まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

BL農場

2016-01-31 | 北米映画 08~14
 「トム・アット・ザ・ファーム」
 モントリオールの広告会社で働くトムは、事故で死んだ恋人ギヨームの葬儀に出席するため、ギヨームの実家である田舎の農場を訪れる。ギヨームの兄フランシスは、トムにギヨームとの関係を母には秘すよう暴力で脅し、農場にとどまるよう強制する。憤り戸惑いながらも、トムはフランシスに魅了され…
 カナダの俊英、若き天才として話題のグザヴィエ・ドラン監督の作品を、遅ればせながら初めて観ました。感性が独特すぎて才気走った映画が苦手な私は、ドラン監督もきっとそうなんだろうと決めつけてました。それが彼の映画に躊躇していた理由です。でも、いざ観てみると、ちっとも難解でもなく才気走りすぎてもない、すごく面白いサイコサスペンスだったので驚喜でした。異常なシチュエーション、歪んだ人間関係が、静かに予想不可能な展開で描かれていて、ぐいぐい引き込まれました。ハリウッドのサイコものとはやはり味わいが異なり、カメラワークとか音楽の使い方とかに、やはり若い鋭い感性がひしめいていました。若い感性といっても、大学生の自主制作映画みたいに力任せな荒っぽさや粗がなく、優雅で洗練されてる。それは、ドラン監督が若いだけでなくゲイでもあるからでしょうか。繊細で耽美な空気感は、やはりゲイならではの感性。ドラン監督、まだ20代半ばだとか。末恐ろしい若造ですね

 主役のトムも演じてるドラン監督。聞きしに勝る美青年!というより、可愛らしいイケメン。小柄なので、何だか少年っぽい。若くて美しくて、そのうえ演出と演技の才能もあるなんて、神さまは与える人には2ブツも3ブツも与えるですね~。不公平だな~。わしにも1つぐらいくれえや~。無表情か苦悶顔がほとんどでしたが、たまに笑うと無邪気でキュート。トムのファッションも、革ジャンとかパーカとかセーターとか、ナニゲにオサレだった。ゲイだけどオネエっぽさは皆無。ナイーブで優しいけど勝気で、実はドMなトムを熱演してるドラン監督。俳優としても魅力的ですね。
 この映画、とにかくトムとフランシスのSM関係がイビツかつスリリング。弟がゲイだったことはママに黙ってろ!弟の親友のふりしろ!と言葉や拳でトムを脅し、ママを慰めるためにここにいろ!とトムを帰さないフランシス。すごいマザコンなのかなと思わせつつ、密かにママからの解放、ママの死を願っていたり、心に深い複雑な闇を抱えてるフランシスに、怯えつつも強く惹かれていくトム。これ、男女だったらよくある関係ですよね。DV男を愛してしまい、死ぬような目に遭いながらも逃げられない、逃げない女。危険な男だけど、ほんとは可哀想な人なの!私がそばにいてあげなきゃダメな男なの!的な。それが男同士なのが、この映画の面白いところです。

 支配したいされたい、大事にしたい壊されたい、な男同士の愛憎なのですが、精神的には激しく熱くもつれ合いながら、肉体的には常にストップがかかってて、もどかしい!お!ここでキスする!ここでヤルだろ!なシーンがいっぱいあるけど、一線は絶対に超えないんですよ。男同士の性愛シーンはないけど、そこに至りそうなギリギリ描写のじれったさ、同性愛の甘美で濃厚な匂いが、腐女子にはたまりません。ベッドで眠ってるトムに暗闇の中、フランシスが突然襲いかかってくる二人の初対面シーンや、葬儀の後トムがいるトイレの個室にフランシスが押し入ってくるシーンや、とうもろこし畑で逃げるトムをフランシスが押し倒してボコってツバを飲ませるシーン、そして究極は、納屋で二人がタンゴを踊る妖しくもロマンチックなシーン。何かが起きることを腐女子に期待させる意味深なシーン満載。抱いてくれたらいいのに~♪状態なトムが切ない。

 フランシス、ほんとヤバすぎるサイコ野郎なのですが、トムが彼から逃げられない逃げないのが何となく解かるほど、危険な魅力がある男でもあります。キレたら何しでかすか分からない、どこを踏んだらキレるのか地雷が分からない、まったく読めない不穏すぎる男なのですが、普段は寡黙でママ孝行、有能な農夫で、地元でも評判の男前。逆らわず従順にしてたら、トムにもすごく優しい。孤独で寂しそうなところも、哀れを誘って離れがたくさせる。おまえが必要なんだ!逃がさない!と、トムの車を壊したり、鬼の形相で森の中を追っかけてくる姿は、さすがにキ○ガイの領域でトムもドン引きしてましたが。フランシス役を演じたピエール・イヴ・カルディナルが、なかなかワイルドなイケメンでした。
 フランス語圏であるカナダのモントリオールが舞台、というのも新鮮でした。モントリオールにも行ってみたいな~。

 ↑1989年生まれ、まだ26歳のグザヴィエ・ドラン監督の新作は、ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティアール、レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル、そしてナタリー・バイという、よく集めたな~な豪華キャストの“Juste la fin du monde”です。楽しみですね~
コメント (4)
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