『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』**国土交通省のレベルの低さを笑ってあげましょう**≪2023.夏季号 Vol.116≫

2023年08月27日 | 藤井隆幸

国土交通省のレベルの低さを笑ってあげましょう

藤井隆幸

 かつて建設省・運輸省・国土庁と別れていた官庁が、現在は国土交通省となっています。しかしながら、かつての省庁の仕事が合理的に合体しているかというと、疑問を呈さずにはおられません。建設省の大部分を占めていた道路行政は、国土交通省道路局・都市局として、独立独歩というか、利権範疇確保というか、体制が変わっていないのです。

 省庁再編以前から、公共事業の7割は建設省。その内の4割は道路事業と、田中角栄以後は長きに亙って現在まで変わることが無いのです。これは世界でも珍しいことで、予算配分の官僚の喧嘩を、政治屋が仲裁できないという、まことに稚拙な国家体制ということです。

 結局、日本には政策決定権がなく、アメリカの指令で動くしかないということ。その指令は官僚トップに指令され、その指令を官僚が政治屋に伝えるという、奇妙な構造になっているからです。

 明治以来、富国強兵で鉄道王国を目指し実現していた政策が、戦後、自動車対応型に変更させられたのもGHQの指令であった。そして、日米貿易摩擦の問題で、海部内閣に対して公共事業を膨大化させられ、更に村山内閣で肥大化させられたのも、日米構造協議で官僚たちが呑まされたアメリカ政策でした。

 アメリカは日本の政治を鑑みて指令をしているのではなく、アメリカの都合を押し付けているだけです。80年代頃までは、アメリカにとって急速に経済大国になる日本は、敵性国家であったようなものです。ところが、バブルの崩壊で30年及ぶ日本経済の低迷で、世界的国力のなくなった日本。アメリカも戦後世界の憲兵を自称していた地位から、中国・ロシアの台頭、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)がG7を凌駕し、グローバルサウスと言われる勢力が世界で大きな地位を占めるに至っています。

 危機感を抱いたアメリカは、「日米同盟の強化」という日本の経済・軍事がアメリカの補足をするように仕向けています。これまで、日韓が手を組むとアメリカ離れを起こす懸念から、対立を陰で煽っておきながら、今日、手を組ませる方向転換をしだしています。

 さて、そういった情勢の中で、我らが日本の道路情勢を如何に見るかということです。70年代には、日本の高速道路延長は欧米に比べて短いものでした。しかしながら、急速に進展する日本経済の中で、延長距離で欧米を凌駕してくると、一人当たりの道路延長が短いと言い出しました。

 欧米の人口密度は、日本の様な高密度社会ではないので、一人当たりにすると当然ながら長くなるのは道理です。それが、高速道路が足りないという理論にするのは、あまりにも稚拙というもの。とはいうものの、一人当たりの道路延長でも、欧米に追い付いてしまうと、高速道路が足りないという言い訳が出来なくなりました。

 そこで考えたのが、高速道路の都市間速度が、欧米よりも遅いという理屈です。どのようなデータによって言っているのかは知らないのですが、データを出さないのは道路族の何時もの手法ですね。ここで欧米人が日本に来て不思議に思うことをご紹介します。列車に乗っていて、「この街はどこまで続くのですか?」とよく聞かれます。東京から横浜まで列車が走って、人口が密集する家々が途切れることが無いのです。阪神間で言うと、大阪から神戸まで、森や林があるわけがない。

 欧米は人口密度が少ないのと、歴史的に都市が集まってできた国が殆どで、城を中心に街があるのです。街を出ると、そこは森しかないのです。そのような都市と都市を結ぶ高速道路では、制限速度一杯に走れるのは当然。日本のように、出入路が小刻みにあり、圧倒的な交通量があれば、都市間速度が落ちるのは改善しようもない現実です。

 道路交通工学で以て道路施設を考える欧米では、交通が混雑すると、道路を増やすと逆効果であることは自明なので、そんな馬鹿なことはしません。交通量を削減することを考え、例えば通行料金を取ったり値上げしたりします。

 アメリカは既に、日本の公共事業を増やせとは言っていません。でも、日本の官僚機構が、既得権益を守ろうとする属国棄民政策が止められない。アメリカは中露を念頭に、軍事予算を要求するようになりました。道路族と防衛族の喧嘩を、アメリカは如何に支配するのでしょうか。

 欧米との違いを言うのなら、欧米の道路は長き歴史の中で建設されたものです。道路メンテナンスも考慮に入れた中でのもの。ところが、日本は急速に建設した高速道路網。特に高架橋やトンネルが多用されており、使用不能の老朽化時期が急速に固まって発生する事態に遭遇しています。

 道路族よりも防衛族にシフトが考えられる中、新設道路を考える余地は全くないということです。維持管理もままならない事態になっていることを自覚すべきですが、古き良き時代に浸っている道路族。地元に高速道路計画が降ってくると、一世一代の金儲けなどと、淡い考えを持つ時代ではなくなっていることを、高学歴の頭の悪い官僚たちに、みなさん、憐れみをもって教えてあげましょう。

【投稿日 2023.6.10.】

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