祖父の言うことは同じ言葉(せりふ)が多かった。
その代表的なことばは、
「豆で貧乏しますように」
いつも、そのあとに、
「人間は金(かね)を持つよりも、マメなのがいちばん好い」
祖父は、そのことを実践した。
お金はほどほど、身体は豆(マメ)で、笠岡市二番目の長寿で亡くなった。
大豆は食べるにも、人生訓にも大切なようだ。
「金光町史民俗編」 金光町 平成10年発行
どこの家でも大豆は田植え後の田の畦に播いた。
こうしておくと陰になり草が生えなかった。
稲刈り時分に収穫して、乾燥保存し、味噌や醤の原料に、そして煎っておやつにもした。
「岡山たべもの歳時記」 鶴藤鹿忠 岡山文庫 平成10年発行
大豆の用途
大豆は、骨のない肉といわれ、重要な蛋白源である。
炒り豆、枝豆、黄な粉、ウチゴ(ウチゴドウフ、キドウフ)、ゴジル(呉汁)、大豆飯、豆腐、おから、油揚げ、味噌、醤油、なっとう(納豆)、豆もやし、大豆油、人工肉、ゆば、がんもどき、煮豆など用途は広い。
「野菜まるごと辞典」 成美堂出版 2012年発行
エダマメ(枝豆)
夏の味、エダマメは7~9月頃までが旬。
早生種はエダマメとして夏場に収穫し、
秋までかかる晩生種は主に大豆として出荷されます。
「聞き書 広島の食事」 神田三亀男 農山漁村文化協会 昭和62年発行
大豆は、主として味噌、醤油に使用される。
大豆加工品の豆腐や油揚げは各行事には必ず用いられ、日常でもかなり利用されている。
豆腐を自分の家でつくっているところもあるが、高根には豆腐屋が二軒あり、ほとんどの家で豆腐や油揚げは買って食べている。
焼き豆腐は、豆腐を買ってきて自分の家で焼く。
きな粉は、どこの家でも自家製で、大豆を炒って、石臼でひいてつくり、だんごなどにまぶして食べる。
また、大豆を粗くひき割りにしておいて、野菜類と一緒に煮たり、江田島には大豆を煮てうどん汁にして食べる習 慣もある。
おからは安く手に入るのでおかずによく利用しており、蒲刈島のようにごはんに混ぜてすしをつくるところもある。
「日本の風土食探訪」 市川健夫 白水社 2003年発行
大豆
大豆は豆腐・湯葉・納豆・味噌・醤油など様々な加工食品の原料になっている。
納豆は「水戸納豆」に代表されるように東日本や、また九州でよく食べられている。
かつて納豆づくりは、煮た大豆を藁苞で包んで、稲藁の中にある菌を使い、室の中で発酵させる方法 をとっていた。
納豆は関東などでは朝食によく出されるが、その独特の粘りと匂いは大変好評である。
しかし、関 西人には敬遠されている。
また日本を訪れる外国人の多くが苦手とする食品の一つが納豆である。
「最新日本の農業図鑑」 八木宏典 ナツメ社 2021年発行
大豆
製油用、豆腐、納豆、醤油
大豆は1970年代までは畑作が主流だったが、以降は水田での栽培が増えた。
現在は水田作が8割を占める。
国内自給率は6%。
輸入大豆は製油用、国産大豆は豆腐や納豆に使われる。
「食糧争奪」 柴田明夫 日本経済新聞社 2007年発行
大豆市場
1990年代後半以降、世界の大豆市場では、供給国としての米国、ブラジルと
需要国としての中国、日本、EU(欧 州連合)という単純な構図を強めてきた。
これは言い換えれば、世界の大豆需給が特定の国の需給動向に大きく左右される、脆弱な構造になっているともいえる。
こうしたなか、懸念されるのは中国を中心に急拡大する世界の大豆需要をまかなっていたブラジルの増産に、限界がみられるようになったことだ。
また、国内需要が旺盛な米国も、将来的には信頼できる大豆供給国とはいえない。
日本の大豆市場は、巨大な供給国と需要国の狭間にあって予想外の変動の波をかぶる可能性も高まっている。
米国の生産が37%、ブラジルが26%、アルゼンチンが18%となっている。
この三カ国の生産シェアは80%を超える。
南米二国を合わせると生産シェアは米国を大きく上回る。
水田の畔に植えるからアゼマメと言うこともありました。
枝豆の状態で収穫し、お好み焼き店にドッサリと持って行くと喜ばれました。