鉄道員(ぽっぽや)は新田次郎の短編小説である。117回1997年(平成9)直木賞受賞作。
浅田次郎作品のうちで、私が読んだ作品は壬生義士伝ほか数編とそれほど多くないが、最高の傑作の一つ、と思う。
最近、20余年ぶりに再読した。再読のきっかけは『Panasonic Melodious Library』FM秋田放送の2015年02月22日放送の録音の再聴であった。この番組は小川洋子の解説のもと、古い作品も年齢を重ねた私に、また新たな魅力を訴えかける。この番組を聞いてから再読した本、新たに求めた書籍も少なくない。
小川洋子の解説を聞き、再読したいと思ったが、電子書庫にみあたず再購入し、自炊して読んだ。
(集英社文庫本 表紙)
あらすじは、詳細は書けないが、北海道の某過疎の町の駅長を務めていた実直なある鉄道員(ぽっぽや)は、生後2ヶ月の娘の死、妻の最期も看取らず愚直に責務を纏うし駅のホームに立ち続けた。定年を前にして妻に似た三人の若い娘が駅舎を訪ねてきて至福の時を過ごした。この娘こそ成長したわが娘の姿であった。鉄道員は後日、ホームでラッセル車を待っている間に倒れて死亡した。
この作品がこれほど胸に染みたのは、私も歳を重ねた証拠かな?と思う。
今回再読して、後半の話題は高齢者の痴呆に伴う幻覚症状だった、と思われる。私も65年前に初代のネコと死別したが、現在共に暮らしているネコ達にその面影を見てハッとすることがある。私もボケたかな?? その面でも共感できた。
隆盛だった炭鉱業や織物工業が衰退していった頃の昭和の香りのする短編として懐かしい。一気に完読した。
私が過ごしたのは昭和の一部でしかないが、苦労しつつも古き良き時代だった、と懐古した。
死んだ妻や娘がふらっと現れる切ない展開は意外性があって面白い。
戸惑いつつ読んだが、語られる背景に悲哀や愛情が感じられ、とても良かった。
いえいえ、福田先生は今後もずっと医師としての職務を全うされることと私は信じつつも。
この私も、遠い将来に何らかの原風景を思い浮かべたいものと欲したほどです。