『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

今年度(2020年)の道路全国連全国交流集会中止のご案内

2020年07月30日 | E-mail news より

道路住民運動全国連絡会のみなさまへ、道路全国連事務局長の長谷川さんより、今年度の全国交流集会中止のお知らせがありましたので、以下に転載してのご連絡です。
 
 道路全国連では、毎年秋(10月~11月1月月頃)に開催地を変えて全国交流集会を開催しており、今年2020年は東京国分寺の東京経済大学での交流集会を11月28日~29日で予定しておりましたが、現下の新型コロナ感染症の動向を踏まえて、先日7月26日の幹事会Zoom会議に於いて、今年の交流集会開催中止を決定いたしました。

 尚、交流集会は中止しますが各地ではこのような中でも様々な取り組みが行われていることから、活動報告書(冊子)作成は行う予定です。10月末を目途にみなさんから報告書をデータで送って頂き、東京の実行委員会(事務局)が紙媒体で製本し、みなさんには実費で頒布する予定です。(発行などは11月の予定)詳しくは、後日に改めてご案内致します。
 
【2020年の交流集会について】〈判断時の検討内容〉

  1. 現地での準備状況(会議開催状況を含む)はどうか?
    **都内の会議などは一部を除き未だ開催出来ていない。
  2. 新型コロナの感染状況の動向――都市部での感染者増大をどう見るか?
    **第一波の続きなのか第二波なのかは不明だが、感染収束は見通せない状況が続きそうである。
  3. 集会開催時のコロナ対応はどこまで現実的に可能か?
    **3密を回避する為の大教室などへの会場変更は可能。しかし、マイクロバスなどでの現地視察は実現が難しい。体温測定や参加者の把握は可能だが不安は残る。更に懇親会実現は不可能に近い。
  4. コロナ禍のパンデミックを踏まえたコロナ後の公共事業(道路政策)の方向性を打ち出すべきではあるが?
    **交流集会を開催しなくとも、幹事会等で検討して見解を表明することは可能である。
  5. オンライン開催の対応がどこまで出来るか?
    **主催者側のオンライン対応は可能だが、参加者個々人の機器の操作対応の不安は払しょく出来ない。更に、オンラインシステムで参加した満足感があるのかは不明。
  6. 様々なことを想定&準備しながら通常の交流集会開催の緊急性はどこまであるのか。
    **会場での集会開催をしなくとも、緊急性のある事案については、全国連が支援しながら各運動団体が個別対応でも可能である。
  7. 都内の方々を含めて、年内に東京への来訪を呼びかけられるか?
    **現下では「東京へ来て下さい」とは言い難い状況が続いており、今後についても楽観的な見通しは持てない状況である。

以上の事などを踏まえ、今年2020年の交流集会は「中止」とします。今後ともよろしくお願いいたします。

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『みちしるべ』**横断車道(99)**<2020.春季号 Vol.106>

