ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

パタヤビーチに沈む21世紀を見送りながら

2010-10-07 01:23:09 | アジア

 ”Fair Ladies ”

 ところでタイのアイドルグループ、”ネコジャンプ”はどうしちゃったんですかね?彼女らの出現には、ほんと「一本取られた!」って気分でした。この混迷の世界に、突然空から舞い降りて、あっけらかんとポップスの王道を歌い踊ってしまった。そのあまりの鮮やかさに、我々は言葉もなかった。
 我々はただ唖然とし次には大笑いし、そして彼女らにどこまでもついて行こうと決めたものでしたが。その後、日本のアニメの主題歌を歌うは日本盤も発売になるはで、このまま世の中はネコジャンプの支配下に落ちるんではないかと思ったものでした。

 でも、なんかその後が続いていませんね?タイ本国では新曲が発表されたとも聴きましたが、新録アルバムの発売の話は聴かないし。彼女らの活躍に何の障害が発生しているのやら知らないけど、必ずやまた、元気な姿を見せて欲しいものだと思います。
 そんな私ですから、タイ発のアイドルグループにはどうも過反応してしまう。先日も、こんな新人デュオのデビューアルバムを買って来たんですがね。フェアレディズというのがグループ名なんでしょう。KayoとNanの二人組です。

 収められているのは、夏の終わりの海辺の感傷ソングとでもいうんですかね。元気いっぱい飛び跳ねていたネコジャンプとは、かなり個性は違っています。
 どれもスロー~ミディアム・テンポの、ややフォークがかった透明感のあるメロディ。頼りなげな声で歌い流しながら二人は、もう人影も見えなくなったシーズンオフの砂浜を散歩している。失われた夏の恋の思い出でも歌っているんでしょうか。
 隙間の多い爽やかなバックの音もお洒落なものです。ジャジーなギターが聴こえたりボサノバのリズムが流れたりします。

 でもこのCDを、「これは違う」と一蹴する気にもならなかったのは、この「海辺の感傷ソング」が時代の気分としてはこれで正解だろうという妙な確信が私の心に生まれていたから。
 うん、今、こんな時代だろうと思うんですよ。ここに流れ続ける仄かな哀感は、いろいろ未解決の問題を抱えながら、時の流れに流されるままに第4コーナーを曲がってしまった現代のタイ国の、いや今日の全世界の人々の戸惑いや喪失感の根本に連なるものである。

 それはどういう意味だ?とか問い返されても答えることは出来ないが。そんな気がする、というだけの話なんで、軽く聞き流していただきたい。うん、まあ、それだけの話なんですがね。