温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

麗しの埔里でのんびりサイクリング その2 (台湾中部)

2012年05月17日 | 台湾
※今回の記事に温泉は登場しませんのであしからず


前回記事のつづきです


●広興紙寮と愛蘭甘泉

埔里酒廠から中山路を西進し、街外れまで走ってきました。


 
水が清らかで自然も豊かな埔里は手漉き紙の産地でもあり、当地ではかつてから伝統的な手法による製紙業が盛んにおこなわれていたんだそうですが、現在は数軒が残るのみで、そのなかでもいまだに伝統手法にこだわっているのが「広興紙寮」。こちらでは手漉きの工程を間近で見学することができるらしいので、興味津々、訪問してみたのです。


 
紙の原料となる植物の数々、そして原料による紙の違いが展示されていました。この一帯ではマコモダケ・サトウキビ・バナナなど、いかにも繊維質がしっかりしていそうな作物が盛んに栽培されているため、こうした作物を紙にしているわけです。


 
繊維を煮て漂白してドロドロにしている工程。手作業でバケツへ移していますが、かなり熱そうです。


 
職人さんが紙漉きしている最中。日本和紙の紙漉きと同じような感じでしたが、漉桁の中の原料繊維を均し、桁からすあみを外してすあみから紙をはがしてゆくという職人さんの一連の工程には無駄な動きが全くなく、実にリズミカルで、見とれずにはいられませんでした。。日本だったら作業場と見学エリアの間に鎖が張られちゃいそうですが、こちらの工房では仕切りが一切無し、間近で(しかも無料で)作業の様子を見ることができるのです。


 
すあみから剥がして湿ったしわしわな紙にアイロンをかけて皺を伸ばしているところ。こちらの作業も華麗な腕捌きで、あっという間に一條の皺もない美しい紙が次々に出来上がってゆきます。素晴らしい職人技だ。



別途申し込めば手漉き体験ができるみたいです(今回はパスしました)。


 
敷地内には「埔里紙産業文化館」という資料館も併設されており…


 
館内では製紙の文化や特徴などが学べる数々の資料が展示されていました。


 
「広興紙寮」の前に可愛らしい店を発見。こちらは生チョコレートが売りらしく、試食させてもらいました。口の中でとろけちゃう生チョコはとっても美味。でもまだまだサイクリングしなきゃいけないし、持ち帰れないので、生チョコの購入は断念し、しぼりたてのオレンジジュースをいただくことにしました。



近所の路地には小規模な養蜂場があり…


 
ミツバチがせっせと蜜を運んでいました。自然環境が豊かですから、蜜集めには苦労しないでしょうね。


 
裏手には「愛蘭甘泉」と呼ばれる水汲み場を発見。紹興酒の甕の象ったタンクがあることからもわかるように、ここで湧く名水が埔里の紹興酒製造に使われてきたそうですが、この名泉を発見したのは日本統治時代(昭和期)の日本人なんだそうです。現在ではこの水を自由に汲めるようになっており、私が見学している時でも何人かがタンクやボトルに水を詰めて帰ってゆきました。



水汲み場の前には四阿があるので…


 
その四阿の下にあるベンチに腰かけて眼前に広がる田園風景を眺望。せせらぎの瀬音や小鳥の囀りが耳に優しく、日陰で周囲を木々に囲まれているため、外の厳しい日差しが嘘であるかのように涼しく爽快な微風が四阿の中を吹き抜けてゆきます。潤いのある景色と爽やかな環境に包まれ、気付けば1時間ほどここで微睡の世界へと誘われてしまいました。


●田園風景
 
埔里の北側の街外れ、中台禅寺(台湾の四大仏教の一つ中台の総本山)付近の平地には見渡す限り延々と田園風景が続いています。紙漉き場を後にした私は、あてもなくこの田園風景の中に紛れ込んでみました。途中の古びた集落には「建設社区 継続発展」という前時代的なスローガンが書かれた壁が残っていました。


