2018年3月18日
神戸市長 久元喜造 様
兵庫県知事 井戸敏三 様
西日本高速道路株式会社代表取締役社長 石塚由成 様
国土交通省大臣 石井啓一 様
第二(新)名神供用・開通にあたっての声明書
中の住環境を守る会
代表 西田 正道
私たちは、かつて第二名神自動車道計画に対して、地域住民、自治会、人権団体、市民とともに提言を含めた反対の詳細な住民意見書を提出するとともに、兵庫県の都市計画審議会及び神戸市の公聴会において意見を述べた。
当中地区は、狭い谷間(約南北1.2km、東西800m)に位置し、都市計画法に定めた第1種低層住居専用地域で、静穏、静寂と最も良好な住環境であった。こうしたところに、全国の広域高速道路網に直結する全国にも稀な中国、山陽、第二名神自動車道の三つの広域高速道路とジャンクションは、都市計画の目的から決定的な誤りであるとともに、都市計画は一方で強制執行の手段にすぎないというものである。
又、山陽自動車道の市の環境アセスメントはおこなわれず、又、住民の道路代替案をも聞き入れなかったことは、住民の守り手としての自治体の責務の放棄である。
こうしたなかで、高速道は、地域を三つに高圧線を入れれば四つに分断して、ほっとする景観、昔からのコミュニティを根底から破壊し、まち(村)の風格も著しく低下させた。
こうしたもとで、私たち住民は、何としても安全、安心に住みつづけられるまちづくりを、と全住民議論のもとに、区画整理そして地区計画をすすめ、神戸市のまちづくり条例にもとづき、まちづくり協議会が中心となり住民主体のまちづくりとコミュニティを必死で前進させてきた。
にも拘らず、この間住民に事前説明もなく、第二名神建設にともなう高圧線鉄塔の移設で、航空法にもとづき赤白の鉄塔に置き換えた。これによって、まちづくりにおいて景観からのまちづくりをすすめる上で、重要な百人一首にもうたわれた美しい裏六甲山のパノラマ、里山の景観を稜線まで真っ二つに切ってしまうという決定的な景観破壊をおこした。
住民は、朝の美しい景色をみて「今日一日頑張ろう」と思い、夕方にはこれをみて、精神、体の疲れを癒してきたが、今こうしたことが心身に大きな苦痛をあたえている。
これは、少し位置を変えるだけで赤白鉄塔を避けることができたもので、関係当局等の瑕疵である。
又、日常生活においても洗濯物に車による粉塵がつく、いやな臭いがする、空気振動のようなもので気分がわるい、などなど住民の声を聞いてきた。
こうしたことと共に住民の最大の関心、懸念の一つは大気、騒音をはじめとした健康被害である。
数多くの環境問題の項目があるが、そのうちN02・PM2.5・騒音等をあげる。
N02について環境基準が設けられているが、現基準は、一応安全とされた旧の基準を2~3倍緩められたものである。
従って旧基準値を含む現基準値以下でも、小児喘息はじめ健康被害がでている。
又、PM2.5問題であるが、第二名神環境アセス後、とくに問題になってきている。髪の毛の30分の1以下、眼にも見えない発ガン物質で第2のアスベストといわれている。全身に影響を与えるが、とくに肺の奥、出口のない肺胞にどんどん蓄積され、傷つけ、とくに老化にともない肺の機能を損なっていく。肺ガン、肺疾患で亡くなる人が男性でトップ、女性もトップクラスとなっている。こうした原因として多くの人がPM2.5との関係を指摘している。
日本のPM2.5の発生源は自動車の排気ガスが主要なもので、中地区のように逆転層のできる谷間のところではN02とともに高濃度となり、広範囲に飛散するものである。
日本では、都市部や高速道路の集中するところでは、PM2.5の環境基準はすでにオーバーしている。この環境基準も安全、確かなものといえないとされている。
クボタショックから13年目をむかえましたが、今全国で中皮腫、肺ガンなどのアスベスト被害者の訴訟、裁判がおこなわれている。アスベストを吸い込んで発症するまで20年~50年の潜伏期間があり、被害の本格的発症はこれからである。
この問題は、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)が、アスベストの発ガン性を指摘したにもかかわらず、国や関係大企業は、大量に使用し続けた。これは、まさに公権力、社会権力による人権侵害である。
見えない公害として、PM2.5問題はアスベスト被害と全く共通しており、それは計り知れなく深刻で恐ろしいものになっている。
そして騒音についても、窓を開けて昼寝ができない、散歩をしていてもした気分にならない、又、夜間、音の屈折で360度からの騒音がするなど静穏、静寂な第1種低層住居専用地域に暮らしてきた住民にとって苦痛となっている。又、騒音による低体重出産の報告も全国からあり、不安で深刻である。
第二名神の環境アセスの当時、多くの専門家や神戸市環境専門委員会の意見は、複雑な道路構造や地形により予測がつきにくく、きびしい面もあり、特段の配慮、対策が必要と指摘している。
今回の道路も渋滞解消、物流の促進等といわれているが、その車輌は全て中地区を通過するだけのことで何のメリットもないのである。
関係当局はことあるごとに「公共のため」というが、住民犠牲の公共性は成り立たず、「公共」の名のもとに住民を縛ることはできない。
前述のように私たちは当初、提言も含めた道路建設の反対意見書を提出した。又、今まで述べてきたように、今日の事態をみてもそれらの正しさが明白、鮮明になっている。
今日建設された第二名神の道路構造も、これらを抜本的に解決するものになっていない。
このままであると、差止め請求も視野に入れざるをえないというものである。
健康破壊、まち・景観こわしは、憲法13条人格権の侵害であり、総じて公権力、社会権力による人権侵害である。
私たちは何としても、人間の精神・身体・命そのものを守るために意見を主張し、健康で安心して住みつづけられるまちづくり運動を今後も強め発展させるが、その法的根拠は日本国憲法である。
ここに関係当局には、あらためて人権の視点にたち、万全、特段、抜本的な対策を講じるよう強く要求するものである。