南斗屋のブログ

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高次脳機能障害の検査用語~三宅式

2008年02月25日 | 高次脳機能障害
 高次脳機能障害の後遺障害が残った方の後遺障害診断書を見ることが多いのですが、そこに記載されている検査所見は、医学の素人にはその意味をすぐに判断できないので、いつも苦労します。

 例えば、
「三宅式 有関係 5-7-7,無関係 0-2-2」
とあったとします。

 これは、医療関係者には当然の知識が前提とされているようです。
 インターネットで調べても、なかなか簡単に書いてくれているところは見つかりません。

 医学の治療やリハビリ目的でなされている検査を、後遺障害の損害賠償の観点から見なければならないので、医療関係者と法律家の視点が異なるということもあるのかもしれません。

 さて、上記の
「三宅式 有関係 5-7-7,無関係 0-2-2」
です。

 「三宅式」は、「三宅式記銘検査」(記憶の検査方法の一種)を実施したということです。

 この検査方法は、2つずつ対にした言葉を呼んできかせ、それを被検者に復唱させるものです。対になっている言葉には、関係があって類推できるもの(有関係対語とか有関連対語といいます)と、そうでないもの(無関係対語とか無関連性対語といいます)があります。

 ここまでわかれば
 「有関係」=有関係対語のこと
 「無関係」=無関係対語のこと
ということがわかります。

 では、そもそも有関係対語とか無関係対語とはどういうことなのか?

 対語表の例として、精神医学の教科書に載っていたものをあげておきます。(標準精神医学第2版)

有関係対語では
人‐猿
田舎‐たんぼ
親切‐情
医者‐病人
手‐足
池‐河
軍人‐戦争
馬車‐自動車
勉強‐試験
狐‐いなり
です。それぞれ関係のある言葉が対になっていることがわかります。

無関係対語は
谷‐鏡
酒‐村
下駄‐坊主
忠義‐椅子
仕事‐冬
蛙‐巡査
柳‐電話
娘‐石炭
行列‐空気
書生‐袋
です。それぞれの対には関係がありませんので、この方が有関係対語のときよりも、覚えにくくなります。

 これで「有関係」「無関係」のイメージがなんとなく分かってきました。

 最後に問題は、「有関係」「無関係」のあとにある3つの数字です。

 この検査は10の対語をいわせる検査なのですが、1つできたら1点で10対全部できれば10点(満点)ということになります。

 つまり、
 「有関係 5-7-7」
は、
 有関係対語のテストを3回実施したところ、1回目が5点、2回目が7点、3回目も7点であった(結局、10点には達しなかった)
ということを意味し、

 「無関係 0-2-2」は、
 無関係対語のテストを3回実施したところ、1回目が0点、2回目が2点、3回目も2点であった(これも10点には達しなかった)
ということです。

 これで数字が何を表しているかはわかりました。
 
 では、この検査結果が他の人と比べて平均点以下なのかどうか、これは平均点を知らないとわかりません。

 そこで調べてみると
 吉本智信:"高次脳機能障害と損害賠償"という本には、

 有関係対語で1回目8,5点、2回目9,8点、3回目10点
 無関係対語で1回目4,5点、2回目7,6点、3回目8,5点

が平均と記載されていました。
 これでようやく比較ができます。
 
 こうして調べてみると、医者と弁護士とは役割が違うものと思います。
 医者は正確に検査をすることが主目的で、記載としてはたった1行ですが、この1行に非常に重みがあります。

 弁護士は、この1行から医者が何を読みとったのかを読みとり、それを医学的知識がない裁判官にわかるように書いていく作業をしなければならないのです。
 

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