実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

ルール 実戦教師塾通信七百七十二号

2021-09-03 11:52:14 | 武道

ルール

 ~「公平」とは違う世界~

 

 ☆初めに☆

九月場所が目前です。大相撲が始まります。先場所の横綱・白鵬の取り口について、ずいぶん騒がれました。私のところへも意見が寄せられました。多くが「ルールを明確にする」ことで、弊害はなくなるんではないかというものです。大相撲の審判部や親方衆は口を濁しました。でも、これは問題をあいまいにするとか、白鵬を甘やかすというものではなかったと思います。

ここには「闘い」というもの、とりわけ格闘技系の持つ特性があります。難しい問題なのです。白鵬が、その「難しさ」をないがしろにしてしまった、という記事になります。

 

 1 訴えないわけ

 まず私の実戦上の経験から始める。私は空手の稽古の最中、目を抜かれたことがある。幸い、それが白目の部分で、指が奥まで到達しなかったのが幸いし、「これは大変な怪我です」と病院で警告されたものの、無事に回復した。いまも右目の白目は、内側をよく見ると年輪のように指跡が残っており、この時から右目は乱視となっている。もちろん(目の)抜き手は禁じ手である。試合であれば負けが宣告される。しかし、この時の私もそうだが、反則行為があっても抗議しない。反則とはいえ「技」が入ってしまったことが重要なのだ。目をねらうのが禁じられているものの、目を無防備にしていいというものではない。私の場合、顔面をねらった拳(けん=こぶし)が開いてしまって、指が入った。その指は回避しないといけない。

 相撲で、髷(まげ)に手がかかったかどうかで物言いがつき、双方の力士が土俵下で待つという場面をよく見る。待っている力士は黙って待つ。それは審判部に一任しているからとか、作法として必要だから等ではない。髷をつかまれた力士は、反則の有無よりも負けたという事実の方に沈み込んでいる、はずだ。野球でも、ボールにヤニをつけているかチェックするのを、打者全員が果たして気にしているのだろうか、などと素人の私は思う。ヤニのおかげで回転やスピードが上がったとして、それも打たなきゃと思う選手がいないとは思えないからだ。ラグビーの試合を見た時に感じた気分の良さに、思いは共通する。シンパ~ン、いまの反則です、取ってください的アピールが全くないからだ。サッカーには無数にあるこのシーンが、私にはとても醜悪にしか思えない。それで、自分でやるのは好きでも、観るのは嫌いなサッカーとなっている。

 

 2 不可能な「作法」の改定

 相撲の48手は、足を使った「かけ」/手による「投げ」/腰を使った「ひねり」/頭を使った「そり」を基本に、それぞれの12手を「決まり手」とし、合計したものである。成立は奈良時代と言われる。この時、今では最も強い勝ち方と言われる、「押し出し」「寄り切り」が見当たらない。土俵が無かったからだ。昔の相撲は、今風にギャラリーと呼ばれる、野次馬や見物人が取り囲んだ中で行われた。興奮した群衆が、相撲を邪魔しないように設けられたのが土俵だ。そこで初めて「寄り切り」「押し出し」が生まれる。

 48手以外で、禁じ手となったのが「蹴る」「殴る」「突く」である。これが結構、難解だ。「突っ張り」は、もちろん「突く」のだが、手を開いているので「突く」にならない。「張り手」も手を開いているので「殴る」を免れる。ちなみに、顔側面を張られる時、力士はまともに耳も食らうことも多い。我々ならもちろん即死であるが、左手で右の耳を抑えられて、反対の手で左の耳に張り手を食らえば、お相撲さんと言えど脳内圧力が異常になって死にます。禁じ手なのかどうか知らないが、誰もこれをやらない。「突っ張り」はともかく「張り手」は、相手のスキを誘うものだからだ。相手を倒すものではない。「け返し」はもっと微妙だ。キックボクシングや空手の「ローキック」に見えなくもない。しかし、これも「突っ張り」と同じく、蹴りで相手を倒そうというものではない。相手のバランスを崩しながらの「投げ」が伴わないと決まらない技である。「蹴り」だけで相手を倒そうとした時には反則となる。

 つまり、その見極めとなると結構難しい。そこまではとか、それはまずいんではないかという、言ってみれば「作法」に近い暗黙の了解が、その場を仕切っている。白鵬が、先場所の対照ノ富士戦で見せた執拗な「突っ張り」はマナー違反で、相手のスキを誘う戦略を逸脱する「失礼」なものだった。マナーや作法破りを、横綱たるものがしてはいけません、という問題である。

 この部分に手を付ける「ルールの改定」なんて、始まったらきりがない。ろくなものではない。

 さあ、照ノ富士の新しい、楽しみなスタート。隆の勝は足を揃えてぶつからないこと。踏み込んで立ち会って。

 

 ☆後記☆

いやあ、長雨とは言うものの、涼しくなりました。ありがたい、ホントにありがたい。

これはまだ残暑厳しきおり、2丁目に没する太陽です。そして今、すぐ近くの大津ヶ丘の田んぼの稲穂は、黄金一色となっています。

最後は先週に引き続き、「和さび」のテイクアウト。家呑みセットと、サバの竜田揚げ&おにぎり。「和さび」のサバが食べたかった。やっぱり美味しかった! おにぎりは蕗(ふき)みそを乗せたのが、いいんです。穴子の煮凝(こご)り寄せも旨かったなあ。食欲の秋。もう1キロ太っちゃいました。

菅総理、辞めるんですねえ。


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