ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ミャンマーのクリムト式ロック

2009-07-12 04:32:56 | アジア


 ”Min Ko” by Sone Thin Par

 まずジャケを見てのけぞってしまったんだけど、これ、画家クリムトのパロディでしょ?絵の中の人物の、顔の部分だけ歌手のそれと入れ替えてる。こういう事をやっていいのかどうか知りませんが、まあ文句言うような立場の人はミャンマーのポップスなんか、存在も知らないだろうしな。

 ミャンマーのポップス歌手、Sone Thin Parの2005年作であります。と言っても、この人を聞くのはこれがはじめて。ざっと聴いて行くと、相当の洋楽志向の人と分ります。ロックやジャズなど、アメリカ方面のポップスをかなり完璧に消化した音楽を聞かせる。カバーものなんかもあるものかも知れません。何しろ当方、昨今の米国製のポップスをまったく聴いていないんで、具体的に曲名を挙げられないんだが。

 Sone Thin Par女史の、ハスキーで押しの強い輪郭のはっきりしたボーカルは、欧米のポップスをかなり年季を入れて歌ってきたと想像できます。ともかくカッコいいや、あれこれ言う前に。確信を持って堂々と歌い上げる姿勢に、強引に納得させられてしまうんだなあ。(我々日本人の視点からはかなりヤンキー臭くも見えるんだが、これが現地ミャンマーにおいてはどのような意味を持つかは、よく分らず)

 バラードものなんか聴くと、ロックを相当に入れ込んで聴いてきたし歌っても来た、そんな年季を感じます。かなり良いよ、思わず聴き込んでしまったもの。
 9曲目のカントリー・ナンバーなんか確実にアメリカ曲のカバーであって、ミャンマー語のカントリー&ウエスタンってのも妙な手触りのものなんだけど、これも慣れた歌いっぷりで不自然さを感じさせない。

 ともかく気風のいいロック姐さんという感じで、気持ちがいいですね。いや、それだけだったらわざわざミャンマーくんだりのポップスのCDを苦労して手に入れて聴くまでもないんで。
 そんなロック姐さんであるSone Thin Par姐御の音楽にそこはかとなく漂う、いわく言いがたいミャンマー風情が、またたまらんのです。ほのかに差すアジアの気配、かすかに兆す南の陽光。
 まあ、ご本人はそんな気配の存在など自覚せずに「こんな音楽が好き!」って気持ちだけでやっているんでしょうけどね。

 それにしてもアメリカン・ポップスの諸パターンを完璧にこなすバックのバンドにものけぞった。これ、すべてミャンマーのミュージシャンがやっているのか?なんてことに驚くのも失礼な話か。

 試聴です。アルバム収録曲ではないんだが、なにしろジャケに書かれているミャンマー文字の発音も分からない状態で、どう探したらよいやら。まあ、Sone Thin Parという歌手はこんな感じ、ということでお許しください。
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