2020年07月11日 | 横断車道

横断車道 ―99―

「マイカーは便利」という命題。80年代頃までは疑われなかった。が、昨今の若者の車離れは凄まじい。30年間も大卒の初任給が変化していない。非正規が主流の若年層の所得は悲惨を極める。買えない車、マイカー思想は無くなった▼便利だと錯覚した車社会。自動車取得税、ガソリン税等、重量税、それにかかる消費税、有料道路の通行料金。マイカー取得者は、膨大に出費をした。しかし、自動車の走行にかかる社会的費用の数割も負担はしていない。道路建設費・環境対策費・事故対策費等の殆どは、税金で賄われている▼夫婦の年金が月額30~50万円の団塊世代のマイカーを批判はしない。マイカーが前提の社会構造が営々と築かれてきたのであるから▼さて昨今、ガラケーを持つ人たちにも、スマホへの買い替えが勧められる。殆どの人々がスマホを使用する世になってしまった。「こんな便利なものはない」と思う人も多かろう。自動車の外部負経済を指摘したが、スマホの負の側面は無いのだろうか?▼信号で立ち止まると、ポケットからスマホを取り出す。信号無視の歩行者妨害、無灯火の手放し運転自転車、でも、しっかりスマホを操作している。こうなったら病気以外の何物でもない▼若年層は顔が小さい。硬いものを噛まないので、顎が未発達なのだそうだ。脳の発達にも支障があるらしい。アフリカの原住民は数㎞先の人の顔が認識できたそうな。近未来人は、超近視になるという。スマホなどの影響だそうだ▼あなたは一日に何時間スマホの画面を見ている?ラジオからTV視聴が普遍化して、人々は思考しなくなってきたという。スマホは何でも即答してくれるが、利用者は賢くなったのではなく、洗脳されやすくなっただけではないか▼コロナ禍の今日、一層スマホとご対面している向きが多いと思う。スマホの位置情報を利用して、接触者を特定し、感染を防ごうという試みがある。冷静に考えて、全員が感染者である認識の下、必要な時と場面で、必ずマスクを着用すれば、殆どの感染拡大を防止できる筈。何でもかんでもITやAIを使用しなければならないものではない▼マイカー時代、裏のタバコ屋に行くのにも車を使い、ガソリンを消費し腰痛になることを誘導されていた。総ての生活にスマホを連動させ、便利と錯覚させるのは重要。庶民が誘導される力学には、必ずIT企業の思惑が潜む▼世界の巨大企業は、中規模国家の財力がある。それらの企業は何らかのAIを利用するIT企業だ。そもそも1%の巨大企業家たちが、人類の富の90%を持つ事が異常だが、更に急速にそれを極端化させようとしている▼選挙で首長や議員を選ぶ民主主義だが、国家を凌ぐ力を持つIT企業パワーとは何なのか?人々の生活を決定するのは、実質、IT企業というのだろうか?そして、究極の企業利益に奉仕する。 (コラムX)

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『みちしるべ』**横断車道(98)**<2020.春季号 Vol.106>

2020年07月11日 | 横断車道

横断車道 ―98―

昔、田舎はプライバシーがない、都会は気遣わず自由だと。隣人を見たこともない。それがDVや保護責任者遺棄などで、問題にもなってきた▼現代、プライバシーは護られているか?お得なポイントカード。改札を通るICカード。有料道路のETC、幹線道路のNシステム。至る所に防犯カメラ。建前では、個人情報保護だが▼世界を揺るがすコロナ禍。感染者との濃厚接触を、スマホの位置情報、又は店舗QRコードで接触者を特定するソフト。感染恐怖から、プライバシーを放棄するが。マスクの徹底の方が効果的だ。夏場は、熱中症のリスクがある。それに、酔払っては予防もクソもない▼IT(情報技術)とAI(人工知能)の発達で、これまで考え付かなかったことが実現する。ポイントカードには磁気テープが張り付けてある。ICカードは磁気テープの約455倍の情報量である▼コロナ禍の中で、ITやAIでこれを防ごうとの主張がある。新型コロナウイルスのワクチンと、生体認証チップ(量子チップ)を併用し、対策しようと言うのだ。イベントホールなどの入り口で、このチップ読取装置を設置し、チップのない人を入場させない▼コロナ禍対策の為には、個人情報を放棄もしかたないという意見が多数を占める。だが、量子チップの膨大な個人情報を、いったい誰が掌握するのか?個人の生れてから死ぬまでの情報の総てが特定できる。政府という国家権力が掌握するのも不安だ。完全独裁になるから。恐ろしいのは、国民に選ばれてもいない巨大企業が把握することだ。後者の可能性が、当然のように確実性がある▼GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)というのは聞いたことがあろうかと。既にBig9つまり、G—MAFIA(Google・Microsoft・Amazon・Facebook・IBM・Apple)とBAT(中国のIT3企業のバイドゥ・アリババ・テンセント)が、国家を凌ぐ勢いを持つという。国民の代表ではなく、巨大企業が人類をコントロールするという思想だ。国家権力の軍事力をも掌握できる可能性がある▼コロナ禍はワクチンが開発されれば終息するという考え方があるが、多少の疑問も残る。70憶人の人類すべてに供給されるのだろうか。ワクチンの効力は持続するのか。別の新型ウイルスには、またも開発する必要がある。副作用問題。いずれにしても、膨大な努力とコストが必要▼コロナ禍に決定的に効果のあるのは適切なマスクの着用であろう。アメリカのトランプ大統領や、ブラジルのボルソナーロ大統領のように、マスクを嫌がる幼児性があるのも実際ではあるが。ワクチンの開発も必要だが、それだけでなく極端な努力を必要とせずに、コロナ禍に冷静に対処できるのだが▼あまりにも不安を強調することにより、何かの権力を掌握しようとする動きにこそ、危機感を持たねばならないのではなかろうか? (コラムX)

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『みちしるべ』**山川泰宏さんを偲ぶ**<2020.春季号 Vol.106>

2020年07月11日 | 藤井隆幸

山川泰宏さんを偲ぶ

編集長代理 藤井隆幸

 「阪神間道路問題ネットワーク」の歴史は、1995年5月25日に砂場徹さん(初代代表)のお宅に、5人が集まって準備会を始めたのがきっかけでした。7回の準備会を経て、「阪神間道路問題ネットワーク」として正式に例会を始めたのが1996年1月14日、芦屋の翠ヶ丘集会所。そして1999年9月に交流誌『みちしるべ』を創刊しました。

 四半世紀の経過の中で、多くの仲間の皆さんを見送ることになりました。今回は、【甲陽線地下化を考える市民ネットワーク】事務局長、【神戸市民交流会】(震災・災害ボランティア団体)事務局長、【神戸・心絆】(神戸市民交流会の後継)会長の山川泰宏さんです。

 『みちしるべ』104号(2019年・秋季号)をお読みの方は、「がん告知を受けて」を氏が書かれていますので、大方の経過はご理解いただけるものと存じます。ご家族からの会葬のお知らせを5月上旬に頂き、知ることとなりました。既にE-mailで訃報のお知らせはさせて頂いておりますが、改めてのお知らせとなります。

 体調を崩されるまでは、よく例会にもご参加いただいていました。いつも缶ビールをご持参いただいて、皆で楽しくいただいたのも過去の記憶となりました。『みちしるべ』をご自宅にお届けするのは、ルートの都合から、いつも深夜になってしまい、お会いすることがかないませんでした。3月頃からは、新型コロナウイルス感染症の関係で、例会も中止を余儀なくされ、お会いすることもお見舞いも出来ず、悔やまれる次第です。

 山川さんは例会にご参加されても、これと言って楽しいお話や冗談を言われることは、殆どありませんでした。しかし、駄洒落好きな仲間の話には、穏やかに笑って付き合っていただいていたのが印象的でした。

 発言される内容は、いつも真剣で重みのあることでした。頑固なほどに忍耐強く、最後までやり遂げる姿勢は、見習うべきものだと思っています。甲陽園線(阪急電鉄)地下化問題(道路事業)では、当局が当面は断念し、運動から殆どの市民が退く中でも、亡くなるまで頑張っていました。

 兵庫県下の環境ネットワークの「エコクラブ」が主催する、全県の二酸化窒素カプセル調査を、最後の一人になって、体力的にもつらいと言いながら、亡くなるまで続けておられました。

 山川さんと言えば、震災・災害ボランティアが切っても切れないものです。阪神淡路大震災から、その活動は始まり、豪雨災害、特に東日本大震災では、病を押して最後の現地支援を行われていました。

 この活動は当初【神戸市民交流会】として行われていたのですが、メンバーの高齢化で解散するも、【神戸・心絆】を立ち上げて、活動を継続されました。このあたりが、山川さんの頑固なまでの忍耐強さというか、実直な一面を現していると思います。

 そんな性格の中でも、先に亡くされた奥様との仲の良さは、甲陽園線地下化ネットの前川協子さんから聞かされていました。この『みちしるべ』にも40本の原稿を投稿いただき、編集長代理としましては、とても助かっていました。原稿のみならず、日々の活動をE-mailで頂くことも多く、その中で奥様の写真が数多くありました。お会いすることは無かったのですが、いつも一緒に写っていて身近に感じたものでした。

 聴くところによれば、日福豊中教会に通われるクリスチャンであるとのこと。それが山川さんの優しさなのかどうかは、よく分かりませんが、行政にはっきりとモノを言う反面、人々への穏やかな思いやりは、人後に落ちないものでした。

 コロナ禍の昨今、交流がままならない中でのお別れが、とても残念で仕方がありませんでした。

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『みちしるべ』**原発反対は風評被害につながるか?**<2020.春季号 Vol.106>

2020年07月11日 | 川西自然教室

原発反対は風評被害につながるか?

田中 廉

 原発に反対することは、――福島での風評被害を助長し、『科学的に安全が証明されている』海産物・農産物の販売を阻害し、福島の人を苦しめている――と主張する人が、たまたま近くにいたので、その人への反論です。福島第一原発の汚染水処理(特にトリチウム)について話題になったのでその点について少し詳しく書きました。

 海岸に立地している原発が爆発し、そのとき大量の放射性物質をまき散らしたのだから、多くの国民が原発に強く汚染された地域の農作物、魚類など食べ物について、慎重になるのは当然のことです。

 自分の仕事に誇りを持つ生産者も、汚染された食べ物を売ることはありませんでした。信用を回復するために、生産者は、時間をかけ土壌の改良を行い、海では汚染水の海洋流出が止まり放射性物質の影響が低下し、現在は放射線の測定を行っても健康に問題がないだろうという状態にまで回復した状況だと思います。

 福島は安全性アピ-ルの為に、たぶん非常に丁寧に放射能の測定を行い出荷するでしょうから、もし、ス-パ-で福島産の魚や野菜が売られていたら、私は気にせず買います。

 しかし、今まで政府、企業は不利なデ-タ-は隠し、うそをついてきた過去があるので、政府や行政の数値をそのまま信用できないという人や、できるだけ放射能の影響の少ないものを、特に子供に食べさせたいと思う人がいても自然です。これは個人の自由です。このことにとやかく言うのは失礼です。

 今、風評被害はあるだろうと思います。これには、放射能の測定を行い安全基準以下であることを明記するなどの、時間をかけ丁寧に説明を重ねて解消してゆくものです。「科学的に安全性が立証されているのだから、文句を言うな」というのでは、権威主義的で反発を招くだけです。

 内容についていくつか、指摘したいことがあります。

1.風評被害

 現在、福島の魚は風評被害で全然売れないという状態ではありません。地道な努力で現在は震災前の15%ほどまで回復しています。2017年には福島の漁港でセリが始まり、魚種によっては高い値が付いたそうです。今年2月には全魚種が出荷できるようになりました。

 豊洲市場の水産会社との交渉も進められ、安定的な供給が見込めれば、市場で取り扱いができ、販路も確保できるとこが分かったそうです。2018年より、イオンが東京・埼玉などの8店で「福島鮮魚便」コーナーを設け、昨年は好評なので10店に増やしています。そして今年は、千葉・名古屋・大阪でも特設会場で販売をしています。反応もよく、思っていたような風評被害は無かったようです。

 今後、出荷量は紆余曲折があっても、伸びてゆくだろうというのが現在の状況ではないかと思います。ただ、アルプス処理した放射性物質を含む汚染水を海に流せば、今までの福島の努力は水の泡になります。いくら基準値以下だといっても消費者は納得しないでしょう。

 風評被害とは「根も葉もない噂により経済的な被害を受けること」です。原発汚染水、また、安全とされるトリチウムの危険性について、疑問や意見を述べることは、根も葉もないうわさ話ではありません。多様な選択肢を認め合い、各人が自由にものを言えることは、憲法に保障された権利で民主主義の一番の基礎です。

2.科学的に問題がない?

 これほど誤解を招く言葉はありません。科学に絶対はありません。「科学的に問題がない」から、それに反対するのは無知で「風評をあおる」などというのは、科学を知らない人の言葉です。

 規制値は、現時点で我々が持つ知見と、その値が社会に与える影響を、政治的に配慮して決められています。私たちは、自然界のいろいろな事象のほんの一部しか知りません。今後、研究や経験が積み重なってゆけば、判断の基礎になった知見は変化します。それは、規制が厳しくなることもあれば、ゆるくなることもあります。

 「政治的に配慮」とは、規制によって生じるコスト、技術的問題、実施団体(今回は東電)への経済的負担、水産業などへの影響を考えることです。規制値は、純粋に安全性だけを基に決められているものではありません。「現時点で我々が持つ知見に基づく安全性」と「政治的に配慮」のバランスの上に作られています。

 「科学的なデーターに基づく」と言われる規制値は、たいがいの場合、会社の負担(コスト)が少なくなるよう、また、原発内での作業がしやすいように、緩和される傾向にあります。ですから、決して今の規制値が「科学的」根拠だけで作られているのではないのです。

 それゆえ、政府・企業の言う「科学的に安全」に不信感を持つ人がいても自然なのです。そして、その不信感を主張することは、「科学的に安全である」と主張するのと同じように、根拠があり表現の自由で守られるべきことです。

 政府のやることに監視の目を光らせている人たちがいることで、政府や企業が不正や不合理、非科学的なことをする予防になり、それは国民の利益にもかない、長い目で見ると政府や企業の利益にもなります。すべての人が、お上のいうことを素直に信じているのではないのです。

3.福島第一原発の汚染水処理(特にトリチウム)について

 資源エネルギ-庁によれば、2019年10月末の汚染水の貯蔵量は約117万㎥で、トリチウム量は約856兆ベクレルです。日本のトリチウムの排水基準は60万ベクレル/ℓで、年間の放出管理基準値(総量規制値)は22兆ベクレルです。(この値は、国内で最初に稼働した福島の原発のトリチウムの年間排出量が20兆ベクレルなので、福島原発の排出量が先にあり、それに合わせて基準を決めたと疑われる。)

 政府はアルプス処理水を、基準値以下に薄めて海洋投棄しようとしています。トリチウム以外の放射性物質の総量規制は、全部合わせて2200億ベクレルで、トリチウムの1%です。

 政府は、トリチウムの崩壊電離エネルギ-が非常に微弱であること、人体に取り込まれても速やかに排出され蓄積しないこと、生物濃縮がないことなどを理由に、人体への影響が他の放射性物質と比べ極めて低いと、大量に放出しても問題はないとの判断です。

 問題はいくつかあります。

① 希釈して海洋に放出する案

 トリチウムの総量規制は年間22兆ベクレルしか海洋投棄できないので、今あるアルプス処理水(約856兆ベクレル)をゼロにするには39年ほどかかります。今でも毎年100~150㎥の汚染水が発生しているので、さらに時間がかかるでしょう。

 たぶん、政府・東電は基準値を大幅に緩和してもっと短期間で海洋投棄を行うのではないかと危惧されています。その場合は、今までの規制値や、その基となった科学的根拠はいったい何だったのかという疑問が生じます。

 規制値は安全だと合理的に判断される値に、更に安全係数を掛けて厳しい値に定められます。それを経済的な理由で安易に変更すべきではありません。もし、規制値以下であれば海洋投棄してもよいとなれば、薄める海水は無尽蔵にあるのだから、なんでも海に捨てることができるようになります。
一度特例を認めれば、堤防が決壊して洪水になるように、他の場合でも同じようなことが行われ、海は核のゴミ捨て場になります。

 また、東電が2018年に認めていますが、アルプスの処理能力を超えた汚染水を処理したため、現在のアルプス処理水の80%が、トリチウム以外の本来除去されるべき放射性物質が規制値以上、場合によれば何万倍も高い濃度で存在しています。これも再処理せずに希釈して流せることになります。(一応東電は再浄化するといっています)

② トリチウムの生物への影響および生物濃縮について

 政府・東電の説明:「トリチウムは自然界にも広く存在し、生物への影響は微々たるもので危険性はほとんどない。」という説明でした。その根拠は以下の3点です。

  1. トリチウムは自然界に普通に存在し、毎年、宇宙線と大気の反応により大量に作られ、私たちの体内(体重60㎏として)には50ベクレル程度、日本の水には1ベクレル程度存在すること。
  2. トリチウムが出す放射線はベーター(β)線ですが、そのエネルギ-は非常に弱く紙1枚で防ぐことができ、進む距離も非常に短く、その人体に与える影響は、他の核種に比べて桁違いに低いこと。
  3. そのため外部被ばくは無視でき、問題とされるのは内部被ばくです。
    トリチウムは水素の同位体なので水素と同じ働きをします。(厳密には極々少し重い)汚染水ではトリチウム水(HTO=水素原子1個+トリチウム原子1個+酸素原子1個)として存在し、水(H2O=水素原子2個+酸素原子1個)と同じ挙動をします。トリチウム水は体内では通常の水と同じように約10日で排出され、特定の臓器に蓄積されることはなく、また、生物濃縮を起こすことは確認されていない。
  • 反論:環境中のトリチウムは、ほとんどがトリチウム水(HTOと称す)として存在しますが、一定量が有機結合型トリチウム(OBTと称す)になります。OBTは、主として光合成によって形成され、海中では植物プランクトンや藻類により形成され、植物連鎖の中に取り込まれます。
    人間が経口摂取したOBTは、その50%がトリチウム水として短期間で排出されますが、ごく一部のOBTは生物半減期が1年となり長く体内にとどまり続けます。英国プリストル海峡で、二枚貝やカレイに高濃度のトリチウムが蓄積されているという論文が2001年に発表され、それに対し、測定方法などに問題があるとの反論も出されました。
    英国食料基準庁のガイドラインに従い1997年から10年間、毎年調査し続けた結果では、海水のトリチウムが5~50ベクレル/ℓであったのに対し、ヒラメは4000~50000ベクレル/㎏、二枚貝のイガイは2000~40000ベクレル/㎏で、夫々平均3000倍と2300倍の濃縮率でした。
    また、トリチウム水で育てた海藻を二枚貝のイガイに与えた実験では、投与量に比例してトリチウムが蓄積していることが確認されています。以上のように、生物濃縮については、従来とは異なる実験結果もあり、生物濃縮の有無については合意されていないのが実情だと思います。

③ トリチウムの内部被ばく

 一番の問題は、トリチウムは水素と同じ挙動をするために遺伝子の水素原子が、トリチウム原子に置換されることです。トリチウム原子が崩壊しヘリウム原子に変化する時に、それによって原子の結合が切れ、またベーター線により、周囲の遺伝子を傷つけ、癌などのリスクが高まる危険性があると言われています。

 これに対しては、遺伝子は様々な要因でいつも損傷を受けており、「修復酵素」の働きによって修復されており、また、異常な細胞を排除するシステムを人間は持っているので問題がないという人もいます。

④ トリチウムの安全性

 トリチウムそのものの毒性は他の放射性物質に較べて、極めて低いが、福島の汚染水のトリチウムの量は桁違いに多く、総量は最終的には「兆」のレベルではなく、「京」のレベルになるだろうと思われます。

 これを海洋投棄するのは、環境に対する負荷が大きいのではないかと思います。前述の5~50ベクレルの海水で育てたカレイやイガイの生物濃縮のことを考えると、回遊魚でない底魚や貝などでは問題が生じる可能性を排除できません。

 よって、希釈して海洋投棄することには反対です。近畿大学では特殊なフィルター、京都大学では吸着剤を用いてトリチウムを除去することに成功したと報道されています。まだ、実験室段階ですが、研究を続ければ効率的、経済的にトリチウムを除去する実用的な技術が開発される可能性があります。国・東電は、海洋投棄一辺倒でなく、こちらの技術開発にもっと資金を投入し、力を入れるべきだと考えます。

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『みちしるべ』**自動車騒音に見舞われた私**<2020.春季号 Vol.106>

2020年07月11日 | 澤山輝彦

自動車騒音に見舞われた私

澤山輝彦

 もう開通して何年になるのだろう。川西市北部を通る新名神高速道路(初期は第二名神と称していた)の建設に、川西自然教室は反対する運動を展開して来た。第二名神が通る川西市北部は、川西自然教室の大事な自然観察のフィールドだったからだ。

 丁度そんな時、あちこちの道路問題について共に話し合わないかと、呼びかけがあった。その「阪神間道路問題ネットワーク」(以後「ネットワーク」と省略)の設立会議に参加し、川西自然教室は趣旨に賛同、発足後ずっと加盟団体の一つとして今日に至っている。

 第二名神については反対運動をしたものの、結果はどうにもならず出来上がってしまつた。私は川西自然教室から派遣され、ずっとネットワークと付き合って、今日に至っている。ここで、「付き合って来た」というやや軽い言葉を使ってしまったが、それにはわけがある。これから私が書く、極最近、わが身の受けた体験からすれば、これまで行動を共にして来た反対運動の数々を、まったく他人事としてしか考えていなかったのだ、ということがわかったからだ。

