「ブリッジ・オブ・スパイ」
東西冷戦真っただ中の50年代。保険専門の弁護士ドノヴァンは、ソ連のスパイ容疑で逮捕された老人アベルの弁護人に選任される。ドノヴァンの奔走でアベルは死刑を免れるが、数年後にソ連でもアメリカの軍人パワーズがスパイ容疑で拘束される。アベルとパワーズの交換実現のため、CIAはドノヴァンにその交渉を依頼。ドノヴァンは東ドイツへと赴くが…
今年最初の劇場鑑賞映画♪
スティーヴン・スピルバーグ監督×トム・ハンクス主演、というお馴染みかつ鉄板のタッグです。加えて、脚本がこれまた大物のコーエン兄弟。これで駄作になるはずがありません。期待通り、すごく面白かったです!スピルバーグ監督とハンクス氏のコンビ作の中では、いちばん好きかも。ご存知の通り、トム・ハンクスは私の幼心をときめかせた洋画初恋男、かつてのマイ・アメリカン・スウィートハート男。「ビッグ」のトム・ハンクスのカッコカワイさ、名演は神がかってたよな~と、すっかり、ますます恰幅のよすぎるおぢさんと化してた今作の彼を見て、しみじみと昔日に思いを馳せてしまいました…
もちろん、現在のハンクス氏も大好きです。2度もオスカーを受賞し、数々の大ヒット作、名作に出演、今やハリウッドの大御所でありながら、偉そうにふんぞり返ってないし、二枚目役とかヒーロー役を演じるなんて勘違いも甚だしいこともしないので、私の中では好感度は高いままです。ただね~…往年のカッコカワイさを知ってる者からすると、男ってほんと変わるんだな~と、その変貌に愕然としちゃいます。特にハンクス氏の場合は、成熟とか老成という美しい形容詞を使うには、ちょっと憚りがあるんですよね~熟年とかダンディとかじゃなくて、おやぢ、おっさんって感じで。ランニングシャツ&トランクス姿で、ソファに寝ころんでビール飲んでるのが超似合いそう。この映画でも、ブヨブヨ感、デップリ感がハンパないです。でも、弁護士とか大学教授とかいった役がミスキャストにならないのは、実際にも頭が良くて頼もしく、人望があるハンクス氏の人柄の成せる技でしょうか。恰幅よすぎな体つきも、背が高く大柄なので、醜い中年太りではなく重厚な貫禄にもなってるし。徹底したオヤヂ化を嘆きつつ、見てると安心するというか親しみがわくという感覚は、新婚当時はスマートなイケメンだった夫が、数十年後には別人のようなおっさんになった、でも中身は変わっておらず、相変わらず面白くて頼もしい、みたいな幸福感に近いものが。
ドノヴァン役も、ハンクス氏の地に近い役だったのでは。ちょっと神経質で皮肉屋、ネガティヴなユーモアの持ち主で、有能で行動力があるところなどは、往年の可愛いトムの頃と不変。酷い目に遭ってボヤいたりプッツンしたりする独特の表情や声も、私が恋をしていたトムと重なり懐かしいときめきを覚えました。非現実的なスーパーヒローじゃない、フツーのおぢさんが世界を揺るがす危機に挑み、命がけで奔走する勇姿は、多くの人に勇気と感動を与えます。ドノヴァンのキャラ、トム・ハンクスの演技もですが、映画じたいも国家間の政争に翻弄される人間の悲劇を描きつつ、シリアス一辺倒ではなくクスっと笑えるコミカルな風味も効いていて(ドノヴァンとロシア・東ドイツのお偉いさんとのやりとりは、かなりコメディ調)、ヒューマニズムも重苦しく押し付けがましい説教臭いものではなく、優しさと温かさがあるところも、スピルバーグ監督の傑作「E.T」や「未知との遭遇」同様に爽やかな感動を呼びます。
ハンクス氏も好演してましたが、やはり最も目立ってたのは、アベル役のマーク・ライランスでしょう。オスカー候補も納得の名演、存在感でした。特に変わった言動をするわけではなく、終始淡々と静かなフツーのお爺さん風なのですが、醸し出してる悲哀が強烈。Mr.オクレを知的に上品にした感じが微笑ましくもあって。ドヴァノンへの信頼、友情を示す橋のシーンの彼には、ちょっとホロっとしてしまいました。アベルが贈ったドノヴァンの肖像画、カッコよく描きすぎだったのが笑えた。
豊かで自由で平和なアメリカから一転、別惑星のように殺伐と峻厳な東ドイツの風景や人々、複雑な国情なども興味深く描かかれていました。当時の東ドイツにおける不自由さ、不安定さ、危険さは、筆舌に尽くしがたいものがあります。今の日本に生まれてよかった~と、あらためて痛感。厳冬の寒々しさも、効果的でした。ベルリンの壁が築かれるシーンとか、ラストのスパイ交換の橋とか、大がかりなセットにも瞠目させられます。さすがハリウッド映画。金のかけ方が、他の国の映画とは桁違い。
アメリカ国民の、アベルへの憎悪、アベルを弁護するドノヴァンへの敵意は、確かに過激で近視眼的、無知蒙昧かもしれませんが、理解できないわけではない。地下鉄サリン事件や、山口の光市母子殺人事件を思い出してしまいました。あと、ソ連で捕虜になったパワーズへの、おめおめと捕まって!なぜ自殺しない!という厳しい非難と、東ドイツにスパイ容疑で拘束されたアメリカ人大学生を、CIAが自業自得と迷惑がってたことには、イスラム国の問題を想起ぜずにはいられませんでした。世界中が平和に豊かになるまでには、まだまだ長い橋、高い壁がありますね…
