温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

北投温泉 水舎銀光 (台湾北部・北投)

2012年05月14日 | 台湾

台北の北投温泉でゆっくりくつろぎたかった某日、捷運の新北投駅から温泉街の公園を歩いて通り抜け、台北善光寺の参道に当たる銀光巷へと向かいました。銀光巷の入口には温泉街各宿泊施設の道標と並んで、古めかしい石碑が立っているのですが…


 
碑文の表面には「消除三垢冥 廣濟衆厄難」と彫られています。これは無量寿経というお経のなかの「四誓偈」という一節にあるもので、三垢(貪欲・瞋恚(しんい、憎悪感情のこと)・愚痴)の闇を消し去って広く遍く厄難を救済する、という意味になるでしょうか。裏面には「昭和十年十月仏縁日完成 誓圓山法王院台湾善光寺」とありますから、信州長野の善光寺さんによって台北に善光寺が建立された3年後にこの碑が立てられたことになります。なお「昭和十年」あたりの文字は光復後にコンクリで埋められていましたが、年月とともに風化して文字が再び現れるようになったみたいです。


 
銀光巷のダラダラ坂を上ってゆくと、やがて左手に「亜太温泉生活館」が目に入ってきます。こちらは料金こそちょっと高めながら、ゆっくり寛いで温泉入浴が楽しめると日本人にも評判だったので、この日はここを目的地にしていたのですが、入口ゲートは閉鎖され、建物は廃墟のような無残な姿を晒していました。台湾では開業したと思ったら数年で廃業しちゃう施設が結構ありますから、この状況を目にしても別段驚くこともありませんが、後程ネットで調べたところ、この「亜太温泉生活館」は2012年末まで休業中であり、それ以降にリニューアルオープンするんだそうです。スケジュール立案がルーズな台湾のことですし、実際の現地の様子を見ても前向きな工事が行われているような感じが伝わってきませんでしたから、2013年に再開してくれるかは微妙でしょうね。



「亜太温泉生活館」の向かいにはかなり新しい「水舎銀光」という施設を発見。日帰り入浴は果たして可能なのか? 可能だとしても料金はいくらか? 何もわからないまま飛び込んでみることに。


 
アプローチの途中にある踊り場には綺麗な蘭が飾られていました。


 
南国リゾートとシノワズリをミックスさせたような小洒落た雰囲気。温泉施設というより山の中の個人所有別荘へお邪魔したかのようです。画像を見ただけでは、あたかも民家のようであり、温泉宿泊施設には見えませんよね。



1階の受付には誰もいなかったので、2階へ上がってみることに。


 
ラグジュアリ感が漂う館内。奥の方のバーカウンターに男性スタッフがいたので「入浴は可能?」と訊いたところ、彼は引出しの中から日本語メニューを取り出して、「大衆湯」と書かれたところを指さします。そこには$500というかなりエクスペンシヴな金額が記されており、一瞬たじろいでしまいましたが、お風呂への好奇心には勝てず、気付けば自分の手が勝手に100元紙幣5枚をカウンターの上に置いていました。


 
支払いを済ませると、いつの間にどこからやってきたのか、別の男性スタッフがカギを手にしながらお風呂の方へと案内してくれました。鬱蒼とした木々に囲まれた緑豊かな環境です。大規模な建物があるのではなく、小さな棟がいくつも分散して、それぞれが緑の中に身を潜めているかのような佇まいでした。



なお個室風呂もありますが、一人で利用するには料金が高すぎるので今回はパス(大衆湯の3倍以上するんですもの…)


 
スタッフは斜面を登って何も書かれていない木の扉の前に立ち、その扉を開錠して私を中へ案内します。扉の向こうにはパウダールーム、そしてその奥に白いお湯が張られた露天風呂が目に入ってきました。なるほど、ここが露天風呂か。でも誰かに案内されないと存在に気付かない上、未使用時は施錠されているんですね。木々に隠れるような建物といい、このお風呂のつくりといい、隠れ家的な雰囲気を大切にするのがこちらの施設のコンセプトのようです。



案内してくれたスタッフはロッカーキーを私に手渡し、扉を閉めてその場を去ってゆきました。ロッカー内にはタオルとミネラルウォーターが入っています。こちらの露天風呂は裸で入浴するいわゆる日式なので、心置きなくスッポンポンになりました。


 
パウダールーム内の様子。アメニティが一通り揃っています。室内は木目や石材など自然素材の質感を活かし、また間接照明を多用することによって、シックで落ち着いた大人の空間が作り出されていました。なおロッカーも鏡台も、用意されている数は少なく、全体的なスペースも少々狭いのですが、おそらく少人数での利用を前提にしているのではないかと思われます。寛ぎを重視するなら、少人数の方がいいですもんね。


 
浴槽はひとつ。水風呂やサウナ、そして台湾の温泉ではおなじみの打たせ湯など、諸々のお楽しみ設備はありません。ただこの湯船に浸かって温泉と向き合うのみです。
露天風呂ですが全体を半透明のテントで覆われています。日本でしたらこのテントを取っ払いたいところですが、頭上には木々の梢がせり出しており、また南国の太陽もカンカンに照りつけているため、落ち葉や日光を遮る意味で非常に大切なのであります。



洗い場にはシャワー付き混合栓が3基。


 

平らな岩を摘んだ湯口から白濁した源泉が落とされるお風呂。北投温泉には大きく分けて青磺泉、白磺泉、鐵磺泉の3種類の源泉が存在していますが、こちらに引かれているお湯は白磺泉です。わずかに緑色を帯びているようにも見える灰白色の強濁湯は透明度約20cm、湯面からはっきりとした硫黄臭が漂い、弱い酸味(収斂)と砂消しゴムのような硫黄的知覚が感じられ、泥湯を思わせるような粉っぽい(あるいは泥っぽい)浴感も相俟って、お湯の持つ硫黄らしさがより濃く体に伝わってきます。温度計には41.8℃と表示されていましたが、実際にはそれより0.5~1℃ほど低かったように思います。お湯は浴槽からオーバーフローすることなく、槽内側面の穴から排湯されており、湯使いの程はよくわかりませんが、お湯の濃さや近くの強さから推測するに、放流式かそれに近い状態ではないかと思われます。



お湯に飽きたらデッキチェアーに寝転び、バスタオルを肌掛け代わりにして、小鳥の囀りを耳にしながらひと眠り。木々を抜けて葉を揺らす微風がやさしく体の上を吹き抜けてゆきます。台湾の温泉施設にありがちなスピーカーから音楽が流されることもなく、温泉街からかなり外れた立地ゆえ、非常に静かで環境の中でゆっくりのんびり寛ぐことができました。とりわけこの日は私以外にお客さんが来なかったので、利用中は露天風呂を一人で独占、とっても優雅な時間が過ごせました。お風呂はバラエティさに欠け、しかも料金設定も高いのですが、裸で露天に入れ、お湯の質はまずまずですし、綺麗でおしゃれで緑が溢れる隠れ家的なつくりがとっても良い雰囲気ですから、ラグジュアリ感を楽しみたい方や女性の方にはおすすめです。


捷運(MRT)新北投駅より徒歩20分(1.5km)
台北市北投区温泉路銀光巷22号  地図
(02)28928288
ホームページ

入浴受付時間不明
大衆湯(露天風呂・裸で入浴)500元
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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