大阪鋼巴球迷的博客(だあばんがんばあちうみいだぼーくぉ)

熱烈なるガンバ大阪サポの筆者が、世界で最も多くサッカーファン人口を持つ中国にガンバの名前を広めんと日中二ヶ国語で発信する

遅ればせながら、タイ遠征あれこれ(後編)-安全なスタジアムとは何かを考え直す

2008-05-27 07:04:02 | サッカー全般
さて、ACLのタイ遠征のことについて書くのがすっかり後回しになったけども、試合当日のことについて書こうか、と思ったけど、これは他の人が書いていることと重複してしまうことが多いわけですので、試合当日スタジアムで感じたことを今振り返ってみることにします。

タイのナショナルスタジアムの中も外も極めて牧歌的で危険な匂いもなく、相手のチョンブリサポもなかなかフレンドリーであったことは他に遠征された方たちも指摘されておられることではあるけども、世界的にはこうした雰囲気と、フットボールへの熱い情熱や熱いサポートの気持ちというのが共存しているケースというのは稀だろう。どちらかと言えば、熱くなればなるほど暴力という階段へ一歩ずつ足を踏み入れて行くことになるのがサッカーという競技に起こり得る現象だと言える。

となると、Jでも議論されている「安全なスタジアム」というものの定義を考えさせられてしまうのである。最近でこそ特定のクラブ間の対決に対してダービーだの、クラシコだのといった名前を冠して対決色を煽って盛り上げようとする傾向にあるが、そうしたクラブの営業上の思惑とは裏腹に、暴力というものを内臓してしまっているように思えてならない。それは、過去の東京ダービー然り、大阪ダービー然り、去年の横浜ダービー、九州ダービー然り、そして最近のナショナルダービー然り。欧州における同じ都市間や地域間における対立や因縁、更には欧州が抱える階級や貧富の差とかいった社会的な問題を背景にして展開される「ダービー」が持つ魔力というのを差し置いて「ごっこ」を楽しもうとしても、主催者の思惑通りいいとこ取りだけが出来る程、ダービーは甘くはない。その上でいくら安全対策を施したところで、それは危険をギリギリのところで回避する方策であって、「安全な」雰囲気を持っているとは言い難いだろう。つまり、「応援のヒートアップ」と「安全な雰囲気」というのは本来相反するものである。

結局、究極的に「安全な」スタジアムというのは我々がバンコクのあの夜に体験したスタジアムということなのであろう。ガンバサポを隔離する柵も緩衝地帯もない。試合前に現地の人たちがこちらのエリアに入って気さくに話しかけて来る。試合中でも我々のエリアの最前列から応援する様子を撮影していた地元サポもいたくらいである。試合が終わったらマフラーやユニ交換を求めて来る人たちもいた。それらが可能であったのは、彼ら自身が我々に対して友好的な態度を示していたからに他ならない。それはもはや、Jリーグのスタジアムですらもあまり体験できなくなったことである。

今後、Jリーグ-特に最高のカテゴリーのチーム同士や、地域間のライバルもしくは過去の因縁を引きずったチーム同士の対戦-において、主催者側は暴力を事前に防ぐか、発生しそうなら初期段階で押さえ込むような措置というのが必要になってくるだろう。応援やスタジアムの雰囲気というのは、タイではなく、欧州や南米をモデルに置いているのなら、悲しいけどもそうせざるを得なくなってしまうのではないか、と思う。だからこそ、今後も時々、タイでのあの試合の雰囲気-敵のサポにすら友好的に歩み寄ってくる-を振り返り、もうあの空間はACLの改編と共に味わえなくなってしまうんだろうなあ、と懐かしむことだろう。