ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

陽だまりとロボット

2010-10-24 01:39:35 | エレクトロニカ、テクノなど
 ”Grace Days”by I am Robot and Proud

 しばらく前からテクノとかエレクトロニカとか呼ばれている電子ポップ音楽に興味を惹かれだしている。
 まあ、そのへんの趣味は元々あって、アフリカやアジアの泥臭い田舎のポップスを聴く一方でクラフトワークとかタンジェリン・ドリームなんて”シンセもの”のアルバムを聴いて来た。ただ、それらが自分の趣味のメインに出てくることはなかった、というだけのことであって。
 いや、同じことだと思うんだよね。クラフトワークなんてドイツのフォークソングに聞こえるし、タンジェリン・ドリームなんて凄く人間臭い音楽をやっていると思う。
 それが、このごろは結構本気であれこれ聴きはじめているのだが、まだテクノやエレクトロニカ音楽の世界の鳥瞰図が書けるほどにはなっていない。あちこち覗きまわって気になる盤を買ってみる、レベルの行き当たりバッタリを演じているだけで。

 そんな中で気になるミュージシャンも出て来たので、ちょっと書いてみる。I am Robot and Proud なるユニットである。これはちょっと気に入ったね。
 I am Robot and Proud は中国系カナダ人のミュージシャンの一人プロジェクトの名称である。一人でいくつもの楽器を操り、多重録音で音楽を作り出す。
 で、このロボット君、この種のエレクトリック・ポップとしてはずいぶんと人懐かしい手触りの音楽を聴かせてくれるのだ。
 それは幼い頃の記憶の中に忘れられたまま転がっているような音楽。はじめて聴くのに、いつかどこかで聴いた事があるような、不思議な懐かしさに満ちたメロディが奏でられるのだ。その底の方では名付けようもない哀しみや淋しさが風に吹かれて舞っているようにも感じられる。
 なんだろう、これは?こんなメロディを彼はどこで見つけて来たのか。何でまたそれを、このような電子ポップの形態で演奏する事を選んだのだろう。
 まだ聴き始めたばかりでその正体、つかめていないのだが、何か気になるミュージシャンだ。

 今のところ一番気に入っているのが、2枚目のアルバムのタイトル曲、”Grace Days”だ。ジャケに使われている、灰色の空の下にひっそりと片寄せあっている家々の画像と相まって、妙に胸に迫るものがある。聴いているうちに、私が物心付いた頃から抱き続てきた孤独と響き会う何かが、それら家々の角を曲がったすぐそこにいて、でも我々は互いに知り合うすべもなくそれはこのまま記憶の片隅に消えて行ってしまうのだろう、なんて形もあやふやな妄想が呼び起こされる・・・
 ひゃあ、もしかしてのめりこむかもしれないなあ、エレクトロニカ音楽。とにかくこいつは注目だ、I am Robot and Proudは。あっと、この名前、てっきりジェイムス・ブラウンの有名な「俺は黒人だ、それが誇りだ」のパロディかと思ったら、アニメの鉄腕アトムから発想を得たんだそうだ。まあ、そちらの方が納得出来るよね、それは。