を指摘し、周辺地域に住む住民の命と財産を守るために、当初から事業主に対して、真摯な住民協議を求めてきました。しかし、事業主とその代理人の不誠実な対応、高圧姿勢は変わることがなく、説明や資料も不充分なままで今日に至っています。

 このような経過にもかかわらず、西宮市は、住民からの危険性の指摘を無視して、この開発計画を容認し許可しました。

3. 止むなく私達は、市民を守り切れなかった市の開発行政をただすために開発審査会に対して審査請求を行ったのですが、結局は、市の許可を追認するだけの結果となりました。

 公正な審埋を期待していた私達は、裁決書を見て初めて、審査会が公費で鑑定を依頼した先が、本件開発工事を受注している業者が賛助費を納付し賛助員に名を連ねている団体であり、その鑑定結果によって私達の請求が退けられたことを知りました。

 このような開発審査会の姿勢は、本件に先行して提訴した「水路使用料の未徴収」住民訴訟の勝訴判決から証明された西宮市の監査委員の不実さとも相通じるものです。

4. あくまで私達のコンセプトは「住居は人権」であり、「安全安心なまちづくり」に資する長期的なパートナーシップを行政や業者に期待しているのです。

 従って私達は、真の意味での行政の役割と責任を問い、私達が暮らす地域の災害を防止し、今、甲陽園に住む子ども達がやがて未来にむかって羽ばたくときに、「終生の故郷」として甲陽園の素晴らしい自然環境や風土文化を生きるよすがにしてくれたら・・・という思いで提訴に踏み切りました。

 裁判長におかれましては、本件に係る数多くの問題点にご理解を戴き、英明、公正な御判断によって、本件許可処分と裁決を取り消して頂きますよう、切にお顔い申し上げます。

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『みちしるべ』第35回道路全国連全国交流集会に参加☆「PM2.5」の環境基準決まる**<2010.3. Vol.63>

2010年03月01日 | 神崎敏則

第35回道路全国連全国交流集会に参加
「PM2.5」の環境基準決まる

みちと環境の会 神崎敏則

 第35回道路全国連全国交流集会は、10月24、25日横浜で開催され、41団体200名が集いました。

 一日目は、現地住民団体の案内で横浜環状南線を現地見学しました。横浜環状南線は、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の一部で、横浜の都心から半径10km~15kmを環状につなぐ横浜環状道路です。圏央道は、1メートル1億円以上かかる東京外かく環状道路、首都高速中央環状線をふくめ「首都圏三環状道路」と位置付けられています。

 首都圏のベッドタウンを6車線の高速道路がトンネルや掘割方式で通される計画です。現地に貼り出されているインターチェンジの予定図を見ると、アクセスのために、3層にも4層にも走行レーンが積み上げられていて、あたかも巨大な立体迷路を造ろうとしているかのような、あきれ果てるほどの構造物でした。

 2日目の全体会では、まず、西村弁護士からPM2.5の環境基準が決まった経緯とその評価が報告されました。この「PM2.5」は、微小粒子状物質であり、世界的に、ぜん息、肺がん、循環器疾病の原因物質であることが明らかになっています。昨年9月に導入された大気汚染物質「PM2.5」の環境基準は、「公害被害者や住民運動でかちとったもので米国基準なみの画期的なもの」だそうです。西村弁護士がかかわってきた07年の東京大気汚染公害裁判の和解条項の1つとして、この基準設置を求めていました。

 今後の課題として、(1)測定体制の整備(2)基準達成にむけた発生源対策(3)道路アセスメント(環境影響評価)の実施(4)国レベルでの大気汚染被害者救済制度の創設――を急ぐべきだと訴えられました。

 

有害微小物質「PM2.5」に環境基準 環境省提示へ

 空気中に漂い、吸い込むと肺がんや循環器疾患の原因にもなる微小粒子状物質「PM2.5」について、環境省は先行する米国と同レベルの環境基準を設ける案を固めた。PM2.5は従来の規制物質よりさらに小さく、重い健康被害につながる恐れがあるとされていた。28日に開催の有識者の専門委員会に提示する。秋にも正式に定められる見通し。

 直径が10マイクロメートル(マイクロ=100万分の1)以下の浮遊粒子状物質(SPM)にはすでに環境基準があり、大気汚染防止法のほか、大都市圏では自動車NOX・PM法で排出も規制されている。 PM2.5は、SPMに含まれるが、直径が2.5マイクロメートル以下の粒子をさす。ディーゼル車の排ガスや工場の煙などに多く含まれる。粒子がより小さいのでとらえにくかった。だが、肺の奥深くまで届いて沈着しやすく、SPM規制で主に想定する呼吸器疾患だけでなく、肺がんや循環器疾患の原因にもなるとされる。そこで、PM2.5に絞って基準を設けるため延べ2年にわたり議論していた。