東西冷戦真っただ中の50年代。保険専門の弁護士ドノヴァンは、ソ連のスパイ容疑で逮捕された老人アベルの弁護人に選任される。ドノヴァンの奔走でアベルは死刑を免れるが、数年後にソ連でもアメリカの軍人パワーズがスパイ容疑で拘束される。アベルとパワーズの交換実現のため、CIAはドノヴァンにその交渉を依頼。ドノヴァンは東ドイツへと赴くが…
今年最初の劇場鑑賞映画♪
スティーヴン・スピルバーグ監督×トム・ハンクス主演、というお馴染みかつ鉄板のタッグです。加えて、脚本がこれまた大物のコーエン兄弟。これで駄作になるはずがありません。期待通り、すごく面白かったです!スピルバーグ監督とハンクス氏のコンビ作の中では、いちばん好きかも。ご存知の通り、トム・ハンクスは私の幼心をときめかせた洋画初恋男、かつてのマイ・アメリカン・スウィートハート男。「ビッグ」のトム・ハンクスのカッコカワイさ、名演は神がかってたよな~と、すっかり、ますます恰幅のよすぎるおぢさんと化してた今作の彼を見て、しみじみと昔日に思いを馳せてしまいました…
もちろん、現在のハンクス氏も大好きです。2度もオスカーを受賞し、数々の大ヒット作、名作に出演、今やハリウッドの大御所でありながら、偉そうにふんぞり返ってないし、二枚目役とかヒーロー役を演じるなんて勘違いも甚だしいこともしないので、私の中では好感度は高いままです。ただね~…往年のカッコカワイさを知ってる者からすると、男ってほんと変わるんだな~と、その変貌に愕然としちゃいます。特にハンクス氏の場合は、成熟とか老成という美しい形容詞を使うには、ちょっと憚りがあるんですよね~熟年とかダンディとかじゃなくて、おやぢ、おっさんって感じで。ランニングシャツ&トランクス姿で、ソファに寝ころんでビール飲んでるのが超似合いそう。この映画でも、ブヨブヨ感、デップリ感がハンパないです。でも、弁護士とか大学教授とかいった役がミスキャストにならないのは、実際にも頭が良くて頼もしく、人望があるハンクス氏の人柄の成せる技でしょうか。恰幅よすぎな体つきも、背が高く大柄なので、醜い中年太りではなく重厚な貫禄にもなってるし。徹底したオヤヂ化を嘆きつつ、見てると安心するというか親しみがわくという感覚は、新婚当時はスマートなイケメンだった夫が、数十年後には別人のようなおっさんになった、でも中身は変わっておらず、相変わらず面白くて頼もしい、みたいな幸福感に近いものが。
ドノヴァン役も、ハンクス氏の地に近い役だったのでは。ちょっと神経質で皮肉屋、ネガティヴなユーモアの持ち主で、有能で行動力があるところなどは、往年の可愛いトムの頃と不変。酷い目に遭ってボヤいたりプッツンしたりする独特の表情や声も、私が恋をしていたトムと重なり懐かしいときめきを覚えました。非現実的なスーパーヒローじゃない、フツーのおぢさんが世界を揺るがす危機に挑み、命がけで奔走する勇姿は、多くの人に勇気と感動を与えます。ドノヴァンのキャラ、トム・ハンクスの演技もですが、映画じたいも国家間の政争に翻弄される人間の悲劇を描きつつ、シリアス一辺倒ではなくクスっと笑えるコミカルな風味も効いていて(ドノヴァンとロシア・東ドイツのお偉いさんとのやりとりは、かなりコメディ調)、ヒューマニズムも重苦しく押し付けがましい説教臭いものではなく、優しさと温かさがあるところも、スピルバーグ監督の傑作「E.T」や「未知との遭遇」同様に爽やかな感動を呼びます。
ハンクス氏も好演してましたが、やはり最も目立ってたのは、アベル役のマーク・ライランスでしょう。オスカー候補も納得の名演、存在感でした。特に変わった言動をするわけではなく、終始淡々と静かなフツーのお爺さん風なのですが、醸し出してる悲哀が強烈。Mr.オクレを知的に上品にした感じが微笑ましくもあって。ドヴァノンへの信頼、友情を示す橋のシーンの彼には、ちょっとホロっとしてしまいました。アベルが贈ったドノヴァンの肖像画、カッコよく描きすぎだったのが笑えた。
豊かで自由で平和なアメリカから一転、別惑星のように殺伐と峻厳な東ドイツの風景や人々、複雑な国情なども興味深く描かかれていました。当時の東ドイツにおける不自由さ、不安定さ、危険さは、筆舌に尽くしがたいものがあります。今の日本に生まれてよかった~と、あらためて痛感。厳冬の寒々しさも、効果的でした。ベルリンの壁が築かれるシーンとか、ラストのスパイ交換の橋とか、大がかりなセットにも瞠目させられます。さすがハリウッド映画。金のかけ方が、他の国の映画とは桁違い。
アメリカ国民の、アベルへの憎悪、アベルを弁護するドノヴァンへの敵意は、確かに過激で近視眼的、無知蒙昧かもしれませんが、理解できないわけではない。地下鉄サリン事件や、山口の光市母子殺人事件を思い出してしまいました。あと、ソ連で捕虜になったパワーズへの、おめおめと捕まって!なぜ自殺しない!という厳しい非難と、東ドイツにスパイ容疑で拘束されたアメリカ人大学生を、CIAが自業自得と迷惑がってたことには、イスラム国の問題を想起ぜずにはいられませんでした。世界中が平和に豊かになるまでには、まだまだ長い橋、高い壁がありますね…