福田の雑記帖

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本;「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」坪田浦貴著 KADOKAWA/アスキーメディアワークス (2013)

2017年01月29日 04時08分42秒 | 書評


 映画「ビリギャル」に続いて原作を読んでみた。
 映画と本のあらすじは特に異なるところはない。高校2年まで落ちこぼれ状態にあった主人公が塾の坪田講師と出会ったのを機会に努力し、慶應大学に現役合格したというサクセスストーリーで、本はその講師の作。

 長い題名の本である。「学年ビリの」、「1年で偏差値を40上げて」、「慶應大学に現役合格」という魅力的な語彙が並ぶ。多分、藁をもすがる状況でこの本を購入したであろう、受験を控えた生徒やその保護者は読んだ結果「自分達と違うんだ・・」と、かえって落胆したのではないだろうか。私はそう思った。例えると、どんなに努力しても駄馬はサラブレットの域に達することはできない、からである。

 このサクセスストーリーには以下のような好ましい条件、その他が揃っていた。

@ 第一は、本人には学ぶための資質があった。並々ならぬ集中力もあった。坪田講師は面接時に「この子には机に集中して向かう資質がある」、「健全なコミュニケーション能力を維持している」と坪田先生は瞬時に判断している。

@ 第二は、保護者の経済力。主人公は日曜以外塾へ毎日来られる学習コースを選べたが、百数十万円を前払の必要があった。私立高校の授業料と合わせ合計で二百万円以上の費用が必要になる。

@ 第三は、親がモンスター・ペアレント的であったこと。坪田講師は、学校のカリキュラムは一切無視し、慶雁大学合格に沿った指導に特化している。学校での生活態度、学習態度が問題になり、退学の可能性も示されたが、母親が強い姿勢で臨み、停学で済むこととなる。学校から問題ある保護者と思われることで主人公を助けている。

@ 第四は、坪田講師のおだてたりすかしたりの受験テクニック指導は見事。遂行した主人公も立派。しかし、本例のような指導は受験技術に長けているだけのアンバランスな学生を生みだすことになりかねない。

@ 第五は、主人公は慶応に合格すること自体が目的で、それで何を学びたいか・・などの提示はない。ちょっと寂しい。

@ 第六は、学校での成績で目立たないなら勉強以外にエネルギーを向けるようになるのも自然。ならばギャルになって注目されたいと考えるのは、中高校生の女子の心理としてあり得るのではないだいか。結果としてゲーム依存症、非行に走る生徒も珍しくない。主人公の揺れ動く心理も描かれる。

 70歳も過ぎてから受験期の話題満載のこのような本を読むとは思っていなかったが、自分にも苦しい受験期があって共感できることも少なくなく、懐かしい気持ちで一気に読んだ。
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