チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

男のきものⅢ

2010年05月19日 17時09分53秒 | 日記
学生のころからの男友達
結婚してからも家族付き合いが続いているA君
起業家としてバンバン仕事をしていたが
或るとき
「チャコチョット実家に来て」
「うん」
「親父の遺物を整理していたらきものがいっぱい出てきたんだよ」
手に取ると結城が多い
お父様も会社社長だったので大島より結城の方をお召しになっていたよう

「お袋も関知してないきものがあるんだよ」
「さては愛人に作って貰ったかなヘヘヘ」

「チャコさんこういうきもの買い取るところあるんでしょう?」
「ありますよ御紹介しますけどーー」
「ボク着るから、だから見に来てもらったんだよ」

こちらのお母様は冠婚葬祭以外きものは召さない
きものは式服としての価値しか認めていらっしゃらない
「まあ好きになさい」

背丈も同じくらいなので寸法はいぢらなくて良い
しかし箪笥と行李に入れっぱなしなのでかび臭い
「とにかく点検しましょう」

お召しは縮んで裾から裏が出ている
「こういうの直るの?」
「大丈夫、名人が居るから」
「これなんだろうこげている」
「お父様タバコお吸いではなかったわよね」
「ウン全く」
「誰かに焦がされたんだ、女かな?焼もちやかれてーー」
「遊び人だったからね親父はーー」
「あんたはどうなの」
「女房みたいな口利くなよ」
「わりいわりい」

これは当て布をすれば良い、幸い残り切れがあり
「これも完璧に直るわ」

着るのだったらどう着たいかを決めるのが肝心と
座敷に全部広げて
一枚一枚の解説を始めた

逃げ腰だったお母様も顔を出して
「そういえばこのきものはお父さんのおじいさんのものよ」
などなどきものにまつわる思い出話が始まった
久しぶりの親子会話は弾む

「チャコさん御寿司とるからもうチョットいらして」
「いいですよ、私もきものにまつわるお話は聞きたいですから」
そして
丸洗い、解き洗い、染み抜きとより分け
見積もりを出してどれを優先するかを決めることになった

途中から奥方もやってきて
嫁姑和気藹々と男のきもの談義

それからⅠ年
彼は父親の残した着物は全部手を通し
今はオークションで着物を買ったりしている
競り落としたきものは
すぐ送ってきて
「解き洗いを頼む」
と電文のような依頼書が添えられている

着続けているので目も肥えて
いいものを安く手に入れている手腕は見事

会長職になったので
きもので通勤しているという
なかなか色っぽいojiiちゃん

コメント
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