『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』**阪神高速大阪湾岸線西伸部事業化について**<2016.11. Vol.95>

2016年10月31日 | 藤井隆幸

阪神高速大阪湾岸線西伸部事業化について

世話人 藤井隆幸

 阪神高速大阪湾岸線は、関西空港のりんくうジャンクションから神戸淡路鳴門自動車道(明石海峡大橋を含む)垂水ジャンクションを結ぶ、総延長約80kmの二種一級の自動車専用道である。1994年にりんくうJCTから神戸六甲アイランドまで(約59km)が供用された。翌年、阪神淡路大震災により、西宮大橋東側の桁が落橋したのは、もう記憶に遠いことになる。

 今年(2016年)4月1日に、国土交通省は未供用部分(六甲アイランド~神戸市長田区駒ヶ林)の14.5kmを事業化すると発表した。駒ヶ林から垂水JCTを残すのではあるが、駒ヶ林から阪神高速山手線、同北神戸線を経由して、神戸淡路鳴門自動車道には接続することになる。

 バブル(1990年崩壊)に踊っていた頃、関西大環状道路・関西中央環状道路・大阪湾環状道路という、関西三大環状道路構想が唱えられた。大阪湾岸線と神戸淡路鳴門自動車道、それに明石海峡大橋を遙かに超える、紀淡海峡大橋を造れば、大阪湾環状道路が完成する。

 神戸淡路鳴門自動車道を構成する明石海峡大橋は、総工費1兆円も注ぎ込んだ。年間800億円の金利でさえ、通行料金では賄えないという、とんでもない代物であった。この橋のケーソンは、厚さ30cmの鉄製である。明石海峡は時速40kmの海流が常に流れている。瀬戸内海の海底は砂地であり、ケーソンは毎日、サンドペーパーがかけられた状態で薄くなる。設置から70年後には、上部構造を支えられなくなるという。明石海峡は船舶航行銀座であり、橋の崩壊を放置することはできない。解体には、建設費の倍はかかるという。

 道路公団民営化で、各道路株式会社の借金はなくなったかのようになっている。だが、国の特別行政法人道路保有機構が、40兆円もの借金を抱えているのは知られていない。国鉄分割民営化の際、国鉄の借金の殆ど(24兆円)は、国鉄清算事業団が抱え込んだ。この借金の総ては、新幹線網を造ることで出来たのであり、総ての赤字ローカル線の借金は、主要在来線がカバーしていた。

 さて、JR各社の株式と土地を売却して、国鉄清算事業団の借金を無くす筈ではあった。電電公社の民営化に際しては、NTT株売却で儲けた経緯があった。が、バブルの崩壊で、JR株も土地も売れなくなってしまった。国鉄清算事業団の解散時には、その借金は36兆円に膨らんで、国民の税金で解消したことは、もう忘れられてしまったのか?

 道路保有機構の将来も、大阪湾岸線を粛々と造るようでは、国鉄清算事業団の二番煎じであることは、間違いないのだろう。

大阪湾岸線の費用対効果

 大阪湾岸線西伸部14.5kmの総工費は、5000億円と言われている。これは当初予算であって、完成時には2~10倍になっているのは、これまでの総ての事業で立証済みではある。

 この事業区間を並行して通る、阪神高速3号神戸線の渋滞の緩和が言われている。3号神戸線の渋滞による損失は、1.23億円/km・年で全国ワーストのトップであるらしい。交通規制をしない行政の怠慢であるにもかかわらず、利用者のせいにするなどは、交通工学のド素人の発言ではあるのだが。

 計算すると、3号神戸線の同区間が15kmとして、年間18.45億円にしかならない。関連道路を含めて、渋滞損失が10倍としても、184.5億円に過ぎない。10年間でも1845億円でしかないのである。

 ところで、この渋滞の多くを占めるのは、土日や連休の行楽であることは御存知の通りである。阪神間で車を使わなければ行楽に行けない人など、ごく少数であることは間違いない。また、自動車交通は犯罪や反社会的営業でも使われている。渋滞で遅くなった時間に、平均賃金を掛けて算出しているのであるから、犯罪も反社会的営業も費用便益という事になっている。

戦後日本の異常な道路建設・公共事業偏重の裏側

 道路族連中は、日本には高速道路がまだまだ足りないという。1人当たりの延長距離が、先進国では短いというのだ。日本のように人口密度が、欧米に比べて極端に高い国において、同じように建設したら、道路だらけという事になってしまう。それでなくとも、可住面積当たりの道路延長は、既に地球上で最も多い国になっている。

 どうして、日本は道路族天国になってしまったのだろうか? 明治の開国以降、「富国強兵」を合言葉に、鉄道建設が中心であった。国鉄分割民営化前後まで、日本の隅々にローカル鉄道が敷設されており、都市部では網の目のように路面電車が走っていた。終戦直前の空襲に際しても、直ちに鉄道は復旧されていた。広島の原爆直後でも、路面電車はすぐに走り出していた。

 その昔、「鉄道公安36号」という朝日系TVドラマがあった。そのドラマ開始のナレーションは、「国鉄の列車は、1日に150万キロ走り、その長さは地球から月への距離の4倍以上におよんでいる。この映画は、旅客の安全と犯罪防止のために、警察官の協力隊となり、日夜身命を賭して、勇敢なる活動を続けている、私服鉄道公安職員の物語である。」というものであった。明治に設立された「鉄道院」は戦前まで「鉄道省」となり、戦後は「国鉄(日本国有鉄道)」が分割民営化でJRとなってしまった。が、月と地球の距離(約38万キロ)の何倍もの走行距離の鉄道があるにもかかわらず、如何して道路偏重の日本になってしまったのか?

