リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

こういうのをのめり込むというのかな

2023年02月04日 | 日々の風の吹くまま

2月2日(木曜日)。🌥☁🌥☁。バルコニーの気温は5.5度と、まあ、平年並み。今日はカレシのレッスンが午後9時までないので、起床はのんびり。ウォーキングものんびりで、ランチものんびり。まあ、きのうは外食と芝居でけっこう疲れたから、のんびり骨休めが一番。

きのうの芝居はArts Clubの新作依頼プログラムの下で、劇作家夫婦が共同で書いたもので、3年前のシーズンに予定されていたのが、コロナのおかげで延び延びになっていたもの。、学生時代から友だちの3人の男とそれぞれの妻が、仲間の結婚25年を祝うために集まったという設定で、場所はその1組がどこかのビーチに建てたばかりの家。といっても、セットはミニマリズムそのもので、キャストは全員裸足で、回転するステージに白い椅子6脚と豪華なシャンデリアだけ。男3人のうち、建築会社をやっているポールと投資会社をやっているジョンは富裕層で、近くで燃え盛っている山林火災には無頓着な妻たちの話題はヨガや瞑想、サステナブルな暮らし。結婚25年を祝ってもらっているルイスは漁をしたり、テーブルを手作りしたりして生計を立てている底辺層で、下心のあるジョンがプレゼントにと差し出したとんでもない額の小切手を辞退したところから、友人同士や夫婦の関係に利害関係が絡んで、偽善や裏切りの暴き合いになり、長年の「仲良しグループ」の綻びが表面化する。

タイトルの「Cull」は野生動物の繁殖を抑えるために捕獲して殺処分にするときに使われる言葉で、人里に近づいて(実は逆なんだけど)人間の安全を脅か狼を捕殺することの是非の議論になって、狼を擁護したのはルイスだけ。罠にかかって瀕死になっていた狼に遭遇したルイスが、見るに見かねて殺したところ、それをやぶの中から見ていた狼が出て来て、身構えているルイスには目もくれず、死んだ狼に頬ずりして、空に向かって吠えたというエピソードは感動的。狼は生涯を同じ群れの中で過ごすんだそうで、一時は食指を動かしたカツカツの生活から抜け出すチャンスを蹴って、家路についたルイスと妻のエミリーが山林火災の煙を眺めながら狼の話を始め、月に向かって吠えるというのは人間の作り話だとルイスが言うのに、じゃあなぜ吠えるのかと聞くエミリーに、群れの仲間に「ここにいるよ。聞こえるかい?ここにいるからね」と呼びかけているんだといい、2人が抱きしめ合って、暗転。感動的なエンディングだった。

芝居の大半が椅子に座っての会話なので、集中して聞いていないと難解な感じがしそうだけど(カレシはときどきこっくり)、言葉の奥まで登場人物を理解できた気がするのは、たぶん自分が今脚本の翻訳に没頭しているからだろうと思う。芝居を観るのと、書くのと、翻訳するのと、上演するのと、どれもみんなアングルが違うわけだけど、ストーリーを分かち合うと言う究極の目的は同じ。感動の勢いに乗って、あれもこれもと翻訳したくなりそう。デスクの上にはコロナの前からすでに2冊。どれも舞台を観て、感動して、どうしても日本語訳したいと思ったもの。英訳したい作品は、脚色に近いものにならざるを得ないので躊躇していたけど、頭の中で構想がまとまりつつある気がするし、ここまで来たら、もう後戻りはないな。



コメントを投稿