 今回提示する基準は、年平均で1立方メートル当たり15マイクログラム、日平均で同35マイクログラムで米国と同じ。世界保健機関(WHO)の指針より緩いが欧州連合(EU)より厳しくした。この基準なら肺がんなどの健康被害は出にくいという。今後、中央環境審議会の大気環境部会でも了承を得て国民の意見を聴いた上で、早ければ9月にも環境相が告示し、正式に決める。日本国内の都市部のほとんどが、この基準を上回るとみられる。基準を達成するためには車や工場などの排出規制を進める必要があるが、排出源からどの程度出て、どれくらい規制すればよいかなどは今後検討することになる。

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PM2.5環境基準値、年平均15マイクログラム以下に
 ―― 中環審が答申案――

2009年07月16日

 粒子状物質(PM)はさまざまな種類や大きさの細かい粒のことで、なかでも粒径2.5ミクロン以下の微粒子を「PM2.5」と呼ぶ。PM2.5には発生源から直接排出されるものと、ディーゼル自動車の排気ガスに含まれるDEPなどが大気中で光化学反応を起こしてできる二次粒子とがある。気管支炎やぜん息など呼吸器系の病気を引き起こす原因とされており、米国では規制が行われ、日本でも規制の必要性が指摘されている。環境省の中央環境審議会は、昨年12月になされた諮問「微小粒子状物質に係る環境基準の設定について」について、大気環境部会に微小粒子状物質環境基準専門委員会などを置いて検討を行い、このほど答申案をまとめた。

 本答申案は、PM2.5の環境基準設定にあたって指針とすべき値を、年平均値が1立方メートルあたり15マイクログラム以下で、かつ、1日の平均値が1立方メートルあたり35マイクログラム以下としている。この数値は米国の基準と同じレベルだが、世界保健機関(WHO)の指針値である年平均値で1立方メートルあたり10マイクログラムよりはゆるやかな基準だ。

 また、PM2.5の環境基準設定にあたって、次の課題があると指摘している。

  1.  PM2.5による大気汚染の状況を把握するため、監視測定体制の整備とともに体系的な成分分析が必要
  2.  PM2.5の削減には、工場や自動車などの発生源に対して行って粒子状物質全体の対策を進めることが重要
  3.  PM2.5の発生源は人間活動によるものだけでなく、黄砂や噴煙などもあるとされており、大気中の挙動も複雑であるため、排出状況の把握や排出インベントリの作成、大気中の挙動や二次生成機構の解明などを進め、より効果的な対策を検討すべき

 一方、PM2.5の測定方法については、ろ過捕集による質量濃度測定方法か、それと同等の自動測定機による測定方法を採用すべきであるとしている。同省は本答申案の内容についてパブリックコメントを行い、その結果を踏まえて秋にも基準を告示する予定だ。

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 環境省は、微小粒子状物質に係る環境基準について、平成21年9月9日付けで告示を行った。

 平成20年12月9日に環境大臣が諮問した「微小粒子状物質に係る環境基準の設定について」に対して、中央環境審議会は平成21年9月3日に環境大臣に対し答申を行った。

 環境省は、これを受けて、環境基本法に基づく大気の汚染に係る環境基準を告示したとのこと。

 今回の告示では、微小粒子状物質に係る環境基準として、「1年平均値が15μg/?以下であり、かつ、1日平均値が35μg/?以下であること。」としている。

 また、微小粒子状物質(PM2.5)とは、大気中に浮遊する粒子状物質であって、その粒径が2.5μmの粒子を50%の割合で分離できる分粒装置を用いて、より粒径の大きい粒子を除去した後に採取される粒子としている。

【環境省】

「PM2・5」新基準設定 「大気汚染の改善急務」公害患者会見

 ぜんそくや肺がんの増加など健康に悪影響を与える微小粒子状物質「PM2.5」の環境基準が9日に告示されたことを受け、全国公害患者の会連合会と大気汚染公害裁判原告団・弁護団全国連絡会議は同日、環境省で記者会見しました。全国の大気汚染が大都市部はおろか地方都市でも軒並み環境基準をオーバーしている深刻な実態を指摘し、「被害者の発生をくいとめる早急な対策が必要だ」と訴える声明を発表しました。

 告示されたPM2.5の環境基準は、米国と同水準の年平均値が大気1立方メートル当たり15マイクログラム以下、日平均値が同35マイクログラム以下。PM2.5は直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子で、おもに自動車排ガスが発生源です。

 同基準について、声明は「各地の大気汚染公害裁判の和解で追求され、東京大気裁判和解で約束されたことを受けたもので、大気汚染被害者と市民の運動で勝ち取った成果」と評価しています。

 全国の主な測定地点の濃度は同20マイクログラム前後で、新基準を軒並みオーバーしています。声明は、国や自治体に(1)PM2.5の測定体制の整備(2)自動車の交通量や排ガス規制など発生源対策の着手(3)道路建設などの環境影響調査にPM2.5を加える(4)国レベルの新たな大気汚染被害者救済制度の創設――などを求めています。

 記者会見した同連絡会議の西村隆雄・東京大気汚染公害裁判弁護団副団長は「環境基準設定はゴールではなく、新たなスタートライン。新政権の公約にもある大気汚染公害被害の補償制度の創設の早期の実現を求めたい。高速道路の無料化は公害対策に逆行するので、やめてほしい」と指摘しました。

1 クローズアップされるPM2.5汚染

 この間、わが国の大気汚染をめぐっては、SPMについて、東京全域で環境基準を達成したのをはじめとして、全国的にみても、環境基準達成率は大幅に改善されてきた。

 しかしその一方で、学校保健統計調査でみても気管支ぜん息患者は増加の一途をたどっている。ここでクローズアップされているのがPM2.5(微小粒子)による大気汚染問題である。

 粒径2.5ミクロン以下の微小粒子(PM2.5)は、人為由来の自動車、工場、事業場からの燃焼物により構成され、粒径が小さいため肺の深部に侵入、沈着する割合が大きく、粒子表面に様々な有害物質が吸収・吸着されていることから、発ガン性を含む健康影響がより大きいことが以前より指摘されていた。

 このため米国では、1997年の改定で新たにPM2.5環境基準が設定され、さらにその後の調査・研究の進展も踏まえて、2006年9月にPM2.5基準が強化された。またWHO(世界保健機構)も、2006年10月に全世界に向けてPM2.5ガイドラインを新たに設定、提案するところとなった。そこでわが国におけるPM2.5の汚染についてみると、全国の都市部では自排局はもちろんのこと、一般局においても、先のWHOガイドライン、米国環境基準を大幅に超過する深刻な汚染実態となっている。

2 この間の経緯

 こうした中、わが国で2000年1月の尼崎大気汚染公害訴訟判決において、幹線道路沿道における気管支ぜん息の危険の増大は、自動車由来の微小粒子による影響であると認定された。そして各地の大気汚染訴訟のたたかいでは、その後もPM2.5環境基準の設定に向けて果敢にアタックして、一定の条項もかちとってきたが、PM2.5環境基準設定に向けた具体的動きはないまま推移してきた。

 しかし、さすがの国・環境省も、2007年4月の衆議院環境委員会での「早期に環境基準の設定を」との付帯決議をうけて、2007年5月に、微小粒子(PM2.5)の健康影響を検討する「微小粒子状物質健康影響評価検討会」を立ち上げ、2007年8月成立の東京大気汚染公害訴訟の和解条項で、「(上記検討会の)検討結果を踏まえ、環境基準の設定も含めて対応について検討する」と基準設定も視野に入れた対応へと変化のきざしを見せてきた。

 その後同検討会は、本年4月、報告書をまとめるに至った。報告書はその結論において、「総合的に評価すると、微小粒子状物質が、総体として人々の健康に一定の影響を与えていることは、疫学知見並びに毒性知見から支持される」として、微小粒子の有害性を明確に認めるに至った。そしてとりわけ注目されるのは、従来認められていた呼吸器疾患への影響に加えて、心筋梗塞などの循環器疾患、さらには肺ガンへの影響も認めたうえで、疾病の増加、増悪のみならず、死亡リスクの増加の影響まで認めたことである。

 かかるうえは、中央環境審議会に諮問したうえで、政府としてただちにPM2.5環境基準の設定に進むべきということになる。しかしながら環境省は、さる4月の中央環境審議会大気環境部会に、検討会報告書の報告を行ったうえで、「今後PM2.5の定量的評価をめぐる方法論の整理に作業期間が必要」、「年内目途に報告させていただきたい」などと発言し、環境基準設定をさらに来年にまで先送りする構えを示している。

3  一刻も早く環境基準設定を

 しかし、先に述べた事態を前にして、政府としてこれ以上、環境基準の設定を先延ばしすることは、絶対に許されない。さる3月27日、東京において日本環境会議、岡山大学大学院教育改革支援プログラムの主催で、WHOの第一線の専門家を招いてPM2.5国際シンポジウムが開催された。ここでも、WHOガイドライン設定の経緯とその根拠となった科学的知見が詳細に紹介されたうえ、PM2.5の健康影響は今や明白であり、WHOとしては、欧米のみならずアジアを含む全世界に通用するものとしてPM2.5ガイドラインを提案していることが強調された。

 この間、各地の大気汚染公害裁判をたたかってきた全国公害患者の会連合会と大気汚染公害裁判原告団・弁護団全国連絡会議(大気全国連)は、PM2.5環境基準の早期設定を求めて、宣伝活動・環境省交渉と旺盛な活動を展開してきた。事は待ったなしであり、東京大気裁判和解条項での約束を守らせ、一刻も早く基準設定を実現すべく、全力で取り組んでいく決意である。

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