ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

乾杯、ダルエスサラーム!

2009-07-31 02:08:35 | アフリカ

 ザンジバラ第5集 ”Hot in Dar”

 東アフリカのスワヒリ大衆音楽を紹介するシリーズの第5集である本作は、70年代から80年代にかけてのタンザニアのダンス・ミュージックの姿が捉えられている。
 サハラ以南の、いわゆるブラック・アフリカを席巻したコンゴ(旧ザイール)のルンバの影響を、彼らもまた濃厚に受けつつ、しかし独自の、良い意味での緩さを獲得し、独自のファンキーさを謳歌していた、そんな時代のタンザニアのダンス・バンドたち。これは、久しぶりに聴いてみたらなかなかの拾い物だったのだ。

 この頃はもう、”本家”のコンゴの最前線では時代遅れとなりつつあったのではないか、トランペットとサックスからなるホーンセクションが奏でる、どこか素っ頓狂なイントロがすでに楽しい。同じくコンゴのそれと比べるとずいぶん水分の少ない感じのギターが数台、似て非なるフレーズを絡ませ合い、その交錯する辺りから生き生きとしたリズムの泉が湧き出る。

 それにしても、ベースの自由度は恐るべきものだ。リズム楽器としての自覚さえなく、気ままに弾きたいフレーズを弾き散らしているだけとさえ思えてくる。が、楽曲を支える大きなリズムのくくりの中では、そいつは強力なスパイスとして機能する。
 そして始まるボーカル群は、まさにインド洋の果てしない広がりの中をのんびり水浴しながら世間話を交わすような、雄大にして伸びやかな響きがあり、聞き手をすっかりリラックスさせてくれるのだった。

 ともかくここに収められたどのバンドの音楽にも、タンザニアの夜を覆う、どこかに海の風を孕んだ熱くでっかい空気の感触が覗われて、その独特のリズミックな極楽感覚はたまらない魅力である。で、どうしても綾なす海、インド洋の潮の香りなんてものをこの音楽から感じてしまうのだが、それはこちらの思い込みなんだろうか?
 というわけで、このクソ暑い日本の夜の向こうに無理やり幻視してみるタンザニアはダルエスサラームの一夜に乾杯。

 (試聴は、探したけれど見つけられなかったので・・・)