goo blog サービス終了のお知らせ 

軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

イプシロン、打ち上げ成功

2013-09-15 13:12:50 | 気になる記事
イプシロン、打ち上げ成功…新型国産12年ぶり

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新型ロケット「イプシロン」が14日午後2時、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた。機体は轟音をあげて上昇、同3時1分に観測衛星「スプリントA」を分離、打ち上げは成功した。衛星は順調に軌道を周回している。衛星の愛称は、発射場に近い岬の地名「火崎」にちなみ「ひさき」と命名された。日本の新型ロケットの打ち上げは、2001年の大型ロケット「H2A」以来、12年ぶりとなる。(後略。YOMIURI ONLINE 9月14日)

 当初は「豆知識」の更新の予定だったのですが、世間をにぎわしているので一筆。イプシロン打ち上げおめでとうございます。台風の前に決着ついて良かったですね。取材の都合でやきもきしていた秋山さんもひと安心したことでしょう(業務日報 フリーライター秋山文野の取材日誌)

 国産ロケットとしては12年ぶりの新型だそうで。H-2シリーズ(?)が登場した時の感動ほどではありませんが、軌道エレベーターの実現(つまりロケット時代の終焉)を叫ぶ立場ではあっても、1人の宇宙好きとして新世代ロケットの登場はときめいてしまいます。
 ちなみに初めてH-2の仕組みを知った時は「これぞ日本のお家芸」と感心したものです。固体燃料ロケットブースター(SRB)コンポジットの組み合わせによって、低軌道から静止軌道、さらに地球外天体まで、軌道投入能力のバリエーションの幅広さに脱帽してしまいました。
 イプシロンは、このH-2に使われたSRB-Aを第1段に使用してコストを削減、全体として低軌道用モータに特化した機体を造ったわけですね。米国の「アレス」もSRBの転用などをやっていますが、パソコンが2台あれば可能な管制なども含め、売れ筋トラックの部品を使って、お徳用の軽トラを造ったみたいな印象を受けますね。あるいはiPhone5sと5c? 技術の再利用によるコスト削減を進めた一方で、イプシロンには打ち上げ時の自己診断を行うAIを積んでいるんだそうです。先日リフトオフ直前に延期となったのは、これが正常に機能したお陰だとすれば大したものです(もっとアバウトでもいいという指摘もありますが)。

 そもそも宇宙機の開発というのは「枯れた技術」を用いるのが常識だそうです。何しろロケットは打ち上げ時の加速と振動がものすごいし、宇宙空間での放射線や熱の影響から機能中枢を守らなければならない。だから新品で高性能だからいいというわけでもなく、いくら性能が良くてもデリケートなものや、使用経験値の浅い装置、修理が困難な機械などは極力積まないのだそうです。人工衛星も搭載前に、振動試験設備で慎重にテストして、ちゃんとMAX-Q(最大動圧高度)を越えられるかを実証しますし、宇宙船のスイッチ類が仕組みの単純なアナログ式が主で、プログラムに左右されるタッチパネルなどになったりしないのは、そのためなんでしょう(馬鹿の一つ覚えのようですが、軌道エレベーターができたら、こうした問題は解消されます)。
 そうした中で、安くて精密なイプシロンには、日本の技術者の込めた愛のようなものが感じられますね。ただちょっと残念なのは、日本の宇宙開発の方向性が、低軌道重視に傾いているように見えることでしょうか。安全保障上重要なことだし、H-2との両輪でやっていくとのことですが、個人的にはやっぱり宇宙の神秘や謎を解く方に重点を置いてもらえればうれしいのですが。

 なお、イプシロンを大陸間弾道弾や中距離弾道弾に転用"できる"と難癖つける向きがあるそうですが、

当たり前だ。

 寝言は寝て言え。兵器転用できないロケットなんてあるの? 技術やハードウェアは医者のメスと同じだ。手術に使えば医療器具だし犯罪者が使えば凶器になる。人を害するのは人であって道具じゃないということですよね。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エクアドル初の衛星、旧ソ連の宇宙デブリと衝突

2013-06-10 22:29:56 | 気になる記事
エクアドル初の衛星、旧ソ連の宇宙デブリと衝突
エクアドルが4月に初めて打ち上げた衛星が、旧ソ連ロケットの残骸と衝突した模様だ。引き続き軌道に留まっているようだが、送信は途絶え、制御不能となっている。(後略。msn産経ニュース 5月28日)

