新年早々、惨劇に襲われました…
先日、柄にもなく肉じゃがを作ろうと台所に立ったのですが。快調にじゃがいもの皮を剥ぎ、次はにんじんをピーラーで…ぎゃ!?ものすごい激痛に悲鳴をあげた私の目に映ったのは、にんじんの赤ではなく親指からしたたる鮮血の赤!しまったー!!わしとしたことがー!!ていうか、痛いー!!
血はなかなか止まらず、ひょっとしたら出血多量で死ぬのでは!?輸血~!と錯乱寸前に。血が止まると、今度はジンジンと痛みがひどくなってきた。もういっそ切断してほしいと、その日はずっと半泣き状態。それにしても。親指って、思ってた以上に使う指なんですね~。車でキー回す時とお菓子の袋を開ける時、往生まいったわ~。しかも、よりによって親指がどこかにぶつかって失神ものな激痛!
ああ~ついてない…こないだの転倒といい、以前の私ならありえない油断、用心の浅さです。これも老化のあらわれの一種なのでしょうか。2016年は始まったばかり、皆様もご用心あそばして…
ちなみに、肉じゃがは上手にできました~
「白痴」
戦後すぐの札幌。汽車の中で赤間が出会った亀田は、戦地での恐ろしい体験で精神を病んでいた。赤間は金持ちの愛人、那須妙子に激しく恋をしていたが、亀田も妙子に心を奪われ…
黒澤明監督の1951年の作品。原作はドストエフスキー。ロシアから戦後の札幌に舞台をアレンジしてます。
昨年死去した伝説の女優、原節子主演の映画を初めて観ました。
原節子、美女ですが見とれてしまうような美しさではなく、嫋々としたはかなげな手弱女でもなく、かなり骨太で硬質な、ちょっとニューハーフっぽい美女?ゴツくて迫力があります。今の女優のようなフツーっぽさとか親しみやすさなど微塵もない、重々しく神々しい大女優のオーラに圧倒されます。
原節子が演じた那須妙子は、私が好きなタイプのヒロイン。何を考えているか分からない謎めいた雰囲気、暗い宿命を呪い心を凍らせ、男たちを冷たく傲然と憎悪軽蔑し、復讐のように彼らを翻弄、傷つけずにはいられない女の業の恐ろしさ、悲しさ。愛や善意を信じられずにいた妙子が、純粋無垢な亀田を知って懺悔する聖女に変貌する姿が悲痛に描かれていて、そのあまりの激情にドン引きしてしまいました。
原節子の能面のような無表情、低い声が、ヒステリックに神経症ちっくに激したり歪んだり、見ていて早く病院に入れたほうがいいのでは?と心配になってしまうほど、病的でヤバかったです。常に黒衣なのが、ミステリアスかつ禍々しく魅惑的でした。亀田に影響されて、無垢な魂、無償の愛に目覚める妙子ですが、そのために亀田を戸惑わせ苦しめ、彼の幸せのためにと信じ込んで綾子と結ばせようとするところなど、独善的で妄執的なところは不変で、聖女にはなれず女の業は生々しいまま、というのが狂おしくも悲痛でした。
亀田、赤間、妙子、綾子の不思議な四角関係、心理的葛藤の激しいぶつかり合いが、面白く興味深かったです。愛憎関係といっても、普通の健全な男女のそれではなく、かなり精神的、何だか宗教的でもある愛憎。汚れのないピュアな亀田にぶつける、3人の男女の崇敬、畏怖、憎しみは、まるで信仰に揺れる信者のよう。あそこまで激しくはないけど、誰にでも似たような思いにかられることはあるのではないでしょうか。あまりにも美しいものが目の前にあると、憧れ賞賛しつつ自分の平凡さや醜さを思い知り、暗い劣等感や憎しみも抱いてしまう。求めつつも許せない、という矛盾した心理。神さまに祭り上げられ、自分勝手に暴走する3人に振り回される亀田が、すごく哀れでした。
亀田のイノセンスは、まさに天使。思慮や思いやりのない人からすると、グズでノロマ、空気を詠まないKY男。でも彼は本当に、不幸な人なのでしょうか。私も3人のように、亀田の汚れのなさに憧れます。身も心も汚し腐臭を放ってまで上手に生きたくない。とてつもなく生きづらいけど、亀田みたいになりたいです。
この映画、かなりBL色が濃ゆいところも、私が好きな理由。亀田と赤間に、腐レーダーがビビビ!赤間の亀田に対する優しさや屈折が、男の友情を逸脱してるんですよ。汽車の中で赤間が亀田の手を引くシーンや、おまえといると安らぐとか会いたかったとか、赤間が亀田に嬉しそう、照れくさそうに言う台詞に萌え~。極めつけは、ラスト近くのピッタリ寄り添って仲良く互いに発狂しちゃうシーン。赤間役の三船敏郎が男らしく猛々しく、亀田役の森雅之が優しく可愛らしいので、BLカップルとしては完璧。森雅之は、特筆に値する不思議くん演技でした。きょとんとした虚ろな顔、ジ~っと人を見つめてる開ききった瞳孔が、紙一重なヤバさ。喋り方、声音が可愛いけど不気味でもあって、何か伝染しそうな独特さ。いつも両手を胸に当てる仕草が、可愛いけど心の不安定さ、破綻をあらわしているようでもありました。
4時間近くもある大作ですが、いったいどーなっちゃうの?!な予測不可能さ、みんな何しでかすか分からんハラハラ緊張感があって、ぜんぜん退屈しませんでしたが、しんどい内容、しんどい演技なので、かなり疲れはします。吹き荒れ積もる雪も、重苦しく閉塞感のある間関係を象徴しているようで、巧く活かされていました。あんな逃げ場のないほどの雪に閉じ込められたら、私でも発狂しそう。
日本が誇る世界的巨匠、黒澤明監督の作品は、恥ずかしながら「乱」と「天国と地獄」しか観たことがなかったのですが、この「白痴」も面白かったので、今後もどんどん観たいと思います。でも、ドストエフスキーの小説は無理だわ~。カラマーゾフの兄弟、途中で挫折したし…
先日、柄にもなく肉じゃがを作ろうと台所に立ったのですが。快調にじゃがいもの皮を剥ぎ、次はにんじんをピーラーで…ぎゃ!?ものすごい激痛に悲鳴をあげた私の目に映ったのは、にんじんの赤ではなく親指からしたたる鮮血の赤!しまったー!!わしとしたことがー!!ていうか、痛いー!!
血はなかなか止まらず、ひょっとしたら出血多量で死ぬのでは!?輸血~!と錯乱寸前に。血が止まると、今度はジンジンと痛みがひどくなってきた。もういっそ切断してほしいと、その日はずっと半泣き状態。それにしても。親指って、思ってた以上に使う指なんですね~。車でキー回す時とお菓子の袋を開ける時、往生まいったわ~。しかも、よりによって親指がどこかにぶつかって失神ものな激痛!
