ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

慈悲の波、寄せる岸辺に

2009-07-06 03:40:05 | アジア


 ”心霊菩提”by 水琉璃

 なんか精神的に大分参っているのかも知れないです、さっき気がついたんですが。いやね、数日前からなんとなく体調悪いなあと感じてたんだが、もしかしたら心のヤマイ傾向が出て来ているのかも?って気もして来た。それが証拠に、このように台湾の仏教音楽なんかを引っ張り出して聴いてみたくなったりしているわけです。

 ”心霊菩提”なんて、日本人の漢字イメージから行くとホラーみたいなタイトルと感じてしまうんだけど、中華圏には”心霊音楽”なる、何と申しましょうか仏教ネタのヒーリング・ミュージックとでも言うべきもののジャンルがあるようなんですね。こんなアルバムには時たま出会います。

 なんでも、ある台湾の歌手が北京語による優れた心霊音楽のアルバムを作った功績により北京政府に表彰され、チベットの仏蹟への参拝を特別に許された、なんてエピソードまであるそうな(心霊音楽は台湾語で歌われるケースが多いようです)
 そんな話からすると、この心霊音楽、中国人の世界ではこちらが考えるよりも大きな存在であるのかもしれません。

 このアルバムの主人公は、黄思亭(本当は亭の字に女偏が付く)という名で普段は活動している台湾の実力派女性歌手なんだそうですが、これは仏教名か何かなんでしょうか、水琉璃なる名でこのアルバムをリリースしている。心霊音楽をやるときだけの名前なのかもしれません。
 彼女、しっとりと落ち着いた美声の持ち主で、このような御仏のお慈悲を歌うアルバムには確かにうってつけの人材といえましょう。

 殷々と流れるシンセの響きやアコースティックギターの爪弾きなんかをメインにした河のせせらぎの如き癒しのサウンドをバックに、彼女が心を込めて歌い上げる仏教歌の数々。本気で癒しです。もう、すがる気分になって来てます。ヤバい、ほんとに私、深く静かに疲れているのかも。

 冒頭に収められた、彼女の仏教名と同じタイトルの曲が、なかなか興味深い出来上がりになっております。あの喜多郎が作ったシルクロードのテーマのようでもあり沖縄島唄めいてもいるメロディで、そして確かに歌の後ろにはシンセの響きの狭間で沖縄の三線の音がしている。面白い事を考えたなあ。これ、沖縄から誰か招かれて三線を弾いたんだろうか?

 歌詞は、漢字の意味を追っていってもなんだか分らないし、言葉の響きとしても聞き慣れないものだから、古いお経にそのままフォーク調のメロディを付けたものではないでしょうか。ちなみに作詞者は”藥師佛心咒”なる、よく分らないが畏れ多そうなお名前となっております。
 他の詞も、”吉祥天女心咒”とか”清淨法身佛”なんて、「人間扱いでいいのか?作詞印税とか行ってしまったら逆に失礼にならないか?」とか妙な心配をしたくなるお名前が作詞者として並んでおりまして、この辺も昔の徳の高い坊さんの説法にメロディをつけたとか、そんなものであるような気がします。

 なんか”気がします”ばかり連発してしまいますが、まだいろいろ謎の部分が多いです、この心霊音楽ってジャンル。まあ、いちいち気にせず、勝手に癒しの音楽として聴いてしまっていますけどね。


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