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軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

軌道エレベーターが登場するお話(3) まっすぐ天へ

2009-05-15 20:36:12 | 軌道エレベーターが登場するお話
まっすぐ天(そら)へ
的場健 (2004年 講談社)


「プロジェクトX」の近未来版に挑戦した作品とのことで、軌道エレベーター(本作では軌道エレベータ)実現に賭ける兄弟たちの挑戦の物語です。「軌道エレベータ -宇宙へ架ける橋-」の金子隆一氏が協力し、巻末に解説を執筆しています。

あらすじ 宇宙開発機関JASDAに所属し、ロケット開発に打ち込む主人公、飛騨翔一は、宇宙開発の伸び悩みに心を痛めていた。それに追い打ちをかけるように、ミッション中のスペースシャトルがデブリの衝突によって墜落し、宇宙開発関係者はデブリ対策にも頭を悩ませる。
 一方、翔一の弟で建設会社員の建二は、自社が超硬度の新素材を開発したことを知り、その用途として軌道エレベータを考え、翔一に相談をもちかける。はじめは相手にしなかった翔一だが、やがて軌道エレベータにデブリ問題の解決と宇宙開発の未来を見出し、世界に実現を訴えていく。


1.斬新な建造目的
 この作品における軌道エレベータの位置づけで極めて興味深いのは、実際に宇宙開発関係者たちを悩ませているデブリの除去が、世界が本気で建造を検討するきっかけになるということです。
 デブリは現実の深刻な問題です。ロケットや衛星を飛ばし過ぎてデブリが増え、ある閾値を超えると、デブリ同士が衝突してさらにデブリを増やす連鎖反応が生じ、やがては膨大な数のデブリが雲のように宇宙空間を覆って宇宙へ出ていくことができなくなると言われています。この現象は提唱者であるNASAの学者の名をとって「ケスラーシンドローム」と呼ばれています(本作はケスラーシンドロームについて触れていませんが)。

 本作では、主人公がこのデブリ問題を軌道エレベータで解決しようと提唱します。建二が作中で紹介する図面には、軌道エレベータの低軌道部から上の部分に「デブリ・キャッチャー」が簀巻きのように巻かれています(よく見ると全体にテーパーも設けられてます。さすが金子氏監修)。
あらゆる衛星は必ず地球の赤道の上空を通ります。デブリも広い意味で衛星ですので、同じ赤道上でも地上との相対位置が動かない軌道エレベータに、いつか必ず衝突することになるわけです。これをデブリ・キャッチャーで絡めとって宇宙のお掃除をしてしまおうという発想ですね。
 ちなみに、国際宇宙ステーション(ISS)がデブリに対しどう身を処しているかというと、10cm以上のものは避け、小さいものは耐える(!)んだそうです。軌道エレベータにとっても、デブリの衝突は対処すべき課題のひとつなのですが、これを逆手にとって実現の動機にしてしまう発想は実に斬新で、このアイデアだけで論文が一つ書けるほどの検証価値を持っているのではないでしょうか。
現在の宇宙開発の主役である、スペースシャトルをはじめとする多くのロケットが、打ち上げのたびに猛毒を大量にまき散らしているという、世間ではほとんど伝えられない点をスバリ指摘していて軌道派としては溜飲を下げますね。

 一応本作の軌道エレベータ構想を紹介すると次の通り。ロシアのエネルギア級ロケットを6回使用し、レーザー誘導式の炭素繊維合成装置と、必要な炭素材料を静止軌道上に打ち上げる。つまり完成済みのケーブルを打ち上げたり、低重力下でジョイントさせたりせず、静止軌道上に工場を設けて途切れなくケーブルを繰り出します。スリランカ南方、インド海盆上の公海にメガフロートを浮かべて、位置を微調整しながら静止軌道からここへ向けて糸を地球上に下ろし、1本、2本と増やして完成させるというものです。