 私は、この四月に川西市から吹田市竹見団地へ引っ越した。公団住宅である。今では都市再生機構とかいう名に変わったが、私には公団住宅という言い方がなじんでしまい、今もそう言っている。そんな竹見台団地なのである。

 住まいは建築年の古い東西に面した建物の一階だ。窓から他の棟が前後左右に見えるということはなく、自然と人工の緑が見える。最寄の阪急千里線・南千里駅から10分ほど、ほとんど平地で高齢者には良い条件であることなどから、ここで私は辞世の句を詠むことになるのか、など考えながら越してきたのである。それはそれで良かった。

 私は自分の部屋を東側に取り、画室として十分足りるので快適な時を過ごし、幸先は良いなと思っていたのだが、少し経ってあることが気になりだした。ネットワーク的に言うと車の騒音なのだ。今、自分の身に降りかかった騒音問題を考えるとネットワークで共に取り組んだと思っていた騒音問題、排気問題など結局は他人事としてしか考えていなかった、という部分が多かったのに気付いた。

 だから今、自分の問題とした時、これまでのネットワークでの私の運動は、「付き合いでしかなかった」のではなかったかと反省しているのだ。まあ許して下さい。

 竹見台の私の部屋の東側約50m、約3mほど低くなった所に、ルート121府道吹田箕面線がある。片側2車線、中央分離帯、両側に並木の植栽帯、その外側に歩道と、よく出来た路である。並木は歩道に日陰をつくり歩くのには気分の良い道で、ジョギングする人も多い。問題はこの道路の交差点の一つである、津雲台二丁目の交差点がほとんど私の棟の横にあり、信号待ちの車の停車発車音が少し気になりだしたのだ。

 特に発車時のエンジンをふかす音、そのブウーンという音のウーンという、低い周波数音の部分が部屋にこもり響くのだ。大型・中型トラックやバスにその原因が強い。まあ一日中絶え間なくということではないから、我慢しなければならないのかなあ、と思いもする。大型自動二輪や高級外車の発進音にも、時々うるさいのがあり、これは嫌いだ、我慢したくない。

 以前、ハイブリッド車、音なしの自動車が危ない、なんて書いたことがある。確かに静かな走行をする。全ての車種がこんな機構を搭載すれば問題は解決するが、まあ無理だろう。せめて夜間だけでも市街地の走行は静かにということで、なんとかならないのかなと思う。これまでここに住まわれた方々には、こんな感覚はなかったのだろうか、まだどなたにも聞いていない。当分は我慢して慣れるか、自分なりの対処法を考えることにしょう。

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2020年7月例会のご案内

2020年07月07日 | 月例会案内

 

阪神間道路問題ネットワーク
7月例会のご案内


2020年7月27日(月)13:30~15:30
西宮市立勤労会館 第1会議室(4F)

九州等では甚大な水害。コロナ禍も収まらぬ中、特筆されそうな梅雨ですが、無事お過ごしでしょうか▼前月に続き、無理のない範囲での例会を開催します。6月例会の参加者は、S画伯・「みち環」H代表・「川西自然」T代表・私の4人でした。駅で待合せ、まずは喫茶店で喉のアルコール消毒。久しぶりの雑談に花が咲き、結局、浜までの散策もせず、消毒で終わりました▼今年度の年会費ですが、多額のカンパを受けて、当面は団体\3000・個人\1000と決めていました。しかし、コロナ禍の社会的情勢もあり、今年度に限り年会費は免除ということになりました▼毎度の事、遅れ遅れの『みちしるべ』春季号ですが、7/23に印刷予定となりました。既に夏に突入しています。夏季号の原稿をよろしくお願いします。“コロナ禍”とか“豪雨被害”など、テーマはたくさんあると思います▼11/28~29に開催予定の「道路全国集会(東京)」につきまして、7/26に名古屋にて全国幹事会を行います。参加ご希望の方は、ご連絡いただければ、ご一緒に行こうと思います▼梅雨が明ければ、コロナ化は残るものの、例会の提案も募集したいと思います。映画鑑賞などは、きちんと節度を持てば、自粛すべきものでもないそうです。良い案があればご連絡を。(F)

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