ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

風立ちぬ、タイにて

2010-10-08 04:02:58 | アジア

 ”WORM EYE’S VIEW”by PLOY

 昨日の”Fair Ladies ”の流れで、さらにタイの女の子のポップスを聴きたい気分なのだった。これはジャンル的になんと呼ぶのか知らない。タイのナチュラル志向のフォーク系ポップスとでも?
 先日、某有名レコード店の閉店の際、何かの雑誌で読んだ「すでに”渋谷系”音楽の本場は実質タイになっているわけだが」なんて言葉が今、頭の隅に浮んだのだが・・・おい待て、”渋谷系”の意味がよく分かっていないのに何となくそういう言葉を使わないほうがいいぞと内なる声がする。そりゃそうだな。この文章はなかったことにする。なんか使えそうな気がしたんだが。

 アルバムの主人公のPloy嬢は、上の方の音域になるとすぐに裏声になってしまうような、か細い可憐な歌声の女の子である。そんな彼女が非常に繊細なメロディのフォーク歌謡を素朴な独り言を聴かせるみたいな、なにげないタッチで歌っている。なかなかに切ないです。過ぎ去った青春の日々など思い出せば胸の一つも痛もうと言うものであります。
 内ジャケの写真を見るとヨーロッパからやって来たトラッド系ミュージシャンが参加してバグパイプやアコーディオンを演奏もしているようだ。ティン・ホイッスルの響きが心地良い。あるいはジャジーにギターが響き、時にマリンバがトロピカル調な潮風の香りを運んでくる。多彩な隠し味が憎い。そんなマニアの仕事が裏で進行している状態の、洗練されたバッキングが爽やかに流れて行く。

 ジャケ写真。Ploy嬢は秋の柔らかな陽の中で、高原の風に吹かれながら振り返り笑顔を見せている。彼女の足元に広がる、すでに冬の影が忍び寄っている下草の色合いが妙に切ないのです。時の流れはすべてを飲み込み、何もかもを変えて行く。
 やがてこの高原にも木枯しが吹きつけ、すべてを覆う雪景色が・・・。いや、ちょっと待て。そんな白樺揺れる高原の感傷なんかが存在しうる気象条件にあるのか、タイという国は?めちゃくちゃ暑いんじゃなかったのか、おい?

 などと言っても、もうこういう音楽が存在しちゃっているんだからしょうがない。そして私は、これから深まる秋に向けてPloy嬢の他のアルバムも欲しくなったなあ、などと呟いてみるのでした。