2.ストーリーについて
 そして描かれる人間ドラマも熱く、軌道エレベータを理解しようとしない社会のしがらみや旧弊に苦しみながらも、理想に賭ける気概を持つ主人公の兄弟に清々しさを感じます。
「なあ兄ちゃん、これマジで造ってみねェ? 打ち上げ要らずの宇宙開発だぜ」
 酒を飲みながら、建二は翔一に軌道エレベータについて説明しますが、翔一は「…出来っこねえって」と取り合いません。
 やる前にやらない理由を作りたがる人というのはどこにでもいますが、この時の翔一も宇宙開発に限界を感じ、すっかりぐずぐず病になってます。そんな翔一を叱咤する建二。
「やりたいことが離れてくんなら自分から近づけばいいだろ
ただ待ってたって誰もお膳立てなんかしちゃくれないぜ(略)
宇宙に行きたくてJASDAに入ったんじゃねえのかよ!」
 
建二君熱いぜ!!
 そして翔一も、KFCのカーネル・サンダースみたいな学者(後で知ったのですが、作家のR.L.フォワードがモデルなんだそうです。確かにそっくり)と知り合ったことが転機となり訴えます。
「確かに困難はあるかもしれません。それでも人類の前に新しい道を切り拓いてゆくことこそが宇宙開発の使命ではないでしょうか」
 このほか、A.C.クラーク氏をモデルとしたキャラクターも登場し、軌道エレベータ普及の功労者である氏へのオマージュも感じられます。

3.続きが読みたい
 この作品は第1部で中断したままになっています。金子隆一氏にお話をうかがった際、その後の展開について抱いていた構想を聞いたのですが、独創的なアイデアが豊富で、そりゃもう面白いのなんの!
 金子氏によれば、軌道エレベータの建造が既存の宇宙開発や既得権益を侵害してしまうデメリット(既存の人工衛星との衝突など)を、一気に吹っ飛ばすほどの危急な政治的要請がない限り、話をこれ以上進められないということです。
 連載が中断しているのもそのためでしょうか。作中でも、軌道エレベータ構想に米国の圧力がかかり、翔一たちの行く手を阻もうとします。
 それは現実の世情を反映してるようにも思えます。翔一が軌道エレベータ構想を発表したためにJASDA(JAXAとNASDAのミックスでしょうか?)で更迭されるというエピソードは、まるでどこかの話を鏡に映したかのようです。国家や企業グループなど、軌道エレベータを実現できる資金力や技術力を持つアクターが本気で乗り出してくれないことは残念でなりません。

 ですが、この作品について自信を持って言えるのは、軌道エレベータをいつか実現したいと熱望する私たちの心をかき立て、熱くさせてくれる作品であるということです。
 次第に増えつつある軌道エレベータの研究者や、宇宙エレベーター協会(JSEA)に参加している会員、とりわけ技術職や若い学生たちの中には、主人公たちが持つパイオニア気質やチャレンジ精神と同じものを持って参加している人が少なくないでしょう。彼らの多くが、主人公たちと同じように周囲の無知や無理解に挑んでいます。
 そうした人たちの共感を呼び、心を鼓舞するストーリーであることは間違いありません。かくいう私も、それまで軌道エレベータの関連情報を漫然と受け身がちで集めていたのが、この作品に感化されて、なんだか忘れていたものを取り戻したような気持ちで取材に本腰を入れたクチです。単行本を買ってすぐ、金子氏に取材を申し入れました。
 思えば今JSEAで活動したり、当サイトでこんなことを書いているのも、本作を読んで以来、少しずつ身辺が変化した結果でもあります。翔一と建二にはその後良き変化があったのでしょうか? 続きがとても気になります。
連載は中断してしまいましたが、プロジェクトXばりの熱いドラマとしては成功しているのではないでしょうか。講談社さん、第2部を待望しています!

