福田の雑記帖

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漫画と本と映画 葛飾北斎の娘、葛飾応為(お栄)関連3作品(2)

2022年04月16日 04時25分02秒 | コラム、エッセイ
 最近以下の3作品を通じて北斎の娘・葛飾応為に親しみを持った。

(1)朝井まかて著 「眩(クララ) 」  新潮文庫 2018
 朝井まかて氏(1959年- )は、日本の女性小説家。氏の作品には時代小説、それも人物を対象にした作品が多いようだ。これもそれの一冊。
 北斎の娘・葛飾応為(お栄)には以前から興味があった。本作は、幼少の頃から絵筆を好み、父北斎の薫陶を受け、北斎の娘であることの苦悩も描かれている。江戸時代の中にあって女流絵師の立場は困難の連続であったと思われるが、何分にも残された史料が少ないなかで応為の半生が小説と言う形でよくまとめられている。北斎を凌ぐ程の才能があり、女流画家というハンデを乗り越えて名画を描いた半生が生き生きと描かれ、私をわくわくさせた。文体は難しい言葉が多く難解であったが、史料がすくないなか、見事な構成である。この作品を通じて。応為がより身近になった。

(文庫本の表紙から借用 応為の技法である光の中に浮かぶ被写体を見てとれる)

(2)松坂著 「北斎のむすめ」(1) -(3)巻 コミック 2017
 4コマ漫画で応為の破天荒な人物像が描かれる。江戸時代の民衆の暮らしぶりにも興味がわく。好奇心と行動力があって、男勝りで、部屋の片づけや家事ができない、ただただ絵筆を握るのが好きな、サバサバした性格の人物として描かれる。広重、国芳、栄泉といったクセのある絵師たちに負けじと、日夜絵のことばかり考えている。読みやすいコメディである。
 私が感心したのは松坂が描く応為の表情である。美しく描かれ、絵としても魅力的。パラパラと流し見してもホッとする。

(「北斎のむすめ」一巻の表紙から借用)

(3) ドラマ『眩』(くらら) ブルーレイ
 NHKが2017年に朝井まかて氏の著作を単発のスペシャルドラマ化した。出演は宮﨑あおい、松田龍平他。ブルーレイを知人から借用。
 応為は専門家の間では並外れた独創的な天才絵師として高く評価されている女性であるが、その才能よりも父親・北斎と応為の人間関係に焦点を当てた作品であった。応為の卓越した技能や作品等にはほとんど焦点が当たらず、作品そのものはほとんど見ることが出来ない。応為の苦悩に関してはよく描かれている印象。
 応為は北斎が死去するまで、「親父殿」としてあがめ、その助手であることに満足していた人のようである。応為は父の「影」として北斎の絵を手伝う。「父北斎は光、自分はその影でいい」、そう考えて応為は絵を描き続ける。当時の女流絵師の立場はこんなものだったのだろう。
 一方、どんなに優れた絵を描いても決して満足せず、向上心の旺盛な人であった。
 60歳を過ぎた応為は、「影が万事を形づけ、光がそれを浮かび上がらせる。この世は光と影でできている」、その境地に達し、女性絵師でなければ描けない独自の世界を切り開いた。

 ただ、私は映像作品を真剣に見続けることが出来ない。この作品は70分ほどの作品であるが、まだるっこしくて耐え難かったが、私は耐えた。魅力も感じたからであろう。
( ブルーレイの写真から借用)
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