ああ~ついてない…こないだの転倒といい、以前の私ならありえない油断、用心の浅さです。これも老化のあらわれの一種なのでしょうか。2016年は始まったばかり、皆様もご用心あそばして…
ちなみに、肉じゃがは上手にできました~
「白痴」
戦後すぐの札幌。汽車の中で赤間が出会った亀田は、戦地での恐ろしい体験で精神を病んでいた。赤間は金持ちの愛人、那須妙子に激しく恋をしていたが、亀田も妙子に心を奪われ…
黒澤明監督の1951年の作品。原作はドストエフスキー。ロシアから戦後の札幌に舞台をアレンジしてます。
昨年死去した伝説の女優、原節子主演の映画を初めて観ました。
原節子、美女ですが見とれてしまうような美しさではなく、嫋々としたはかなげな手弱女でもなく、かなり骨太で硬質な、ちょっとニューハーフっぽい美女?ゴツくて迫力があります。今の女優のようなフツーっぽさとか親しみやすさなど微塵もない、重々しく神々しい大女優のオーラに圧倒されます。
原節子が演じた那須妙子は、私が好きなタイプのヒロイン。何を考えているか分からない謎めいた雰囲気、暗い宿命を呪い心を凍らせ、男たちを冷たく傲然と憎悪軽蔑し、復讐のように彼らを翻弄、傷つけずにはいられない女の業の恐ろしさ、悲しさ。愛や善意を信じられずにいた妙子が、純粋無垢な亀田を知って懺悔する聖女に変貌する姿が悲痛に描かれていて、そのあまりの激情にドン引きしてしまいました。
原節子の能面のような無表情、低い声が、ヒステリックに神経症ちっくに激したり歪んだり、見ていて早く病院に入れたほうがいいのでは?と心配になってしまうほど、病的でヤバかったです。常に黒衣なのが、ミステリアスかつ禍々しく魅惑的でした。亀田に影響されて、無垢な魂、無償の愛に目覚める妙子ですが、そのために亀田を戸惑わせ苦しめ、彼の幸せのためにと信じ込んで綾子と結ばせようとするところなど、独善的で妄執的なところは不変で、聖女にはなれず女の業は生々しいまま、というのが狂おしくも悲痛でした。
亀田、赤間、妙子、綾子の不思議な四角関係、心理的葛藤の激しいぶつかり合いが、面白く興味深かったです。愛憎関係といっても、普通の健全な男女のそれではなく、かなり精神的、何だか宗教的でもある愛憎。汚れのないピュアな亀田にぶつける、3人の男女の崇敬、畏怖、憎しみは、まるで信仰に揺れる信者のよう。あそこまで激しくはないけど、誰にでも似たような思いにかられることはあるのではないでしょうか。あまりにも美しいものが目の前にあると、憧れ賞賛しつつ自分の平凡さや醜さを思い知り、暗い劣等感や憎しみも抱いてしまう。求めつつも許せない、という矛盾した心理。神さまに祭り上げられ、自分勝手に暴走する3人に振り回される亀田が、すごく哀れでした。
亀田のイノセンスは、まさに天使。思慮や思いやりのない人からすると、グズでノロマ、空気を詠まないKY男。でも彼は本当に、不幸な人なのでしょうか。私も3人のように、亀田の汚れのなさに憧れます。身も心も汚し腐臭を放ってまで上手に生きたくない。とてつもなく生きづらいけど、亀田みたいになりたいです。
この映画、かなりBL色が濃ゆいところも、私が好きな理由。亀田と赤間に、腐レーダーがビビビ!赤間の亀田に対する優しさや屈折が、男の友情を逸脱してるんですよ。汽車の中で赤間が亀田の手を引くシーンや、おまえといると安らぐとか会いたかったとか、赤間が亀田に嬉しそう、照れくさそうに言う台詞に萌え~。極めつけは、ラスト近くのピッタリ寄り添って仲良く互いに発狂しちゃうシーン。赤間役の三船敏郎が男らしく猛々しく、亀田役の森雅之が優しく可愛らしいので、BLカップルとしては完璧。森雅之は、特筆に値する不思議くん演技でした。きょとんとした虚ろな顔、ジ~っと人を見つめてる開ききった瞳孔が、紙一重なヤバさ。喋り方、声音が可愛いけど不気味でもあって、何か伝染しそうな独特さ。いつも両手を胸に当てる仕草が、可愛いけど心の不安定さ、破綻をあらわしているようでもありました。
4時間近くもある大作ですが、いったいどーなっちゃうの?!な予測不可能さ、みんな何しでかすか分からんハラハラ緊張感があって、ぜんぜん退屈しませんでしたが、しんどい内容、しんどい演技なので、かなり疲れはします。吹き荒れ積もる雪も、重苦しく閉塞感のある間関係を象徴しているようで、巧く活かされていました。あんな逃げ場のないほどの雪に閉じ込められたら、私でも発狂しそう。
日本が誇る世界的巨匠、黒澤明監督の作品は、恥ずかしながら「乱」と「天国と地獄」しか観たことがなかったのですが、この「白痴」も面白かったので、今後もどんどん観たいと思います。でも、ドストエフスキーの小説は無理だわ~。カラマーゾフの兄弟、途中で挫折したし…