 ここで更なる疑問であるが、「安倍政権の暴走」と言われることが多い。クレヨンしんちゃんが暴走しているならわかるが、安倍の晋ちゃんが暴走しているのは理解できない。だって、歴代日本政権はアメリカの傀儡政権ではなかったか? 安倍晋三だけが傀儡ではなくなったとは、聞いたことも考えてみた事もない。

 日本全国の都市計画道路の決定は、殆どが昭和21年である。「何で70年も前の計画を、今更!」と、住民は怒るのである。日本がGHQから施政権を返還されたのは、サンフランシスコ講和条約発効の昭和27年4月の事である。昭和21年であるから、明らかにGHQ主導の都市計画決定である。現在の都市計画法は、昭和33年制定であるから、戦前の国民不在の都市計画法によるものである。

 アメリカは日本に網の目の道路計画を、何故したのであろうか? ヨーロッパの戦後復興もそうであるが、日本はアメリカ主体の世界銀行から金を借りて、戦後の巨大投資を行ってきた。東海道新幹線・東名と名神高速道路・黒四ダムなど、世界銀行からの借金であった。その金利は年率14%と言うサラ金並みの高金利であった。日本の戦後復興でも、アメリカはぼろ儲けをしていたのである。

 それでも日本人は良く働き、高金利を返済し、対米貿易黒字を積み重ねた。「プラザ合意(1985年)」の円高ドル安をもってしても、働かないアメリカは貿易赤字を重ねた。そこで「日米構造協議」が行われ、日本に公共工事の乱発を要求してきた。海部内閣は「公共投資基本計画」で10年間に430兆円の公共事業を約束する。村山内閣では、更に「社会資本整備」名目で200兆円積み増しの、630兆円の公共事業を計画する。

 この辺りが、日本が世界でも稀な公共事業天国である理由ではあるまいか。このアメリカの要求は、「貯蓄投資バランス論」というアホの考える経済論理によるものではある。その結果、予算配分を決定できる政治家がいなくなった日本で、公共事業の7割は建設省(現;国土交通省)、その内の4割は道路事業という事が、何十年も定着している。公共事業の28%は道路事業なのである。

 ところで、アメリカ政府と言うよりも、国家権力を奪取する支配層の思惑から、昨今は公共事業圧力が掛っていない。日本の株式市場の7割は外国人投資家。つまり、アメリカの巨大銀行の手先のヘッジファンドや保険会社が、マネーゲームで日本の富をせしめている。目先の利益の為なら、戦争(イラク戦争など)だって手段として辞さない国だからである。

 まっ、巨大公共事業で事業拡大してくれれば、実態経済規模の拡大に相似して、マネーゲームの収益も上がるのであるから、大阪湾岸線だって喜ぶのではある。

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2016年10月例会のご案内

2016年10月11日 | 月例会案内

阪神間道路問題ネットワーク
10月例会のご案内

2016年10月25日(火)13:30~15:30
西宮勤労会館 第1会議室(4F)

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11月例会のご案内

2016年11月21日(月)13:3015:30
西宮勤労青少年ホーム(ぷらっとアイ)会議室A(3F)
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9日から急に涼しくなり、秋が本格化。慌てて長袖を出した方も、おられたかも▼9月例会は、S画伯・「川西自然」のTさん・「みち環」のHさんとYさん・「中の住環境」のN住職と私の6人参加でした。S画伯が恒例の「川西市美術協会展」に出品です。下記の葉書のコピーをご参考に、最終日は必ずご本人も居るそうです。例会で葉書を頂きましたので、ご案内しておきます▼最近は、次月例会のご案内もしていますが、会場が早々に詰まってきています。11月は勤労会館の隣の青少年ホームです。和室は空いていたのですが、みなさん正座等が大変ですので、少し大きいのですがA会議室となりました▼そろそろ『みちしるべ』11月号の原稿をお願いします。全国集会に持って行きたいので、月内の〆切にご協力お願いします。まだ3本の原稿しかありません、お急ぎ頂けると有難いです▼最近、沖縄のMさんと甲陽園のMさんから、お電話を頂きました。それぞれ、ご主人が大変そうで、老々介護と言うか、お世話に忙しいとか……。若くなる事はないのに、頭は何時までも20才です。思ったようには体は動かず、ついつい失敗など……。事故の無いよう、気を付けたいものです▼TPPを今国会で批准したい安倍内閣ですが、ISD条項は投資家ごときが国家を提訴して、裁判では必ず投資家が勝訴するシステム。投資家が国家の制度を変えて行くことになりますね。来月にアメリカ大統領選挙がありますが、トランプ・ヒラリーともに、候補者も小物になったこと。かつての大統領の威厳はどこへ?悪徳弁護士のH君が、知事や市長になるんだから……。大統領だって、その程度の人物……。百合子さん、築地の豊洲移転では注目株ですが、ヒラリー人気と変わらないものだったら、ガッカリですが……(F)

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E-mail News≪土屋トカチ監督とみる「アリ地獄天国」≫のご案内

2016年10月08日 | E-mail news より

 M.Hiradeさんより、ご案内がありましたのでご紹介します。詳しい内容は、ヒューライツ大阪のサイトからご覧ください。

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みなさん、平出です。
 
 いつも貴重な情報を頂いているKさんからのメ-ルを転送しておきます。すでにご存知の方は重複ご容赦下さい。
 
【以下転送・ ドキュメンタリー案内】
 
みなさんへ

 ドキュメンタリーの案内です。事故があったら、労働者に責任をとらせる企業に対する労働者の闘いを描いた作品「アリ地獄天国」(パイロット版)です。10月15日、来週の土曜日、午後2時半から、ドーンセンターで土屋監督のトークを交えて上映します。時間が許せば、是非来て下さい。

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