尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

世界で地震がよく起きる国は?

2017年01月24日 23時25分24秒 |  〃 (歴史・地理)
 トランプ政権論や映画の話が続いたけど、今度は「温泉」の話を書きたいなと思う。しかし、その前に温泉にも関連がある地震の話を書いてみたい。温泉と関係の深い火山現象も、地下深くで起きている地学的変動と関係している。そして、それは「地震」をもたらす仕組みと関連している。

 ただ、僕は地学的な説明はできないので、あくまでも自然地理的な概説だけ。歴史を好きになる前に、僕は地図が大好きな子どもだった。70年代くらいまでに独立していた国だったら、首都を全部言えたんだけど、その後太平洋やカリブ海の島国が増えてしまったからなあ…。

 最近大きな地震が起きたところといったら、どこだろうか。まずは日本の三陸地方沖ということになる。そして、もちろん熊本県、さらに鳥取などあちこちで起きている。さかのぼれば、阪神淡路大震災、新潟県の中越地震、中越沖地震など…。過去を探していけば、日本のすべての場所で大地震が起きたことがある。北海道や沖縄も起きている。

 世界ではと思い起こすと、2004年末のスマトラ島沖地震。あの大津波の映像は今もよく覚えているのではないだろうか。さらに南米のチリでよく起きている。最近もあったけど、1960年に起きた大地震では、日本の三陸地方にも大きな被害を出した。南米のエクアドルでも、2016年4月に大地震があった。イタリアでも2016年に大きな地震があり、アマトリーチェが大被害を受けて、その町発祥のアマトリチャーナのパスタを食べて支援しようという呼びかけがあった。東日本大震災の直前にはニュー・ジーランドの南島で大地震があったこともよく覚えているだろう。

 さらに、2015年にはネパールで大地震があり文化財が破壊された。2008年に中国の四川省で大地震があったし、1999年には台湾で大地震が起きた。どっちも覚えている人が多いと思う。1999年のトルコ、2001年のインド・パキスタン、2003年のイランと、いずれも1万人を超える犠牲者が出ている。インドネシア周辺では時々大地震が起きているし、ニューギニア付近も地震が多い。

 さらに米国西海岸のカリフォルニアも地震が多いことで知られる。最近は起きていないが、1994年1月17日、つまり阪神淡路大震災のちょうど1年前に起きたノースリッジ地震では、ロサンゼルスが大きな被害を受け高速道路が倒壊した。その前にもいっぱい起きているけど、かなり大きなものでは1906年のサンフランシスコ地震が有名。メキシコ中米のニカラグア、南米のペルーなども大地震が起きた。北を見るとアリューシャン列島カムチャツカ半島なども多い。太平洋沿いがズラッと地震地帯。

 これはもう常識レベルかと思うけど、太平洋の周りはズラッと山になっている。それを環太平洋造山帯(環太平洋山系)という。今もかなり動いている造山帯で、日本とハワイの距離は毎年8センチも近づきつつあるという。太平洋の海底は動いているのである。太平洋のへりが大陸とぶつかり、その圧力で高く盛り上がる。アメリカ大陸ではロッキー山脈、アンデス山脈と大陸の太平洋側に大山脈がある。一方、アジア側ではそこまで高くないけど、アリューシャン、千島、日本、台湾、フィリピン、ニューギニア、ニュー・ジーランドとズラッと島が並んでいる。海の水を抜いてしまえば、山脈の連続だ。

 今までの巨大地震は大体太平洋の周りで起きている。マグニチュード9.5と歴史上最大の地震は、1960年のチリ地震。ハワイに10m、三陸地方に6mの大津波がやってきたことで知られている。次が2004年のスマトラ沖地震(9.1~9.3)、1964年のアラスカ地震(9.2)、1833年もスマトラ地震(8.8~9.2)、1700年のカスケード地震(8.7~9.2、カナダから米国の太平洋岸)、東日本大震災(9.0)、以下カムチャツカ、チリ、エクアドル、アリューシャンと超巨大地震は、全部太平洋周辺で起きているのである。

 この環太平洋造山帯は、何となく覚えている人も多いと思うけど、世界にあるもう一つの造山帯、アルプス・ヒマラヤ造山帯は、案外忘れているかもしれない。ヒマラヤ山脈でアンモナイトなどの化石が見つかるという話を聞いたことがある人は多いだろう。インド亜大陸が移動してユーラシア大陸に衝突し、海底だったヒマラヤ付近が上昇したわけである。だから、ネパールで地震が起きたのも理解できるし、チベット付近も同様に造山帯の影響を受けるから、中国内陸の四川で大地震も起きる。
 (世界の2大造山帯の地図)
 アフリカ大陸とユーラシア大陸の衝突も起こり、アルプス山脈が生まれた。その中間にあるイランやトルコでも造山運動が連続し、イランのザクロス山脈やトルコのアナトリア高原、その北のカフカス山脈などができたが、その代わりに南側のペルシア湾沿岸地帯が沈下した。このことが湾岸地帯に原油が大量に埋蔵された理由である。アルプス造山運動は、バルカン半島のカルパチア山脈トランシルバニア山脈、さらにはイタリア半島ピレネー山脈に続いている。イタリアに地震が多いはずである。ただ、環太平洋地帯と違って、ヒマラヤやアルプスでは比較的火山が少ない。イタリア南部は有名なヴェスヴィオ山やロッセリーニ監督の映画にあるストロンボリ島などがあるが全体的には少ない。

 こういうわけで、世界で地震が多い地帯は、太平洋周辺、そしてヒマラヤからイラン、トルコ、イタリアあたりまでということになる。じゃあ、それ以外のところでは絶対に地震は起きないのか。確かにプレート・テクトニクス理論にあるプレート境界から外れた遠い場所は地震が少ないはずである。オーストラリアとかブラジル、ロシア(ヨーロッパの方)、あるいは米国やカナダの大西洋側は地震が少ない。でも、調べてみると、2016年にはオーストラリア内陸で地震が起きているし、ニューヨーク周辺で群発地震が起きたという。巨大地震や大津波は起きなくても、多少の地震はどこでも起きる。

 何でそうなるかというと、結局は「万物は流転する」ということである。人間は年を取るし、有機物(野菜や果物、肉や魚など)はどんどん腐っていく。人間も何も変わらないつもりでも、細胞はどんどん作り替えられている。無機物である鉱物だって変容を免れないということである。大地はゆるぎないと思っても、実は非常に長い目で見れば動いている。地球そのものも。地球の地殻の下にあるマントルは、より内部の熱を受けて対流をしているとされる。熱の伝わり方の三つ(伝導、対流、輻射・放射)の一つの対流である。だから、それに乗っているプレートも動いていく。物理的原則に沿って、地球そのものも動いてゆき、やがて星としての生命も終わるわけである。
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