ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

沖縄に行ちぶさ 戻いぶさ

2011-08-01 05:40:58 | 沖縄の音楽


 ”めんそーれ沖縄かい”by 玉城貞子

 先日から私の街のスーパーで、沖縄物産展とかやってましてね。私は、おう、こいつはいいや、とか言って沖縄のチューハイ缶など買い込み、冷蔵庫に放り込んでおいたのですね。で、昨夜、沖縄島歌のCDを聴きながらブチ、と缶を開け、パイン&シークァーサー”味のチュウハイをグビグビやったんですが。
 いや、その甘さに驚いた。パイン味ってこれ、パイナップルの缶詰に満たされている甘い甘い汁、あいつがそのまま缶を満たしている、くらいの迫力ある甘さがある。大丈夫かこれ、飲んでるだけで糖尿病にならないかな、なんて本気で心配しちゃったんですが、でもあの容赦ない甘さこそが太陽輝く南国のノリなんでしょうね。そこを分からんのでは仕方ないな。とか言いつつ昨夜はいくつもの缶を開け、すっかり南国直送の泥酔を満喫したんです。

 さてこのCD、帯には「風狂の女歌人」なんて凄い惹句が書いてあります。こりゃすごそうだな、とんでもないエキセントリックなド迫力の歌をうたうんじゃなかろうかと、まあ蛇道な期待をしてこのアルバムを買ったわけです、私は。が、聴いてみれば。どこが、という作品なんでありました。私はすっかり和んでしまったのでした。
 いやいや、現地沖縄の人々にしてみれば、これで”風狂”な感じなんですかね。その辺はなんとも分からないが。
 ともかくこのアルバムで聴く玉城貞子さん、キンキンしたところの何もないフワッとした高音が、なんだか雲を吐く、なんてのも、ものすごく意味の分からない表現だろうけど、そんな感じの歌魂がゆらゆら舞い出るみたいな歌い方で、飄々と沖縄の古い懐かしい歌を歌いついで行く。あくまでもマイ・ペースで。

 この軽い感じがとても良いのですね。時々顔を出す男性歌手とのデュオでは、ほとんどメオト漫才の空気が漂います。このところ、ほんとにいろいろめんどくさいことがあってクサクサしていた私はひと時、すっかり癒されたのですね、貞子さんの歌に。
 そのうち、気がついた。たとえば”古酒になるまで”とか”冬ぬ夜雨”なんて地味な哀感の漂う歌がとてもいいんですね。前者なんか英国民謡の”ジョン・バレイコーン”なんかと比べてみたい歌なんだが、まあそれはここではあちらに置いておくとして、このしみじみとした情感がゆっくりゆっくりと伝わってきて、気がつくとこちらの心はすっかり懐かしさに水浸しになっている、この感じね。これはたまらんものがある。

 懐かしいって、どこに?うん、行った事もない、見た事もない、もう多分失われてしまったのだろう、古い沖縄の風物が懐かしくてたまらない。
 こちらのテーブルの上におかれた過激に甘いチューハイの、グラスの中に揺れ動く気配はそのまま黒潮逆巻く海を渡り、同じ時間、懐かしい沖縄の酒席の上のグラスと同じペースで揺れている。懐かしいです。海を越え、懐かしい人々の元に帰りたい。その、逢ったこともない人々と杯を交わしたい。

 さて、下に貼る試聴がなにもないのが残念でなりません。貞子さんの歌、You-tubeには一曲もありませんでした。ほかの人で、”うちなーブルース”とか、貞子さんのヒット曲を歌っているものでもないかなとさがしたんですが、ダメだった。貞子さん自作の”ふるさと”なんて曲、聴いてほしかったんですがねえ。





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