成層圏の異変、天気にも影響？

　 日本列島は一気に春めいた陽気となり、今週は日中の最高気温が２０度を超える所も多くありそうだ。
　　しばらくの間、高温傾向は続く公算が大きい。　ただ、成層圏で発生した「突然昇温」という現象が
　　これからの天候に影響を及ぼす可能性がある。　冬だとアジア東部から日本や北米に強い寒波が南下
　　するきっかけとなる場合がある。　今のところ寒くなる傾向はないが、事態の急変がないか世界の専
　　門家が注視しているという。
　　　　　　　　
　　　［突然昇温とは‥北半球高緯度の上空の成層圏で、気温が急上昇する現象のこと。　地表近くの対流圏を吹く
　　　　　偏西風が大きく蛇行し、大気の流れが停滞する「ブロッキング」現象が起きた時などに、蛇行の波が上空に
　　　　　伝わって発生する。　成層圏の風の流れを逆転させ、冷たい空気を伴う極渦を壊す。　その影響は数週間で
　　　　　対流圏に戻り、極端な気象をもたらすことが多い。］

　　地球を覆う大気は高度によって異なる特徴を持ち、地表から高度１０数㌔㍍までを対流圏、その上の
　　　高度約５０㌔㍍までを成層圏と呼ぶ。　対流圏では地形の影響を受けて大気の流れが複雑で、気圧
　　　の谷や尾根に対応して高気圧や低気圧が発生し、雲ができて雨や雪が降る。　成層圏では冬は北極
　　　付近に巨大な「極渦」ができ、その周囲を取り囲むように西から東へ強風が吹くなど、一見単純な
　　　流れになっている。
　　大気はつながっているので、対流圏で大きな変化が発生するとしばらくして成層圏に伝わり、極渦の
　　　位置や状態を変える。　その影響は再び対流圏に伝わることが多い。　成層圏の異変のなかでも代
　　　表的なのが、北半球高緯度の上空で気温が数日間に５０～６０度も急上昇することがある成層圏突
　　　然昇温だ。　東京大学の"中村教授"によると、１月下旬に小規模な昇温が起きたもののいったん収
　　　まり、２月に入ってから再び昇温が発生した。　２度目の昇温は大きく、気象庁などのまとめでは
　　　北極上空約２０㌔㍍の気温は２月上旬に氷点下７５度程度だったのが、中・下旬には同約３０度に
　　　上昇した。　「大規模な突然昇温と言え、日本などの天候に影響してもおかしくない」（同教授）。
　　冬に突然昇温が起きると、北極付近上空の極渦が壊れ、高緯度地方や中緯度地方に一部が南下するこ
　　　とがある。　これに対応して対流圏で偏西風の蛇行が大きくなり、南側に蛇行した領域が強い寒波
　　　に襲われる。　地形的な影響もあり、寒気の南下場所は北米や日本付近になる場合が多い。　米気
　　　象情報会社のなかには、今回の突然昇温の影響も考慮し、米中西部から東部の一部にかけて寒い時
　　　期があると予想しているところもあるそうだ。　ただ、実際にどこが寒くなるかの予想は難しい。
　　　蛇行の位置やパターンが少し変わるだけで、寒気ではなく南から強い暖気が流れ込みやすくなるこ
　　　ともあり得る。　現状では、日本を含むアジア東部で寒気が大きく南下する傾向にはないそうだが
　　　ロシアの一部などでは気温が下がっている。
　　日本付近は暖気が北上する領域に入っており、このまま暖気が強まる可能性もあるという。　国内外
　　　の気象機関や気象会社の週～月単位の予想を見ると、来週以降は異常な暖かさは収まりそうだ。
　　　そこからさらに気温が下がるかどうかは、もう少し状況を見極める必要があるようですな。