『わかっているよ!ナンカーモ(何回も)ナンカーモ(何回も)。』
間もなく4歳になろうとしている孫娘・ミユの一端(いっぱし)の口答えです。
『ミユ、お喋りばかりしていないでゴハンをたべなさい。』 食事中の過ぎたお喋りをママから注意された時のことです。
第一次反抗期真っ最中のミユの口答えはタイミングもピッタシでなかなか立派なものです。
そのくせ呂律(ろれつ)が回らず、「何回も…」がきちんと言えずに「ナンカーモ…」などとなっているから笑えます。一生懸命に反抗している当人と反抗されているママには申し訳ないことですが傍らで見ていると吹き出してしまいます。
子どもの反抗期は、同時に自立の現れで、誰もが成長して行く過程では通って行く道だそうです。
だから、口答えをされたからと言って、大人がいちいち叱ったりして押さえ込むことはあまり良いことではないようです。でもあまり甘やかせ過ぎてもいけないようで、そのさじ加減はなかなか難しいところです。
イワン・アサノヴィッチは3年前に家を建て替えてから、室内では喫煙を控えて居ます。家族が受動喫煙することを防ぐためですが、同時に室内がタバコ臭くなるのがイヤだからです。
ミユをひとりで預かっているときはタバコを吸いに庭に出ることもママなりませんでしたが、最近は『じィじタバコ吸ってくるからね。』というと理解をしてくれて後追いなどはしなくなりました。
先日、嫁の勤務時間の都合でミユを預かった日のことです。タバコが吸いたくなったので『ミユちゃん、じィじタバコ吸って来るからね。』と言って庭にでようとして玄関に行きました。ミユは『うん。』と言いながら、ひとりでパズル遊びをしています。
しかし、イワン・アサノヴィッチを見る目つきは今までのものとは明らかに違っていました。
それはイワン・アサノヴィッチの妻が『またタバコ!いつになったら依存症から抜けられるのかしらね。』と言いながら、皮肉と嫌みと軽蔑がいっぱい混じったアノ目つきなのです。
それは、考え過ぎだよ!まだ3歳のこどもだよ、イワン・アサノヴィッチ。と言うなかれ。現にミユは手はパズル片を追いながら、目つきはイワン・アサノヴィッチの妻のソレ、口から出た言葉は『また、タバコ?』の皮肉・嫌み・軽蔑のニュアンスの籠もった極めつけのひと言だったのです。
『分かっているよ!ナンカーモ、ナンカーモ』 と少し淋しげに、イワン・アサノヴィッチは独り言を言うしかありませんです。