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軌道エレベーターが登場するお話(2) 機動戦士ガンダム00

2009-05-10 19:39:03 | 軌道エレベーターが登場するお話
機動戦士ガンダム00(ダブルオー)
1st & 2ndシーズン
サンライズ(2007、08年)


 軌道エレベーターが稼働する様子が描かれた初のガンダム。世界から戦争をなくそうと闘う主人公たちと、彼らによって変わっていく世界を描いた物語です。半年ずつ2シーズンに分けて放映され、来年の映画化が決定しています。
 宇宙エレベーター協会(JSEA)のホームページでレビューを書いていましたが、コーナーが終わったので、こちらで両シーズンをまとめたいと思います。一部過去と重複する部分はご了承ください。

1stシーズンのあらすじ 西暦2307年、世界は3つの国家群に集約されたが、各地で紛争やテロが絶えず、人類社会は一つにまとまれないまま不安定な情勢を抱えていた。そこへ武力による戦争の根絶を掲げる謎の私設武装組織「ソレスタルビーイング」が現れる。彼らは、現有テクノロジーを凌駕する機動兵器ガンダムを駆り、あらゆる戦争行為に武力介入していく。

1.本作に登場する軌道エレベーター
 軌道エレベーターがこの作品で持つ最も重要な役割は、宇宙空間での太陽光発電による地上への電力供給です。
 米、中ロ印、欧州が主導する3つの国家群は、それぞれ1基ずつ軌道エレベーターを建造し、太陽光発電システムを備えたオービタルリングという輪っかを軌道上に張り巡らせ、3基を連結しています。
 リングは高・低軌道の二重になっていて、低軌道リングは内部に磁性流体を循環させて張力を生み出し、構造を維持しています。ちなみに粒子加速器も兼ねているとか。

 太陽光発電やリニアトレイン、オービタルリングなど、本作に登場する軌道エレベーター(とリングシステム)は、現実に提唱された多様な研究の集大成のような仕上がりを見せ、緻密な科学考証がなされているのがうかがえます。やはり軌道エレベーターはこうでなくちゃ、と思わせる完成度です。
 宇宙から見た地球は、地上から3方向へ伸びるエレベーター(肉眼で見えるんでしょうか?)とオービタルリングから成る構造が作品世界を象徴していて、独特のデザインがとても美しいです。

2.太陽光紛争と軌道エレベーターのある社会(1stシーズン)
 人類は無尽蔵でクリーンな太陽エネルギーを利用するため軌道エレベーターの建造に乗り出し、その過程で国際社会も三極化しましたが、石油に依存する中東諸国などはこれに反発し、物語が始まる前の時代に「太陽光(発電)紛争」と呼ばれる大規模紛争があったそうです。
 舞台となる2307年になっても、大国主導による太陽光発電の恩恵に与れない国々があり、各国家群の勢力伸長競争の要因となっているほか、世界に格差や対立、政情不安を生み出しているのです。
 軌道エレベーターは人類社会のエネルギーの要であると同時に対立の原因でもあり、将来現実に予見されうる一つのファクターを描いているといえるでしょう。拮抗する国家グループが、仲良く(?)1基ずつ建造するというのも、案外ありえるかも知れません。

 私が非常に好きなシーンが、1stシーズン12話で、中東の小さな町へ潜入した主人公・刹那に、貧しそうな水売りの少年が尋ねる場面です。
 「この世界にはすっごく高い塔があって、宇宙まで行けるって本当なの?」
 軌道エレベーターがあっても、依然として混沌としている本作の世界観を良くあらわしていると感じました。現在でも、内陸の途上国などには、一生海を見ないままとか、さらにその向こうにどんな世界が広がっているのかを知らないままの人も多いでしょう。このセリフがそんな人々が享受できる「豊かさ」の差を思い起こさせます。

3.軌道エレベーターの兵器転用と損壊(2ndシーズン)
 2ndシーズンでは、オービタルリングに設置されたレーザー砲「メメントモリ」が登場、さらにこのメメントモリによってアフリカタワー「ラ・トゥール」が砲撃され、大惨事が発生します。
 砲撃は低軌道ステーションのやや下に命中、バラスト衛星や外装が自動的にパージされ、乗客を満載したリニアトレインが宙に放り出されるなどして約6万人が死亡したとのことです。

 砲撃により強度が急減したため、全体構造を支えようと、このような緊急システムが作動したのは疑いありません。しかし、JSEAホームページでも書いたのですが、リニアトレインが走行中にパージが進んだり、地上約10kmまでえんえんとパージされて外装部が市街地に落下したりと、その設定には疑問符も少々。。。
 撃ったメメントモリの方も、低軌道ステーションを狙ったのが外れて、その下に当たったように見えるのですが、軌道エレベーターとオービタルリングの結節点であるステーションを狙うなど自殺行為ではないでしょうか。ぶっち切れたらどうするつもりだったのでしょう?

 これらは、一大カタストロフを見せるための演出と割り切るしかないでしょう。これも既述のことですが、宇宙世紀のガンダムシリーズにおけるコロニー落としに相当する「見せ場」だったのでしょう。
 このエピソードは物語全体を左右するものではないですが、軌道エレベーターの存在を、破壊することでアピールしてくれて良かったと思います。

4.ストーリーについて
 何者かが計画へ介入し、主人公たちは追い詰められていく一方、ソレスタルビーイングという共通の敵のお陰で世界は結束していきます。地球連邦誕生への生け贄であるかのように、彼等は滅びの道をたどり、1stシーズンは幕を閉じました。
 自分たちの罪を自覚しながら、苦悩しつつもなお戦争根絶の意思を貫く彼らのドラマには、ひたむきさや真摯さを感じ、毎回、次週が楽しみなドラマを見せてくれました。

 続く2ndシーズンでは、趣が異なってきます。ソレスタルビーイングの崩壊から4年。地球連邦が設立した独立治安維持部隊「アロウズ」は、地球圏統合の名の下、人々への苛烈な弾圧を行い、復活したソレスタルビーイングがこれに挑みます。
 物語は、やがてアロウズの背後にいるイノベイターとの対峙へと移り、主人公たちは彼らと決着をつけて再び元の任務(?)に戻る。。。この展開は、ファンの方々はご存じでしょう。
 この「途中」で、主役機00ガンダムと支援機が発動させる「トランザムライザー」による、人と人との新たなコミュニケーションや刹那の進化、地球外知的生命体との対話というソレスタルビーイングの最終目標などが披露されるのですが、結末には特に関係なく終了しました。
 「俺はエイリアンに会いたくて闘ってきたんじゃないぞ」と怒る人がいてもよさそうなものですが。。。

5.両シーズンを振り返って
 「何だったのだろう?」見終わってポカンとした方は私だけではないでしょう。映画に持ち越しだから、と言われればそれまでですが、この結末は、トランザムライザーや異星人の話を持ちださなくても結べるラストでした。主人公たちはいつからか妙に割り切りが良くなり、口で言っていた割には罪を償うこともありませんでした(ソレスタルビーイングは存在し続けなければいけないというなら、次世代マイスターを育てて後を委ね、自分たちは出頭すればよいではないか)。
 この未消化感は一言で言うと、2ndシーズンの前と後で、世界も主人公も変化(前進)や広がりを見せていなせいだと感じています。振り出しに戻ってめでたしめでたし、というのがふさわしいドラマもありますが、「00」は振り出しで終わらせて良い作品では、決してありませんでした。
 ソレスタルビーイングの創設者イオリア・シュヘンベルグの意図が「紛争の火種を抱えたまま、宇宙へ進出する人類への警告」(1stシーズン11話)と推し量られていたように、本作には、武力介入の果てに何かがあるのではないかという期待を抱かせるものがあったからです。

 戦争根絶という目的が完遂されるなどと私は考えていないし、仮に達成されてしまったら、それはそれで物語を陳腐化してしまう気がします。ですが陳腐にならない描き方はいくらでもあるでしょう。
 「00」は宇宙進出の過渡期を描いていました。ですから、(ソレスタルビーイングの存在によって)戦争根絶を目指す先に、人類が宇宙という新しい世界へ本気で目を向けて歩き出し、新たな時代を迎える姿を描く。。。勝手な願望ですが、私が見たかったのはそんなラストでした。

 「00」は、ガンダムという一種ブランド化、あるいは神格化して硬直してしまった価値観に挑戦した意欲作でした。戦争根絶というテーマや軌道エレベーターはもちろん、GNドライヴや各国の情勢、主人公たちの生い立ちなど、設定や世界観は新鮮でよく練られていただけに、惜しまずにはいられません。

 偉そうなことばかり述べましたが、今も「00」のファンであることは変わりません。あとは映画に期待をかけるばかりです。2010年、このモヤモヤを一掃してくれるような、「すいません私が間違ってましたー!」と言わせてくれるような、主人公たちの活躍と世界の変革を見せてくれることを願っています。

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軌道エレベーターが登場するお話(1) 楽園の泉

2009-04-30 18:59:47 | 軌道エレベーターが登場するお話

楽園の泉
アーサー・C・クラーク/山高昭訳(1979年 早川書房)

 軌道エレベーター(本作では「宇宙エレベーター」のため、以下この表記に従います)を取り上げた初の本格長編SFであり、その 概念の普及に比類ない貢献をしました。宇宙エレベーターに深くかかわるようになったのはこの作品がきっかけだったという人は世界中にいる ことでしょう。宇宙エレベーター支持者ならこれを読まずして何を読む、と言える必読の書です。

 あらすじ ジブラルタル海峡横断橋を実現させた地球建設公社の技術部長モーガンは、それまでの実績を背景に、かねてからの理想だった宇宙エレベーターの建造に挑む。多くの困難に直面しながらこれを乗り越え、彼は老いた自分に残された時間を宇宙エレベーターの実現に捧げる。

 この作品でモーガンは、赤道上の架空の島、タプロバニー島(クラーク氏の自宅のあったスリランカがモデル)の山頂に宇宙エレベーターを建造しようと挑みます。
静止衛星からケーブルを繰り出して地上でキャッチし、これを頼りに物資を輸送して完成させていく技術的プロセスや建造の意義、将来はリニアエレベーターを 導入し、電流回生によって上りエレベーターの電力の大半を下りが賄うアイデア(静止軌道の外側ではこの関係は逆になる)など、宇宙エレベーターに期待され る機能や役割を、物語を楽しみながら習得でき、わかりやすい入門書としても役に立ちます。

 構想の紹介もさることながら、ドラマも秀逸で、タプロバニー島に空中庭園を築いた古代の王の物語を交錯させながら、時に叙情的に、時にリアルに物 語が進みます。エレベーターの建設予定地が宗教団体の聖地になっていて、立ち退き訴訟で敗訴し挫折するモーガンを、意外な展開が待ち受けているエピソード は感動的で、「おお!」と膝を打ちます。クラーク氏のほかの著作とリンクする描写もあるので、併せて読むと一層楽しめるかも知れません。
老いてなお衰えぬ気骨を発揮し、宇宙エレベーター建設に残された人生を賭けるモーガンの情熱には心打たれます。ご存じの通り、クラーク氏は昨年3月に亡くなられました。モーガンの姿を、晩年まで宇宙エレベーターを扱った新作小説や専門書の執筆に関わった、クラーク氏自身の生き様 に重ね合わせる読者も多いことでしょう。

 「楽園の泉」は、それまで学者だけの知識だった宇宙エレベーターを初めて一般に広め、大きな転機をもたらした歴史的作品であり、多くの読者に宇宙 エレベーターの基礎知識を植え付けた開眼の書となったはずです。構想普及の草分けとなった氏の多大な功績に敬服します。宇宙エレベーターに興味のある人だ けでなく、知ることを楽しむ心を持つすべての人にお勧めできる1冊です。

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