梟の独り言

色々考える、しかし直ぐ忘れてしまう、書き留めておくには重過ぎる、徒然に思い付きを書いて置こうとはじめる

焼き豚、煮込み

2011-10-20 10:43:53 | 雑記
中学の頃、姉がバーと言う所に勤めていた事が有る、その時遊びに行って薄暗いカウンターに座って何かジュースかなんか飲んだのだが小さな扉を押してはいると左側にカウンターが有って昼間だと言うのに暗い店内に小さく明かりが燈った怪しい雰囲気の印象が結局私のバーと言う場所のルーツの様だ、
自前で飲み始めたのは二十歳を越えた頃から(当たり前か、)で焼き鳥店が行き付けの最初で此処で大勢の飲み友達が出来た、
銭湯の脇にあるその店は大柄な坊主頭が1人で切り盛りをする店で焼きトン(豚か牛のモツを串に刺して焼いた物をここらでは焼き鳥と区別してこう呼ぶ)と煮込みが売りで多少刺身は有るがまああまり褒められた物ではなかった、
兎に角安いので何時行っても繁盛していて表まで椅子を出して飲んでいた、客の多くは近くの工場の職工か運送会社の運転手だが背広ネクタイのサラリーマンも結構居た、
モツ煮込みは牛のシロが主でそれに大根と牛蒡の短冊、ジャガイモがごろりと入った味噌味で注文するとその上にネギの小口切りをどさっと乗せて出す、其処に七味を振りかけて食べるのだが実に美味かった、此れは私のレパートリーに頂いて我が家の子供や友人に大評判である、
焼き豚はカシラ、タン、しろ、レバーが定番でコブクロはざっと湯がいた物にやはりネギの小口と薄切りにした大蒜を乗せる、醤油は好みで酢も入れている客も居た、冬しか出さないレバ刺しは此処でその美味さを知った。
縄のれんと波板のガラス戸をと開けると左手はカウンター、ぎっしり詰めて12~13人位が座れる、
右手には此れもこの手の店では定番の丸椅子にパイプ足のテーブルが3席で合計12人、其れと突き当たりに小上がりが有って思い切り詰めると8人くらい座れたと思うが一部は階段の下になってかなり窮屈だった、
この人数を1人で切り盛りするので注文の品は皆が手渡しがルールで皆知り合いだから全く遠慮はない、ビールは入り口の脇にあるガラスケースから勝手に出してゆく形式で親父が出すのはサワーくらいだった、
カウンターの一番手前に大きな黒い招き猫が置いてある、開店当時から有るのだがその後ろが焼き台になっている、
火はずっと炭火だったので猫の頭から方に灰が積もって居た、おそらく最初は時間が無かったのだろうが面白いので客が「猫の掃除はするな」と言う事になり10年も経つと凄い事になっていた、髭に氷柱の如く灰が垂れ下がり顔の上半分は白髪のビートルズの様な按配だったがそれがこの店の看板になった、
あれから40年近くが経つ、前を通ると未だやって居たので寄って見たらやはり同じ坊主頭で彼が仕込みをしていた、
当時の面影は有るのだが見事にやせて皺だらけになっていた、
「親父、随分歳を喰ったな」と言ったら「お互い様さ」と言って眼を細めて笑った顔はやはり昔のままだった