「阪神道路ネット」加盟の「道路全国連」が「全国公害被害者総行動 39th」に提出した報告書を転載します。「総行動」に参加すると、参加団体の総ての報告書や、省庁交渉の要望書・要請書が掲載された、パンフレットがもらえるのですが。今回も、阪神道路ネットは代表派遣を見送りましたので、道路全国連の報告書をアップしておきます。
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道路住民運動全国連絡会活動報告
道路住民運動全国連絡会 橋本 良仁
1 2014年度予算の公共事業費は大幅増
2013年臨時国会で、安倍自公政権は、防災・減災を旗印に国土強靭化基本法を成立させた。
2014年度予算の公共事業関係費は、5兆9685億円(13年度比で6832億円の大幅増、12.9%増)、このうち道路整備事業費は、1兆3228億円である。
2 大型事業の新規・増額を計上
民主党政権下で休止や縮小していた公共事業費が復活し、新規事業も計上されている。予算をみるかぎり、これまでの事業を継続させる予算を確保するとともに、めいっぱい予算化しているのが目立つ。25年前の四全総で計画した事業をすべてやるということである。
全国各地で新規事業を予算化(調査費など)、事業名に政治家の名を冠するものもある。
3 国際競争力強化と国土強靭化(2014年度予算)
成長戦略として位置づける「国際競争力強化」では、首都圏空港、国際コンテナ戦略港湾・三大都市圏環状道路整備を、「国土強靭化、防災・減災」では大都市圏環状道路整備や道路ネットワークを推進する。
三大都市圏環状道路整備と物流ネットワークの整備に1681億円(13年度1523億円、10%増)。
また、重点施策として「特別枠」を創設し、「防災」などの名目で枠いっぱい予算を増やし特別枠1兆2400億円を計上、道路特別枠としては、「災害で不通になった道路の代替ルート確保」「効率的な物流ネットワークの強化」を盛り込んだ。
4 道路の維持管理・更新予算
2013年度から切り分けて計上してきた道路の老朽化対策などの維持・管理・更新費は、1198億円(2013年度1076億円、11.3%増)であるが、国土交通省所管の公共事業関係費5.17兆円に占める割合は1/4にとどまる。
日本の社会資本はすでに30年を経過し老朽化しているものが多く、国土交通省試算でも今後50年間に必要な維持・管理・更新費は250兆円、単純計算でも年間5兆円を必要としている。
5 市民、住民運動の闘い
2013年1月に公共事業改革市民会議を発足させ、道路全国連はその中心的な役割をはたしている。
ダム、道路、湿地・干潟、スーパー堤防、リニア中央新幹線などの公共事業と闘う市民、住民団体が共同で、調査、政策立案し、国会議員に働きかけることを目的としている。
また、北海道から九州まで全国各地で、つぎつぎに裁判が提起されている。
2013年11月に東京で第39回道路全国連全国交流集会を開催した。以下は集会アピールである。なお、2014年は今秋、第40回交流集会を横浜で開催する予定である。
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集会アピール
第39回道路全国連交流集会は、東京国分寺市の東京経済大学で開催され、34団体149人が参加した。昨年の交流集会以後、2回実施された国政選挙で自民党は多数を占め、安倍政権は公共事業費の大幅増額や特定秘密保護法の制定など強権政治の暴走を始めた。
中央自動車道の笹子トンネル事故は、「老朽化したインフラの維持管理こそ優先すべき」ということを明らかにした。自公政権はこれらの事故や、また、近い将来に到来するといわれる「南海トラフ地震」や「首都直下型地震」に備えるとして、強靭な国家建設が必要だとして公共事業予算の大盤振る舞いを始めた。
メンテナンス元年と言いながら、2012年度補正予算と2013年度当初予算の15ヶ月予算の公共事業関係費の老朽化対策の割合は公共事業全体の6.4%しかなく、既存インフラの老朽化対策は隅に追いやられているのが実態である。
人口減少社会の到来を考え、東日本大震災の被災地復興を優先させるならば新規事業を始める余裕はまったくない。このような施策の繰り返しは、次世代に膨大な負担だけを残すことに他ならない。またこうした施策は、貴重な自然を破壊し、培われてきた人と人とのつながりを断ち切ることに他ならない。
本集会の現地見学は、圏央道で無残に破壊された高尾山の惨状を確認した。特別報告では、都市部だけでなく全国いたるところで不要不急の道路建設が住民合意のないまま進められている実態が知らされた。
こうした事態が進行する中、運動と裁判の両面にわたって重要な前進を勝ち取っている団体があることも報告された。テーマ別分科会の議論を通して、参加者は勇気と元気と今後の活動へのヒントを得ることもできた。
法政大学の五十嵐教授の記念講演で指摘されたように、私たちは「政策的思考」力を高め、運動のあり方にも知恵と工夫を凝らしながら国土強靭化政策に真っ向から対決していくことが求められている。
そしてこの道こそは、3.11直後に道路全国連が発信した「不要・不急な公共事業予算を震災復興費へ」を実現する道そのものでもある。
自公政権の暴走に不安を感じ、また異議を唱えて立ち上がっている多くの各層各分野の国民運動とも連携を強めながら、私たちは「国土強靭化」に対峙する新たなたたかいに全力を挙げていくことをここに決意する。
2013年11月10日
第39回道路住民運動全国連絡会『全国交流集会In東京』