工藤鍼灸院・院長のひとりごと2

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温めるのは正解?

2021年09月16日 19時30分08秒 | 鍼灸・東洋医学
元日本代表の鈴木啓太氏が来年2月にインナーウエアを発売するという会見を行いました。今年1月から「お腹を温めると便通や健康に良い」という言い伝えを科学的に証明する共同研究や商品開発を行っているそうで、「現役時代はお腹をお灸で温めていた」と語ったらしいです。

鈴木啓太氏「おなかを温めるといい…科学的に解明したい」 - 芸能 : 日刊スポーツ

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これ、誰でもお腹を温めればいいというわけではなく、古典医学の観点からするとお腹を温めていい場合と温めても効果がない場合があると考えられます。

天満宮に祭られていることで有名な菅原道真は『菅家後集』に流刑先の南館(榎社)の様子を「わび住まいで身の置き所もない」と記しているそうです。住環境としては最悪の場所であったという事なのでしょうけれど、流刑先の地ですし、元々貴族育ちの道真。彼にとってはお世辞にも住み良い環境ではなかったのだと思われます。長きに渡って無人の地だったので草木も生い茂り、建物は朽ち果てて雨漏りし放題。垣根は壊れ、井戸も枯れていたそうです。
そんな環境に置かれた道真は早速胃を壊し、脚気を発症致します。さらに皮膚病にまで罹患し、心身ともに限界まで追い詰められた状態だった様子がうかがえます。道真は意外と精神的に弱かったようですね。
道真はこれら体調不良の治療の様子を「石を焼いて胃管をあたたむ、この治遂に験なし」と記しております。つまり焼いた石でお腹を温めていたというのですが、実はお灸の原始的な形がこのようなものでした。
日本に中国医学が伝来したのは562年。道真が生きていた平安時代(794~1185年)になると朝廷の図書館には中国医学書が蓄えられており、鍼灸も盛んに行われておりました。焼き石でお腹を温めるという治療をしていたという事から、道真には少なからず中国医学の知識があったのかも知れませんし、庶民の間でもこのような治療法が盛んに行われていたのだと思います。

道真は何とか胃の具合を回復させようと試みたようですが、「この治遂に験なし」というのですから治らなかったのでしょう。では、なぜ治らなかったのか?これは私の勝手な想像なんですけど、道真の症状は腎虚による胃熱が原因の胃痛だったのではないでしょうか。
脚気もそうですが、足が弱るっていうのは腎虚がある証拠です。慣れない暮らしによるストレスも加わって胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症していると考えれば、腎虚による胃熱があったとも推測できます。
腎虚による潰瘍は非常に治りにくい(こじれている)場合が多いため、お腹を温めて胃熱を発散しようとしても発散し切れなかったのではないでしょうか。

何でも温めりゃいいっていうわけではなく、温めるべきか否かをしっかり見極めて対応することが大切です。鈴木啓太氏が取り組んでいる共同研究の結果を楽しみにしたいと思います。



余談ですが、本日9月16日は「マッチの日」だそうです。



国内メーカー3社というのはおそらく大和産業さん、中外マッチ社さん、そして日東社さんの3社。私はお灸をする際、着火用のお線香に火を点すために仕様しております。マッチを日常的に使用している愛好家です。ここしばらくは中外マッチ社さんの「たいこしし」ブランドを愛用中です。
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