なんたる理不尽! ヽ(`Д´)ノ
 いやもうお気の毒としか言いようがない。エクアドルには何の非もない、とばっちり以外の何物でもなく、子供向けの教育用キューブサットというのがまた泣けます。まあ軌道投入する際の中国の技術には少々引っかかるものがありますが。
 宇宙条約では、締約国が打ち上げた物体が他の締約国またはその国民に損害を与えた場合には、当該締約国が直接に損害賠償責任を負わなければならないことを定めています(7条)。また宇宙損害責任条約でも過失責任が求められています(3条)。今回の場合両国とも締約国ですし、そうでなくても両条約とも国際慣習や法の一般原則とみなせるので、法的責任の所在に関しては議論の余地がないように思われます。
 じゃあこれで、旧ソ連の国家主権を継承したロシアが、すんなりエクアドルに賠償するのかというと、けっこう怪しいのではないでしょうか。4年前にロシア自身が同じような目に遭っていて、小型の科学衛星が中国の衛星破壊実験で生じたとみられるデブリと衝突し、中国は「ウチの国の衛星(の破片)じゃないもーんだみのもーんた」とゴネて揉めたらしいです(どっちもどっちだぜ少しは反省しろよう)。今回ロシアも同じ態度をとる可能性は決して低くなく、国際法の常として罰則がないので、すっとぼけられても追及が困難なのですよね。ちなみに4年前の件はその後どうなったのかは詳しく知りません。情報をお持ちの方、ご提供いただければ幸いです。エクアドルが保険に入ってるといいんですけど。

 いずれにせよ、ここんとこデブリの被害が深刻化してきているように見えます。もうケスラーシンドローム目前だという指摘もありますから、一日も早い、包括的な取り組みが望まれます。私的には、デブリの根絶には軌道エレベーターしかないと決してネタづくりではなく大真面目に確信しているのですけれども。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

軌道エレベーターにとって小惑星が持つ意味

2013-05-06 21:28:47 | 気になる記事
惑星を袋でキャッチ NASA、移動技術開発へ
 米航空宇宙局(NASA)は10日、地球に近づく小惑星を捕まえて移動させる技術の開発に乗り出すことを明らかにした。今年2月にはロシアに隕石が落下し、1千人以上が負傷した。NASAのボールデン長官は「地球を守るのに役立つ技術になるだろう」と話している。 (略)
 どのような方法が最適かは今後検討するが、公表された動画では、無人の宇宙船から柔らかい素材の袋で小惑星全体を包み込み、動かす方法が採用されている。計画では2021年までに小惑星を月の近くまで運んできて軌道の安定する場所に置いておき、後から宇宙飛行士が試料の採取に向かう予定という。(朝日新聞デジタル 4月14日)


 小惑星を月まで移動させて有効活用するという構想だそうです。動画は面白いし実に興味深いのですが、そう簡単にはいかないだろうと思わずにはいられません。記事中に「どのような方法が最適かは今後検討するが(略)袋で小惑星全体を包み込み…」とありますが、いや問題はそこじゃないだろ。キャプチャする方法より重要なことがある。
 小惑星の持つ角運動量を変化させ、地球の公転と交差する軌道に乗せるのには、莫大なエネルギーが必要です。たとえ「小」なれども太陽の周りを回るだけの運動エネルギーを有する「惑星」なんですから! 一体それだけの運動量をどうやって与えるのでしょうか? 宇宙の話に不慣れな人は太陽系をつい平面で考えてしまいがちですが、軌道傾斜角の修正だって必要なわけで、核爆発を利用したって困難なのではないでしょうか。
 動画を最後まで見ると、月周回軌道に乗せる前に、いったん地球をぐるっと回ってから月に向かっています。これは地球公転軌道の前面に回り込んで、減速スイングバイをかけているのでしょう。プロセスとしては納得がいきますが、これで済むんですかねえ? とにかくも、計画実行時の技術水準次第といったところでしょうか。

 このアイデアや動画自体は、少なくとも現時点では単なる話題づくり以上のものではないのでしょう。私は決して否定してるわけじゃなくて、むしろ頑張って欲しいと思っています。というのも、小惑星を捕獲して地球近傍に持ってくるというこの構想、実は軌道エレベーターにとって重大な意味を持つかも知れないのです。軌道エレベーター初期の構想では、カウンター質量に小惑星を用いるというモデルがあったからです。
 軌道エレベーターのモデルのほぼすべてにおいて、末端にカウンター質量が設けられています。カウンターウェイトとかアンカー質量とか、呼び方はまちまちですが、ようは静止軌道を挟んで重さのバランスをとるためのオモリであり、下の方の質量を引っ張り上げる役割を果たしています。これを設けずに、ピラーの延長だけで軌道エレベーターを建造する場合は全長14万4000km程度ににりますが、近年のモデルではカウンター質量をやや強めに設定しているものが見受けられます。この部位の役割についてはこちらをご覧ください。

 小惑星を捕獲して地球近傍まで持ってきて、カウンター質量兼材料供給源としてとして使用する構想が昔はあったのですが、前段で述べたように、小惑星を地球周回軌道に乗せるなどというのは途方もないエネルギーが必要ですし、手ごろな小惑星が都合良く接近してくれるとも限らないので、現実的ではないせいか、この構想は近年は見受けられなくなってきました。
 しかし、もし本当にこの小惑星捕獲計画が有望なものであれば、軌道エレベーターの初期モデルの復権もありうるかも知れません。そういう意味では、この小惑星捕獲構想に期待したいところです。
 ちなみに、小惑星をカウンター質量として用いるのが一般的だったころは、「軌道エレベーター」と呼ばれることの方が多かったんですよ。その意味でも、小惑星を利用するモデルの復権には感慨深いものがありますね。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ディープインパクト

