大ヒット書籍の影響で「人が他人に好意を抱く理由は9割が見た目」との認識が広まった。
米国の心理学者による通称「マレービアンの法則」が根拠とされるが、さて真実は‥‥。
「人は見た目が9割」という説が広まったきっかけは、宝塚大学東京メディア芸術学部の“竹内教授”が
2005年に刊行した同名書籍だという。 100万部超が発行され、類書も相次いだ。 世の中は
「人は見た目ではない」という教育が主流なだけに、外見至上主義を助長するなどの議論を巻き起こ
した。
「9割」の根拠になったの
は、心理学者の“アルバート
・マレービアン”が1960
~70年代の研究を基にまと
めた「好意の総計」だ。
基本は人が他人に好意を抱
く理由のうち、55%を「
顔の表情」が占めるという
もの。「言葉そのもの」は
7%、声の調子や大きさな
ど「周辺言語」が38%と
いう。どう計算すれば9割
なのか、そもそもどんな実験だったのだろうか。
マレービアンの著書「非言語コミュニケーション」(86年)の訳者の一人で、日本大学大学院非常勤講
師の“西田さん”は「見た目の重要性ではなく、バーバル(言語)以外のノンバーバル(非言語)コミュ
ニケーションの重要性を証明するのが目的だった」。 実験の手順は著書に書かれておらず、詳細
は論文を精査しないと分からないという。 西田講師やマレービアンの研究に詳しいハリウッド大
学院大学の“佐藤教授”ら専門家の話を基にまとめると、おおむね以下のようになる。
実験では、人が発信する情報を➀顔の表情➁言葉の内容そのもの
➂声音などの周辺言語‥‥に分け、それぞれ判断材料となる「素
材」を複数用意。その素材をさまざまな組み合わせで示し、➀~
➂のうちどれを根拠に好意を覚えたかを尋ねた。主な素材は以下
の通り。➀は「幸福」「嫌悪」「快」「不快」などを示すさまざ
まな「表情」(写真など)。➁は「Thank you」など好意的、「May
be(多分)」など中間的、「Terrible(恐ろしい)」など反感的な「
言葉」。➂は➁の言葉の音量を上げ下げするなど変化を付けた
「音声」(録音など)だ。
例えば幸せそうな表情なのに、言葉がネガティブな「恐ろしい」など、言語と非言語が矛盾してい
る組み合わせ。 これを回答者に提示すると、どちらを判断基準にしたかがわかるという。
西田講師によると、結果を基にいえるのは「純粋な見かけは『表情』の55%、約6割」という
ことだ。 実は竹内教授の著書「人は見た目が9割」には「『言葉以外の情報』すべてをひっく
るめて『見た目』と捉えてみた」というただし書きがある。 言葉(7%)以外の93%を「見
た目」としたのだ。 竹内教授は「あえて非言語の重要性が伝わるキャッチ-な表現を考えた」
と明かしている。
第2弾の著書「やっぱり見た目が9割」(13年)以降は「狭義の見た目=外見」「広義の見た目=
非言語コミュニケーション」という定義を明確にした。 「条件などを丁寧に説明できず、表面
的な理解が広まった」(竹内教授)との反省もあったからだそうだ。
マレービアンの法則は日本でも通用するのだろうか。 佐藤教授の実験をみてみよう。
94年、学生と社会人の当初計200人を対象に独自の「AS日本人の好意総計」を調べた(A
Sはアヤコサトウの略)。 結果は表情が60%、言葉そのものは8%。周辺言語が32% という。
米国とよく似た結果だった。 純粋な「見た目」である表情は米国よりも5㌽高かったが、こ
れは「日本人は言葉にしない思いやりや礼儀の伝統が生きているため」と佐藤教授。
好意の総計は首から上の調査だ。 「見た目」といわれたときに想起する「身体全体の好意の統
計はない」(同)。 近いところでは、米国の人類学者“レイ・バードウィステル”が70年代に
「(人が発する情報のうち)およそ3割が言語、7割が非言語であろう、との推計をまとめている。
「9割」とは言わないまでも、顔の表情が人の第一印象を左右し、しかもごく短時間で決まる
のは確からしい。
米国の心理学者“ティモシー・ウィルソン”によると、人間は五感から1秒間に1100万要素も
の情報を取り入れるが、うち1000万以上は視覚からという。 佐藤教授が学生ら3000
人超を対象にした調査では、人はわずか1~2秒間で初対面の人の第一印象を決めている。
しかも、この第一印象はその後もなかなか変わらないそうだ。
印象の決め手‥どうやら言葉より表情のようだ。 ブサイクな俺なんぞ ダメだな。トホホ
米国の心理学者による通称「マレービアンの法則」が根拠とされるが、さて真実は‥‥。
「人は見た目が9割」という説が広まったきっかけは、宝塚大学東京メディア芸術学部の“竹内教授”が
2005年に刊行した同名書籍だという。 100万部超が発行され、類書も相次いだ。 世の中は
「人は見た目ではない」という教育が主流なだけに、外見至上主義を助長するなどの議論を巻き起こ
した。
「9割」の根拠になったの
は、心理学者の“アルバート
・マレービアン”が1960
~70年代の研究を基にまと
めた「好意の総計」だ。
基本は人が他人に好意を抱
く理由のうち、55%を「
顔の表情」が占めるという
もの。「言葉そのもの」は
7%、声の調子や大きさな
ど「周辺言語」が38%と
いう。どう計算すれば9割
なのか、そもそもどんな実験だったのだろうか。
マレービアンの著書「非言語コミュニケーション」(86年)の訳者の一人で、日本大学大学院非常勤講
師の“西田さん”は「見た目の重要性ではなく、バーバル(言語)以外のノンバーバル(非言語)コミュ
ニケーションの重要性を証明するのが目的だった」。 実験の手順は著書に書かれておらず、詳細
は論文を精査しないと分からないという。 西田講師やマレービアンの研究に詳しいハリウッド大
学院大学の“佐藤教授”ら専門家の話を基にまとめると、おおむね以下のようになる。
実験では、人が発信する情報を➀顔の表情➁言葉の内容そのもの
➂声音などの周辺言語‥‥に分け、それぞれ判断材料となる「素
材」を複数用意。その素材をさまざまな組み合わせで示し、➀~
➂のうちどれを根拠に好意を覚えたかを尋ねた。主な素材は以下
の通り。➀は「幸福」「嫌悪」「快」「不快」などを示すさまざ
まな「表情」(写真など)。➁は「Thank you」など好意的、「May
be(多分)」など中間的、「Terrible(恐ろしい)」など反感的な「
言葉」。➂は➁の言葉の音量を上げ下げするなど変化を付けた
「音声」(録音など)だ。
例えば幸せそうな表情なのに、言葉がネガティブな「恐ろしい」など、言語と非言語が矛盾してい
る組み合わせ。 これを回答者に提示すると、どちらを判断基準にしたかがわかるという。
西田講師によると、結果を基にいえるのは「純粋な見かけは『表情』の55%、約6割」という
ことだ。 実は竹内教授の著書「人は見た目が9割」には「『言葉以外の情報』すべてをひっく
るめて『見た目』と捉えてみた」というただし書きがある。 言葉(7%)以外の93%を「見
た目」としたのだ。 竹内教授は「あえて非言語の重要性が伝わるキャッチ-な表現を考えた」
と明かしている。
第2弾の著書「やっぱり見た目が9割」(13年)以降は「狭義の見た目=外見」「広義の見た目=
非言語コミュニケーション」という定義を明確にした。 「条件などを丁寧に説明できず、表面
的な理解が広まった」(竹内教授)との反省もあったからだそうだ。
マレービアンの法則は日本でも通用するのだろうか。 佐藤教授の実験をみてみよう。
94年、学生と社会人の当初計200人を対象に独自の「AS日本人の好意総計」を調べた(A
Sはアヤコサトウの略)。 結果は表情が60%、言葉そのものは8%。周辺言語が32% という。
米国とよく似た結果だった。 純粋な「見た目」である表情は米国よりも5㌽高かったが、こ
れは「日本人は言葉にしない思いやりや礼儀の伝統が生きているため」と佐藤教授。
好意の総計は首から上の調査だ。 「見た目」といわれたときに想起する「身体全体の好意の統
計はない」(同)。 近いところでは、米国の人類学者“レイ・バードウィステル”が70年代に
「(人が発する情報のうち)およそ3割が言語、7割が非言語であろう、との推計をまとめている。
「9割」とは言わないまでも、顔の表情が人の第一印象を左右し、しかもごく短時間で決まる
のは確からしい。
米国の心理学者“ティモシー・ウィルソン”によると、人間は五感から1秒間に1100万要素も
の情報を取り入れるが、うち1000万以上は視覚からという。 佐藤教授が学生ら3000
人超を対象にした調査では、人はわずか1~2秒間で初対面の人の第一印象を決めている。
しかも、この第一印象はその後もなかなか変わらないそうだ。
印象の決め手‥どうやら言葉より表情のようだ。 ブサイクな俺なんぞ ダメだな。トホホ