「サンドラの週末」
病気で長期療養していたサンドラに、会社は解雇を通達。同僚たちがボーナスをあきらめれば、サンドラの職場復帰が認められることに。サンドラは週末、同僚たちを説得して回るが…
偶然ですが、続けてマリオン・コティアール主演作。ベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟監督作品です。この映画での好演で、マリ子はオスカーにノミネートされました。
これまでのダルデンヌ監督の作品同様、これといってドラマティックな出来事も事件も起きず、特殊な人間も出てきません。最初から最後まで、淡々とした話と人間模様がドキュメンタリータッチで描かれています。でも、ぜんぜん退屈しないんですよね~。ハリウッドのド派手なブロックバスター映画のほうが、つまんねえな~早く終わんないかな~と苦痛になることが多い。奇をてらわず淡々としてるけど、いったいどーなっちゃうの?!という先の読めなさ、そして突きつけられるリアルでシビアな現実で観客を引き込む手腕が、相変わらず巧みなダルデンヌ兄弟です。
ボーナスをあきらめて、と同僚たちを説得して回るサンドラ。不安と安堵、絶望と希望を行ったり来たり、息も絶え絶えな彼女の姿に身につまされ、こっちまで胸苦しくなりました。サンドラも悲痛でしたが、同僚たちにも同情を禁じ得ませんでした。悪人なんていない、みんな善き人たち。できればサンドラを助けたい、味方になってあげたい、でも生活のためにはお金が要る…サンドラの復職に投票できないと告げる彼らの、気まずそうで心苦しそうな様子も、観客の心をザワつかせます。サンドラにNoと言う同僚たちを、非情だと責めることはできません。お金、友人関係、夫婦関係、生活苦…ああ、哀しみの小市民。決して絵空事ではない、他人事ではない世界は、現実的すぎてイヤな共感、親近感を抱かせます。
サンドラがこれまた、アクションやサスペンスのヒロイン以上に、見ててハラハラする女なんですよ。理不尽な解雇や不当な扱いに、激しい闘志を燃やしたり涙で窮状を哀訴したりするキャラではなく、常にどよよ~んとしんどそう。どうやら鬱を患って仕事を休んでたみたいですが、安定剤がぶ飲みしたり、衝動的に自殺未遂をしたり、おいおい~まだ治ってないじゃん?!もうちょっと休んでたほうがいいよ~と、心配になります。あれじゃあ復職は無理ですよ。本人のためにも、周囲のためにもならない。会社側の対応は、あながち不当とは言えないのでは、とも思った。
とはいえ。こいつが辞めないとおまえらにボーナスやらん!とか言う会社、最悪だわ~。復職させないだのボーナスくれないだの以前の問題。労働基準法違反!と、私なら訴えるわ。もしくは、ボーナスがナンボのもんじゃ!バカにすんな!と啖呵きって辞めるわ。他の仕事探します。でも、それは上から目線的な考え方でしょうか。簡単に仕事を辞めることはできない、酷い扱いを受けてもしがみつかねばならない。日本人が思ってる以上に深刻で厳しい、ベルギーの社会の現実をあぶり出している映画です。
疲れ果て、打ちひしがれ、何度も諦めそうになっても、小さな希望を信じて前に進むサンドラに、つらい社会生活を送る者として私も勇気づけられました。わたし頑張る!わたし負けない!的な、ポジティヴすぎないところに好感。一寸の虫にも五分の魂というか、自分はどうでもいい人間、どう扱われても仕方ない人間、なんて自己否定せず、小さな形でもいいから自分の存在証明、存在意義を確かめる必要が、生きるためには時には必要だな~と、サンドラを見ていて我が身を顧みました。ラストのサンドラの決断も、爽やかで小気味よかったです。困難や苦難だらけのままだけど、小さな希望の光が見えてプツンと終わり、もいつものダルデンヌ調。
マリオン・コティアールの、情緒不安定なメンヘラ演技、ダメ女演技が秀逸。こんな人、いるよな~なリアルさです。ハリウッド女優なら、もっと感情的にオーバーな熱演になってたところを、デリケートにナチュラルに演じてたマリ子は、さすがフランス女優です。いろんな感情に揺れる大きな瞳は、台詞以上に饒舌。どよよ~んとした中、たまに見せる少女のように繊細な微笑みが可愛かった。
病気で長期療養していたサンドラに、会社は解雇を通達。同僚たちがボーナスをあきらめれば、サンドラの職場復帰が認められることに。サンドラは週末、同僚たちを説得して回るが…
偶然ですが、続けてマリオン・コティアール主演作。ベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟監督作品です。この映画での好演で、マリ子はオスカーにノミネートされました。
これまでのダルデンヌ監督の作品同様、これといってドラマティックな出来事も事件も起きず、特殊な人間も出てきません。最初から最後まで、淡々とした話と人間模様がドキュメンタリータッチで描かれています。でも、ぜんぜん退屈しないんですよね~。ハリウッドのド派手なブロックバスター映画のほうが、つまんねえな~早く終わんないかな~と苦痛になることが多い。奇をてらわず淡々としてるけど、いったいどーなっちゃうの?!という先の読めなさ、そして突きつけられるリアルでシビアな現実で観客を引き込む手腕が、相変わらず巧みなダルデンヌ兄弟です。
ボーナスをあきらめて、と同僚たちを説得して回るサンドラ。不安と安堵、絶望と希望を行ったり来たり、息も絶え絶えな彼女の姿に身につまされ、こっちまで胸苦しくなりました。サンドラも悲痛でしたが、同僚たちにも同情を禁じ得ませんでした。悪人なんていない、みんな善き人たち。できればサンドラを助けたい、味方になってあげたい、でも生活のためにはお金が要る…サンドラの復職に投票できないと告げる彼らの、気まずそうで心苦しそうな様子も、観客の心をザワつかせます。サンドラにNoと言う同僚たちを、非情だと責めることはできません。お金、友人関係、夫婦関係、生活苦…ああ、哀しみの小市民。決して絵空事ではない、他人事ではない世界は、現実的すぎてイヤな共感、親近感を抱かせます。
サンドラがこれまた、アクションやサスペンスのヒロイン以上に、見ててハラハラする女なんですよ。理不尽な解雇や不当な扱いに、激しい闘志を燃やしたり涙で窮状を哀訴したりするキャラではなく、常にどよよ~んとしんどそう。どうやら鬱を患って仕事を休んでたみたいですが、安定剤がぶ飲みしたり、衝動的に自殺未遂をしたり、おいおい~まだ治ってないじゃん?!もうちょっと休んでたほうがいいよ~と、心配になります。あれじゃあ復職は無理ですよ。本人のためにも、周囲のためにもならない。会社側の対応は、あながち不当とは言えないのでは、とも思った。
とはいえ。こいつが辞めないとおまえらにボーナスやらん!とか言う会社、最悪だわ~。復職させないだのボーナスくれないだの以前の問題。労働基準法違反!と、私なら訴えるわ。もしくは、ボーナスがナンボのもんじゃ!バカにすんな!と啖呵きって辞めるわ。他の仕事探します。でも、それは上から目線的な考え方でしょうか。簡単に仕事を辞めることはできない、酷い扱いを受けてもしがみつかねばならない。日本人が思ってる以上に深刻で厳しい、ベルギーの社会の現実をあぶり出している映画です。
疲れ果て、打ちひしがれ、何度も諦めそうになっても、小さな希望を信じて前に進むサンドラに、つらい社会生活を送る者として私も勇気づけられました。わたし頑張る!わたし負けない!的な、ポジティヴすぎないところに好感。一寸の虫にも五分の魂というか、自分はどうでもいい人間、どう扱われても仕方ない人間、なんて自己否定せず、小さな形でもいいから自分の存在証明、存在意義を確かめる必要が、生きるためには時には必要だな~と、サンドラを見ていて我が身を顧みました。ラストのサンドラの決断も、爽やかで小気味よかったです。困難や苦難だらけのままだけど、小さな希望の光が見えてプツンと終わり、もいつものダルデンヌ調。
マリオン・コティアールの、情緒不安定なメンヘラ演技、ダメ女演技が秀逸。こんな人、いるよな~なリアルさです。ハリウッド女優なら、もっと感情的にオーバーな熱演になってたところを、デリケートにナチュラルに演じてたマリ子は、さすがフランス女優です。いろんな感情に揺れる大きな瞳は、台詞以上に饒舌。どよよ~んとした中、たまに見せる少女のように繊細な微笑みが可愛かった。