温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

蘇羅婆温泉 蘇羅婆温泉渡假村 (台湾南部)

2012年05月02日 | 台湾
宝来温泉から荖濃渓の左岸を下流に向かって2kmほど南下すると蘇羅婆温泉(実際には蘇羅婆の各字に口偏が付きます)という温泉地にたどり着きます。大抵の場合は宝来温泉の一部として同温泉に内包されることが多いようですが、明らかに宝来とは離れており別箇の温泉街を形成しているので、ここでは宝来とは区別して取り扱います。


 
宿泊先の「芳晨温泉渡暇村」から宝来の温泉街を抜け、荖濃渓の左岸を下って不老温泉方面へと延びる新宝路を歩きます。この道は88水害によって深刻なダメージを受け、路面が崩落するのみならず、流域に架かる橋も次々に破壊されましたが、その後急ピッチで復旧工事が進められ、破壊された橋も新たに架け替えられました。宝来温泉の出入口にあたるこの「宝来渓橋」は民国100年10月、つまり2011年10月に竣工したばかりの新しい橋です。



橋の先に続く新宝路。何もない平穏な道のように見えますが…


 
沿道には水害の生々しい爪痕がはっきりと残っていました。こちらは道路沿いにあった「新宝来温泉渡假村」跡。土砂が建物をすっかり呑み込んでおり、無残な姿を晒す廃墟と化していました。


 
新宝路は途中から通行止となっているのですが、その代わりに河原へ下って礫の上に設けられた仮設道を通行することが可能です。時々走ってくる工事用の大型車両が砂埃を巻き上げながら走り去り、その度に道を歩く私は全身埃まみれ。3月だというのに灼熱の太陽が容赦なく照りつけているのに、河原の仮設道には日を遮るものが一切無し。砂埃と日光のダブル攻撃によって私は既にヘロヘロ。


 
山の方を見上げると、崩壊して一部が残った新宝路の路肩を発見。右(下)画像の左下に写っているオレンジ色の点は、道路工事中の作業員です。元の道がどれだけの高さに位置していたか、そしていかに被害が甚大であったかが一目瞭然です。


 
(右(下)画像はクリックで拡大)
河原から一気に河岸の上へ急坂で登りきり、道なりに進んでゆくと十字路に突き当たりました。仮設道路により河原へ迂回したので、本来のルートよりも大幅に遠回りしてしまったらしく、宝来からここまで40分近くも歩いてしまいました。十字路の角には保安宮という廟があるのですが、雰囲気から察するにどうやらここが蘇羅婆温泉の中心地のようです。廟の傍には蘇羅婆温泉の地誌を説明している最近建てられたと思しきプレートが立っており、ありがたいことに日本語による説明も書かれていました。要約するとこんな感じ↓…
蘇羅婆(ソロボ)はかつてイバラが茂る荒れ地だったが、やがて原住民が住み着いて開墾されてゆき、その原住民たちが(宝来よりさらに上流に位置する)桃源郷へ移住した後も地名だけが残った。ここは新しく開発された温泉地で、泉質は炭酸水素ナトリウム泉。源泉の採水口は除對Z渓の川中にあり、硫化水素を含んでいるため硫黄臭を有する。河岸の高台が除對Z渓に突き出て川の流れが大きく蛇行しており、その様子は二匹の竜が珠を抱えているかのように見える。
硫黄臭がするのか! 温泉ファンにとって関心を寄せずにはいられません。でも源泉は川の中にあるの? 川は88水害で大暴れしているから、源泉も使えなくなったのではないの? あるいは水害後に新たに源泉を掘り当てたの? もしかして水を沸かして仮営業しているの? 頭の中でいくつもの「?」が一気に発生してしまいました。ま、とりあえず、どこかの施設に行ってみるしかないか…。


 
保安宮のまわりに温泉民宿が点在していましたが、道路が完全復旧していないからか、どの施設も営業しているのか否かわからないほど鄙びており、辺りはひっそりと静まり返っていました。宝来と違って土産物屋も飲食店もない、単なる田舎の鄙びた集落です。人影も見あたらず、野良犬が暇そうにうろついているだけ。


 
何軒か見当をつけた後、最終的には岩に彫られた「天然硫黄泉」という文字に惹かれて「蘇羅婆温泉渡假村」へ入ることにしました。界隈の温泉施設の中では最も川に近い高台に位置しています。



高台には駐車場が広がり、宿泊用の木造ロッジも建てられていました。


 
食堂が併設されている受付棟には、わざわざ建物内に入らなくともいいように、駐車場側に受付専用の小窓が口を開けていました。入浴をお願いしようと窓口へ寄ると、係のおばちゃんは電話を握ってお喋りに夢中。なかなか終わりそうにないので、お釣りが無いように露天SPAの料金をカウンターに置いて、そのまま奥へと進ませてもらうことに。
食堂棟の並びにシャワールーム(兼更衣室)があり、内部はなかなか清潔感がありました。SPAは水着と水泳帽の着用が必要です。
なお撮影していませんが食堂棟の前には貸切個室風呂の小さな木造小屋がたくさん並んでいます。


 
構内はよく手入れされたガーデンの中にプールが点在しており、リゾート施設にいるような心地よい雰囲気です。訪問時は庭師のおじちゃんが客に笑顔で挨拶しながら、花や木の手入れに勤しんでいました。各プールやデッキチェアゾーンには四阿がかかっており、日差しを気にせず楽しめます。一番左の浴槽から時計回りに紹介していきましょう。


 
ジェットバスやジャクジーが設けられた槽「多功能按摩池」。カエルの湯口からお湯が注がれています。湯温は35℃くらい。



「多功能按摩池」の隣の槽には打たせ湯やシャワーのような設備がありますが、お湯は空っぽでカラカラに乾ききっていました。



こちらは温浴槽「湧泉池」。35℃と38℃の2槽に分かれており、なぜか35℃槽から38℃槽の方からお湯が流れていました(普通は熱い方からぬるい方へ流れるのが通例ですが…)。38℃槽のぬるま湯加減が非常に心地よく、入浴していたら微睡んでしまいました。



その右隣の槽にもぬるま湯が張られていましたが、お湯が淀んで鮮度に欠けていたので、ここは利用せず。



一番右の槽は冷水プール「游泳池」。ガンガン泳ぐ人向け。



冷水プールの傍にある小屋はスチームバス。


温浴槽には温泉水が用いられており、施設側の説明によれば炭酸泉と硫黄泉が混合されているんだそうです。ざっくりと表現すれば無色透明無味無臭ですが、ごく薄く白い靄がかかっているようにも見え、特に「多功能按摩池」ではそれが顕著でした。また匂いや味に関しては、石膏らしさこそ感じられたものの、この温泉の謳い文句である硫黄らしさは微塵も感じられず、この点ではかなり期待外れでした。やはり水害以降源泉が変わってしまったのでしょうか。あるいは元々そのようなお湯なのでしょうか。またどの浴槽も共通してお湯からはあまり鮮度が感じられませんでした。おそらくお湯は循環させているのでしょう。


 
お世辞抜きで素晴らしいのはプールサイドの展望台から眺める荖濃渓。視界を遮るものが何一つない大パノラマ。
温泉で寛いだ後に、水着のままデッキチェアーで横になりつつ、この素晴らしい絶景に酔いしれるひと時といったら、筆舌に尽くしがたいものがあります。おそらく蘇羅婆温泉の中では最も優れたロケーションではないでしょうか。
温泉の質はいまひとつとしても、美しいガーデンと眺望に関しては文句は無く、なんだかんだで私もこちらでゆっくり寛いでしまいました。


高雄市六亀区宝来里新宝11-13号  地図
(07)6881405
ホームページ

土日祝10:00~22:00(平日は大衆池休業、個室風呂は営業)
250元
ロッカー(有料10元)・脱水機(有料10元)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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