 
民家の軒先に咲くブーゲンビリアが綺麗です。


 
埔里を周遊していて気付くのは、マコモダケの水田が非常に多いこと。この地の土地と豊かな水資源がマコモダケ栽培に適しているんだそうです。


 
あぜ道の両側に広がるマコモダケの水田。サイクリングしていると、常にどこからか農業用水が迸る潤いのある音が聞こえてきます。マコモダケは商品価値が高いからか栽培を希望する農家が多いそうでして、あぜ道の辻々には「土地を売ってください」の札が張られていました。



こちらはバラ栽培のビニルハウス。


 
ここも花卉栽培ですね。


 
これはパパイヤですね。実は青くてまだまだ堅そうです。


 
少数派ながらサトウキビ栽培も健在。

青々と伸びるマコモダケをはじめ、色とりどりの作物が数多栽培されているこの田園地帯では、豊かな水や緑が潤いみなぎる美しい景色を造り出しており、目に鮮やか、耳に心地よく、いくらこの景色を眺めていても全く飽きることがありません。旅に出たら時間の許す限り観光名所を巡りたくなるのが旅人の心情ですが、何も考えずに麗しい景色の中に身を紛れ込ませてみたら、ガイドブックには決して乗らないような場所であるにもかかわらず、有名な観光地よりも余程印象に残る時間が過ごせました。心の襞のひとつひとつまで綺麗に洗濯できました。



夜はバーで宿のオーナーさんと語らいのひと時。台湾ならではのバナナビールというものをいただきました。薄いビールにバニラフレーバーを混ぜただけのものですが、これも南国らしい味なのかも。

周囲を山に囲まれた埔里は、自然が豊かで風光明媚、おいしい農作物にも恵まれ、ちょっと離れれば温泉もたくさん存在しており、また各宗教宗派の信仰の中心地ともなっており、自然環境や時間の流れ方が感性豊かな人を惹きつけるのか、芸術家の方もたくさんお住まいなんだとか。日本で譬えるならば信州・長野県と非常によく似ているように思いました。

※長らく続けてきました台湾シリーズの記事も今回でひとまず終了。
次回から再び日本の温泉を取り上げてまいります。
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麗しの埔里でのんびりサイクリング その1 (台湾中部)

2012年05月17日 | 台湾
※今回の記事に温泉は登場しませんのであしからず


台湾中部の埔里滞在中は宿で自転車を借りて埔里の街や近郊を周遊してみました。ガイドブックではあまり詳しく取り上げられることのない街ですが、実際に巡ってみたら、実に魅力的で見所が満載、短期の滞在では全くまわりきれないほど観光ポイントが多い街でした。しかも街からちょっと離れたら、まるで絵画の世界に紛れこんだかのような麗しの田園風景が広がっており、風光明媚な景色の中でのんびり佇んでいたら、心の隅々まで洗われるようでした。
まずは台湾屈指の規模を誇る道教の廟「地母廟」へ行ってみます。

●地母廟

廟への参道にはいくつかの門を潜ります。これは大通りとの十字路に立っている一つ目の門。


 
二つ目の門は乾坤門。参道沿いにはマコモダケの田んぼが広がっています。


 
3つめの門が廟の核心エリアの入口に当たるもの。門前にはお供え用の造花などを売る屋台が並んでいました。平日の朝だからか、参拝客はまばらで、お店の人もやる気ゼロ。


 
門を潜った正面で頭を出しているのは九龍神。



山の斜面に建てられているためか、廟は多層的な構造になっており、すべてを巡ろうとするとかなりの階段を登り降りしないといけません。


 
さほど段を登らずとも参拝できるお宮。広場ではお兄さんが太極拳の真っ最中。



境内からは絶えず一定リズムで太鼓や鐘の音が響いてくるのですが、その太鼓をよく見てみると、なんと機械仕掛けで鳴らされていました。


 
神農殿。中華圏らしい鮮やかな色使いが印象的。


 
テラスからは埔里の街並みを俯瞰することもできました。展望もさることながら、廟の緑色した瓦屋根が独特な景観をつくりだしています。


●18度C巧克力工房(18℃チョコレート工房)
 
続いて台湾女子のハートを鷲掴みにしている18℃チョコレート工房(ホームページ)(台湾ナビ内記事)へ。おっさんのくせに甘いものに目が無い私は、ここを訪れることが楽しみで仕方ありませんでした。人気を集めている繁盛店らしく、この時も観光バスで来店する団体客や、何台かの車に分乗してやってきた大学生らしきグループが駐車場で思い思いにお店のスイーツを頬張っていました。こちらの主力商品は生チョコレートですが、ちょうど太陽が頭上で燦々と輝き始め、肌に汗が滲み始めてきた頃だったので、私はジェラートをいただくことに。


 
日本の店舗デザインや接客スタイルを取り入れているというこちらのお店は、スタッフの方も常に笑顔です。若いスタッフばかりなので片言の英語も大丈夫。ジェラートは甘さ控えめで素材の味を存分に引き出しており、とっても美味くて大満足です。


●台湾地理中心
 
埔里は台湾島の地理的な中心なんだそうです。紙に台湾島の輪郭を印刷し、それをはさみで切って重心を求めたら、そのポイントがちょうど埔里にあたるのでしょう。そんなわけで当地には地理中心を記念した公園があるので行ってみました。



これが台湾地理中心の碑。



園内には壺から水が注がれるモニュメントがありました。説明を発見できなかったので意味はわかりかねますが、埔里は名水の産地でもあるので、けだしその関係ではないかと思います。


 
更に奥に立っているのが「山清水秀」碑。地理中心に関して説明している碑文がはめ込まれています。



実際に地理中心があるのは公園内ではなくて、そこから山道を延々登った先にある虎子山の東経120度58分22秒・北緯23度58分32秒地点。山を自転車で登っても良いのですが、脆弱な私は公園で満足することに。でも実はこの日の朝、ゲストハウスプリのオーナーさんのバイクにニケツして山の上に広がるハンググライダー場へ連れて行ってもらっていました。ここからは盆地状になっている埔里の街を一望することができ、市街の観光名所の場所を把握することができるのです。この景色を地図を見比べ、ここが●●で、あそこが△△、という感じでオーナーさんから説明を受けてから、この日サイクリングを実行しました。御蔭で道に迷うことはありませんでした。


●ビーフンでランチ

埔里はビーフンの名産地でもあります。私はビーフンに目が無いので、この日のランチはビーフンの専門店へ。場所は次に紹介する「埔里酒廠」の傍です。


 
店内には袋詰めの埔里米粉が陳列されていました。ここではワンタン入りスープビーフン、そして韮とモヤシのボイルを注文。日本の外食に慣れていると、埔里のお店の味は若干薄く感じてしまうかもしれませんが(逆に、台湾人は日本の味付けを塩辛いと表現することが多いようです)、素材の持ち味がとてもよく引き出されているため、じっくりゆっくり味わうと旨みがしっかり伝わってきて、飽きが来ない後味の良い美味さが楽しめました。思わず舌舐めずりしたくなるほど美味しかった!


●埔里酒廠

水が清らかな埔里は紹興酒の名産地でもあります。ビーフンを食べた後、店の斜め前にある酒造工場「埔里酒廠」に行ってみました。


 
エスカレータで2階へ。無料で入場できます。館内に入った途端、紹興酒の匂いが鼻を突いてきました。館内は資料展示が中心でして、当地における醸造の歴史や製造過程を学ぶことができます。


 
日本の統治下で本格的な醸造工場として発展したため、展示物には日本時代の資料や固有名詞がたくさん登場していました。


 
紹興酒の甕を展示。同じように見える甕にもいろんな個性や識別があるんですね。


 
甕を積み上げて造られたトンネルは圧巻です。



酔酒体験室。床が斜めになっているなど、ブース内に入ると泥酔して平衡感覚が失った状態を体験できるみたいですが、実際に入ってみても大して…(以下省略)。やっぱり泥酔状態ならば、頭痛や嘔吐が伴わないとね…。


次回に続く・・・
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