軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

ロードマップ合宿に参加

2010-07-12 23:14:42 | その他の雑記
 参院選も終わり、やっと更新再開できる状況になりました。強化月間を謳いながら、間が開いてめんなさい。
 さて、10、11日の両日、山梨の某所で開かれた宇宙エレベーター協会(JSEA)のロードマップ合宿が山梨で開かれ、初日のみ参加してきました。今回はその合宿についてお伝えします。
 5月29日の会議内容の延長に近く、新たに参加した方もいたので親睦会的な色合いも濃いものでした(ていうか温泉行ったり外でバーベキューしたりと、半分はレジャーだったのですが。JSEAの青木先生、大変お世話になりました)。
 初日の内容は、これまで作ってきたロードマップ、というよりロードマップを作るための青写真の段階のモノの報告、国際宇宙ステーション(ISS)など宇宙空間でのトイレの構造や課題、意見交換など。トイレについては、ISSでは大小の便を分けて回収し、宇宙船に持ち出してもらっている実態などが興味深く、あまり表に出ない話ながらも、宇宙における排泄物処理は、これからも重要課題であり続けるのだろうと実感しました。
 ロードマップの概況報告では、作成の中心的役割を務めているM村さんが、技術、法律、公益事業、協会活動を4本柱に挙げ、一番目の技術に重点を置きつつ進めたいと説明。その上での重点項目は(1)SEとは何か (2)なぜ必要か (3)どこに造るか (4)いつまでに必要か (5)誰が造るか (6)どのように造るか (7)いくらかかるか──など。

 前途多難という感想は前回と変わりませんし、「本当にできあがるだろうか」という不安はぬぐえません。特に、あえて厳しいことを率直に言いますが、意見交換で毎回でてくる理想論と、現実に事を進める知恵を区別できない限り、世間に相手にしてもらえるようなプランはできないのではないか?
 具体例を言うと、上記の(5)の誰が造るかという点。5番目どころかもっとも重要であり、ほかのすべての要素を支配してしまうだろうと私は考えています。必要性や目的はもちろん、適用される法も、金の出所もノウハウも、建造主体によってすべて異なってくるはずです。ところがこの話になると、「軌道エレベーターは人類共通の財産にしなければならない」という理想論が必ずと言っていいほど飛び出して思考停止になるんですね。
 私たち日本人は島国思考というか、ついこうした独りよがりな思考に陥ってしまうのでしょうが、世界中の人も同じように考えるというのは甘すぎる。それに、「~すべき」「~しなければならない」という言説は、違反者を矯正できる執行力の担保があって初めて意味を持ちます。無力なJSEAがいくら「べき論」を唱えても、軌道エレベーターを建造したいという、意欲と潜在力を持つ主体の立場や利益にそぐわなければ、「あいつらに指図されるいわれはない」と無視して勝手にプランを進められるだけです。

 えてして理想論というのは、口で言っていれば体面が保てて、それが受け入れられないことを、自らの無策ではなく相手の無理解のせいにできるという、現実と向き合うことからの格好の逃避地となりうるものです。でも気持ちだけじゃ何もできない。ここで必要なのは問題を解決する処方箋です。
 理想も情熱も大切ですが、それは語るためのものではないでしょう。大切なものこそ、軽々しく口に出して吹聴し、安売りしてはならない。むしろ、達成されるまで守り通さなければならない。理想を守り、実現するためには、私たちはプラグマティストに徹し、したたかな戦略をロードマップに取り入れなければならないのではないでしょうか。

 ではロードマップ作業において具体的にどうすればいいのかというと、誰がどう造るべきということを指図するような内容ではなく、建造主体の候補をカテゴリー別に分けて、それぞれの主体が軌道エレベーターを建造すると言いだした時に参考にしてもらえるようなプラン(もっとあざとく言うと、喰いついてきそうなエサや乗ってきそうなネタ)を多彩に用意し、状況に応じてフレキシブルに提供できるようにすべきと思うのです。そうやって、相手の一部となって食い込むくらいでないと。理想は胸の内で温めて、隠し味程度にしておきましょう。

 ロードマップは秋に欧州で開かれる学会で中間報告的なことを行う予定なのですが、上記に絡むテーマについては、一部をまとめるよう御指名を受けた上、軌道エレベーターの用途の一例として、2008年の米国会議で発表した軌道エレベーターによる核廃棄物の処分を取り入れてもらえそうなので、微力を尽くせればと思っています。

 しかし。。。私はいつの間にロードマップ作成のメンバーになったのか? まあいずれ貢献できればという気持ちで見学していたつもりだったからやぶさかではないのですが、ああ、また一つ仕事が増えた。

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