2013-02-16 19:35:38 | 気になる記事
ロシアに隕石 1000人けが
 ロシア・ウラル地方のチェリャビンスク州付近で15日午前9時20分ごろ(日本時間午後0時20分ごろ)、隕石が飛来し上空で爆発。衝撃はで家屋のガラスや屋根が壊れた。(後略。朝日新聞2月16日朝刊)
 

 更新少なくすみません。もう身体が弱り切ってまして、とても原稿を書く余裕がなくて。。。まあそれでも今回は書かねば。
 推定直径約17m、時速6万4000kmで地球大気圏に突入ですって。スペースガード協会なども発見できなかったんですね。1908年のツングース(カ)の大爆発以来の規模だとか。あれはエンケ彗星の破片が落下したという説がありますね。
 NASAはアステロイドベルトが起源だと言ってるとか? 今そこまでわかるのか? それより気になるのはこの隕石、きょう未明に地球に再接近したはずの小惑星「2012DA14」とは、何の関係もないんですかね? こちらは直径約45m、近地点高度は2万7700kmで、静止軌道の内側までニアミスしてます。事前にNASAは「衝突の恐れなし」と。もちろん別個の天体だとしても、元々同一の小惑星が分解したものだとか、起源が同じだとか。無関係の単なる偶然だったら驚きです。
 それにしても、隕石が人類文明に大きな被害を与えるというこんなディープインパクトが、生きているうちに起きるとは。Newtonの今年1月号によれば、直径10mの小惑星は数十年に1度程度、1mのものは10日に1度程度、地球に飛来しているのだそうです。現実問題として回避しようがないし、これがユカタン半島沖のチチュルブ・クレーターを形成した小惑星(恐竜絶滅の一因となったとされる)並に、キロ単位の大きさだったら私たちの社会は壊滅ですね。ほかにも太陽の変動や宇宙放射線の増大など、実は天文現象に対して、文明というのは実に脆弱な代物なのですよね。それを実感した出来事でありました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月のうさぎ形模様 巨大隕石の衝突跡

2012-11-12 09:00:11 | 気になる記事
 更新に使っているPCが、いよいよダメらしく、間が空いて申し訳ありません。そのPCはOSの再インストールからやり直す覚悟だったのですが、それも断念しました。XP機だし、ちょうどMacに色々環境を移行しているところだったので、これも巡り合わせかもしれません。
 重ねて今度引越しもするのでバタバタしていますが、たぶん来月からはもう少し安定して更新できる環境が得られると思います。なるべく早く通常運転に戻しますのでご容赦ください。といっているうちに、来月はもう年末なのですねえ。

月のうさぎ形模様 巨大隕石の衝突跡
 月の表面のうさぎ形の模様ができたきっかけは、39億年以上前に巨大な隕石が衝突して盆地ができたためであることを、産業技術総合研究所の中村良介研究グループ長らが確認した。月探査機「かぐや」のデータの分析で、隕石の衝突で生じる特殊な鉱物を検出した。(略)分布は隕石の衝突跡と見られてきた「プロセラルム盆地」に重なり、広さは月の直径(約3500km)に迫る直径約3000kmに及んでいた。(後略。毎日新聞10月29日付朝刊)

 

 うん、すごく興味深い成果だ。かぐや大活躍だなあ (´∀`)ノ
 月はもともと、45億年くらい前のジャイアントインパクトによって飛び散った、地球と衝突天体の質量の一部が固まってできたのが起源だと考えられているのですが、その後もボコボコにされて受難続きだったのですね。
 月が同じ面しか向けないのは、自転と公転の周期が一致しているためですが、もともとはバラバラだったのが、潮汐によって地球との間で角運動量を交換した結果こうなったのですね。別の説明をすると、幾何学的な中心よりも質量中心が数km偏っているために、重い側の半球が次第に地球の引力に引っ張られてピン止めされてしまったということで、この質量の偏りも、紹介記事にあるような衝突が関係しているのでしょう。 
 ちなみにこの模様、日本では杵をつくウサギとして有名ですが、海外ではカニとかライオンとか、実に様々に解釈されていたらしいです。シミュラクラ現象というか、人間は模様に何か意味を見出さずにはいられないのでしょうが、中でも西洋では女性の横顔に見えていたのだそうで、正面ではなく横顔というのが何とも言い得て妙と言いますか。地球の一番近くにありながら、まだまだ謎の多いミステリアスな天体に似合う感じがします。女性はちょっと秘密があった方が魅力的だったりしますからねえ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする