1010 Radio

ラジオから色んな情報が発信されるように、車いすの視点から情報や思いを発信。

失われるアメリカの威信

2007-11-15 | ラジオ
つい最近、政治の世界で権威を持っているイギリスの国際戦略調査研究所
が報告を発表したが、そのなかで研究所所長を努めるチップメン教授は、ア
メリカは過去に手にしたその遺功を、そして影響力を失ってしまった。5年前の
状況とは全く違っていると指摘している。
チップメン教授が言わんとするところは、戦略的レベルにおける根本的な敗北
であり、報告書の中で確認されているように、書類の上ではアメリカの軍事力
は世界を支配しているように見えるものの、そのことはアメリカ政府が自分達
の目的を達成する助けとはなっていないということだ。

イギリスの学者達のこうした結論を、偏った考え方として退けることは出来ない
ように思う。イギリスの国際戦略調査研究所の名声はとても高いものだし、状
況分析しイギリスの学者達は客観的に状況を分析判断しているからだ。
彼らのアメリカの同僚であるピュー調査センターの専門家達は、自分達の報
告書の中で、すでにイギリスの専門家に先立って同様の結論に達し、アメリカ
に対する世界の信頼はかなり傷つけられ弱まってしまい、アメリカ政府がその
政策の中で掲げているモチーフにも疑いの目が向けられている。

ワシントンの公式筋の中でも、そうした明らかな事実の数々を否定できないで
いる。
アメリカ議会のモニタリング局も、世界で反米気運が深刻なレベルで高まりつ
つあること、アメリカの国益か脅かされつつあることを確認せざるを得なくなっ
ている。
イラクに対する違法な攻撃は、アメリカという国家の国際的な威信に深刻なダ
メージをもたらしたが、世界中で反アメリカの気運が盛り上がった理由は、な
にも屈辱的な軍事的な敗北ばかりではない。
主な理由はアメリカ政府が世界で、ただ一つの超大国という自らの役割を、グ
ローバルな規模で要求している点にある。
そしてアメリカはそうした要求を示すのみならず、世界における唯一の超大国
と言う役割を実現しようと試みている。
イラクに対する攻撃は、国際社会の大部分の意見に反して行なわれた。
ロシア、ドイツフランスはブッシュ大統領に対して、イラクへの侵略は破滅的
な結果をもたらすと警告していた。
これら3カ国の支援を得られないと知ったアメリカ政府は国連を避けて、つまり
国連の承認を受けずに行動する道を選んだ。
世界の他の国々の意見を軽視する傲慢なアメリカの態度は、国際社会に否定
的な反応を呼び起こし、世界中に反アメリカの気運が生じてしまった。

ブッシュ政権―一国主義(ユニラテラリズム)の論理

大島 寛
NCコミュニケーションズ


このアイテムの詳細を見る

また力、武力の助けを借りた押し付けも含めて、アメリカ流の民主主義のモデ
ルを最高のものであり、国を統治しうる唯一のシステムであるとして、それを他
の国々や他の民族に押し付けようとするアメリカの政策もまた、世界中で反米
感情が盛り上がる重要な原因となった。
アメリカ流の民主主義を世界に広めようとする人々の視野の狭さ、自信過剰な
態度はもはや悲しさを通り越して滑稽でさへある。
現在アメリカ政府が民主主義に付いて教訓を垂れている中国には、何千年も
続く高度な文明が存在してきた訳で、中国が文明をすでに享受していたころ、
今のアメリカに主として住んでいたのは野生のバイソンだけだ。

全く同じことはやはり何千年もの文明を持つインドや、やはり古い独自の歴史
を持つアラブやラテンアメリカに付いても言える。
またロシアの歴史において、かなり大きな役割を演じた古代ルーシュのヴィリー
キー・ノヴゴロドの民主主義の制度に付いて言えば、民主主義の教訓を世界に
伝えることを引き受けている、自惚れ屋のワシントンの人々はあらゆることから
判断して、ヴィリーキー・ノヴゴロドの民主制に付いて、これに付いても読んだこ
とも無ければ聞いたことも無いようだ。

宣教師そして真の民主主義の熱心な信者の役割を求め、自分に賛成しない人
々全てを火炙りの刑にも相応しい、異端者呼ばわりしながら現在のアメリカ行
政府ブッシュ政権は、世界の国々そして民族のかなりの部分を自分に対立する、
対抗する側へと立たせている。
自分達が作り出したこうした条件の中でアメリカ議会の議員達は、世界中で反
米気運が深刻なほどに強まっていると嘆くのはおかしなことでないだろうか。
世界で唯一の超大国の役割を担うという、非現実的な要求、国家的なエゴイズ
ム、自分たちの利益だけを考慮に入れる姿勢、そうした態度を取り続ける限り
世界中で強まる反米感情が弱まることはないだろう。
もしアメリカの政府がこうした傾向に付いて、悲しげなため息だけをつきアメリカ
社会、そしてアメリカ国民が信頼して、政治を任せている人々が形成されてしま
った状況から抜け出す必要な措置をとることが出来なければ、アメリカはそう遠
くない将来、極めて深刻な問題の数々に直面するように思う。

反米という作法

西部 邁,小林 よしのり
小学館


このアイテムの詳細を見る

10月15日放送 ロシアの声・ラジオジャーナル