南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

原子力損害賠償請求の消滅時効延長立法についての弁護士会声明

2020年08月06日 | 原子力損害

現在の法律では、原子力損害賠償の請求権は、次のいずれかの場合は、時効により消滅するものとされておりまして(原発時効特例法3条)、一般的には①の点をとらえて「原子力損害賠償請求の時効は10年」と言われています。

 ①被害者が損害及び加害者を知った時から10年間。
 ②損害が生じたときから20年間。
 通常の不法行為責任の時効は5年間なので(民法)、原発時効特例法により特例として時効期間が長い扱いとなっているのです。

 原発事故が起きたのは2011年3月11日ですので、2021年3月には丸10年となります。そのため、弁護士会の中には、消滅時効延長の立法をすべきだという声明を出しているところがあります。

【福島県弁護士会】
2019年10月16日付で「原発事故損害賠償請求権の時効消滅に対応するための立法措置を求める会長声明」を出しています。
また、2020年3月11日付の「東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から9年を迎えるにあたっての会長声明」においても、時効延長立法について触れています。
 後者の内容を紹介しておきますと、国に対し,再度の立法措置に向けた検討を早期に開始することを強く求めるという内容で、その理由として次のことを挙げています。
①本件原発事故による損害賠償は,極めて多数の被害者が存在する
②個々の被害者に性質や程度の異なる損害が同時に,かつ日々継続的に発生している
③長期の避難生活等の事情により,損害額の把握やその算定の基礎となる資料収集に支障をきたす被害者が存在する
④ことに不動産等の賠償については,数次にわたる相続関係の処理等に長期間を要する事例があることなど,一般的な不法行為に基づく損害賠償とは異なる特殊性がある
⑤このままでは賠償請求権が時効により消滅してしまう事態が強く懸念されるところである。

【東北弁護士連合会】
 2020年3月14日付で「原発事故損害賠償請求権の時効消滅に対応するための立法措置を求める会長声明」を出しています。
 「国に対し、時効期間の再延長のための立法措置(時効特例法の改正等、例えば消滅時効期間を単に「損害が生じた時から20年」とする等)を求める」とされており、その理由は福島県弁護士会のものと被るところがありますので、その点は省略します。東北弁護士連合会独自の視点としては次のものがあります。
①東電は、2019年10月30日付で「原子力損害賠償債権の消滅時効に関する当社の考え方」を公表しているが、そこで示されているのは、「ご請求者さまの個別のご事情を踏まえて柔軟な対応をとる」というあくまでも留保付きのものであり、東電がこれまでの賠償請求事案に対し、被害救済に積極的な対応をとっているとは言い難いことも考慮すると、今後の賠償事例において消滅時効を主張することが懸念される。
②他の不法行為による賠償請求権の時効期間との均衡ということも問題とはなるが、2020年4月1日に施行された改正民法の時効の規定と比較しても、原発賠償請求の時効期間を20年としても、現在の法体系と著しく整合性を欠くものとはいえない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする