今年の3月4日は寒かった。しかし、ロシアの寒さはもっと厳しい。
この日、プーチン首相はモスクワでロシア大統領選の勝利宣言を行ったのだが、支持者を前に壇上で涙を流した。
・・・おろろいたっ!
冷徹で現実主義の彼が涙を流すとは。この人はそういう人ではなかったと思っていたのに。あの涙は何だったのか。
ここで浮上しているのが、プーチン首相の個人蓄財疑惑である。
ひそやかにささやかれている噂が、ロシア銀行の元幹部が、夜の帳にまぎれてこっそり鞄につめてもちだしたとされる書類の存在だ。そこには銀行の急成長の秘密とプーチン政権とのつながりが読みとれるそうだ。
そもそも、ロシア銀行は旧ソ連時代の1990年にソ連共産党地区支部を大株主にして創設されたが、現在の大株主はすべて首相の旧友。2000年にプーチン政権の誕生とともに飛躍的に業績がのび、04年に天然ガス事業「ガスプロム」の保険部門子会社「ソーガス」を底値で買収、06年には年金基金「ガスファンド」、翌年には金融部門子会社「ガスプロム銀行」を次々と傘下においた。買収時のガスプロム会長はメドヴェージェフ大統領、社長は腹心のアレクセイ・ミレルと用意周到だ。
首相の旧友たちは、ヤクーニンがロシア鉄道社長、アンドレイ・フルセンコが教育科学大臣と次々と出世して幹部となっていき、ロシア銀行や関連企業の株主にプーチン首相の友人や親族が名を連ね、まさに一族郎党のファミリーバンクのようだ。又、日本の柔道家も本物と認める黒帯保持者のプーチン大統領だが、柔道の稽古相手だったローテンベルグ兄弟はパイプライン建設会社を創設して、資源外交の旗印のもと、次々と伸ばすパイプの契約を獲得し続けて、今では35億ドルもの資産を保有する大富豪に成り上がった。今年の11月に開催予定のAPEC首脳会議に100億ドル、2014年のソチ冬季オリンピックには150億ドル使われ、主な契約は首相の関連企業が取った。これまでクリーンさを装っていたプーチンだが、さすがに利権構図は隠しようがなくなってきた。以前、プーチン首相がロレックスの時計をしていたのが話題になったが、そんな彼らの公表年収は1000万円台。しかも、首相や大統領官邸で26もの邸宅や敷地があり、プーチン宮殿と呼ばれる豪奢な邸宅もあり、ロシア銀行の元幹部の内部告発も銀行の収益がこれらの貢物に流れていったからだそうだ。ロシアのことわざ「魚は頭から腐る」のように。
今回の大統領選をめぐり、現地に国際選挙監視団を派遣していた全欧安保協力機構によるといくつかの重大な問題があったと不正を公表している。昨年の下院選挙では、各地でデモが多発し、数万人もの人々が参加した。勝利宣言の一方で、プーチン王朝の終焉がはじまっていると言えよう。
毎日1~2時間もの筋肉トレーニングを欠かさず、鍛えた肉体を披露したり、マッチョで力強さをアピールしてきたプーチン首相の涙に、「人間味のぞく」と評する報道も見かけたが、はっきり言ってそんな甘いことではないと私は思う。「モスクワは涙を信じない」。西側外交筋は、彼が長期政権にこだわるのは、政権を去った後に待っている刑事訴追をさけるためであり、自己保身とカネが目的と語っている。
あの涙は、ただの安堵の涙だ。本人は、風が目にしみたと弁明したそうだが、その風の向きが変わっていくのを一番実感しているのはプーチン首相かもしれない。
■アーカイヴ
・強権政治を実行するプーチン大統領の笑顔
・プーチン批判の露・元中佐が重体
・プーチン大統領が長期国家戦略を発表
・映画『ローラーとバイオリン』
・映画『父、帰る』
・映画『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』
・映画『12人の怒れる男』
・映画『静かなる一頁』
・映画『人生の祭典 ロストロポーヴィッチ』
・映画『エルミタージュ幻想』
・「自壊する帝国」佐藤優著
・「国家の罠」佐藤勝優著
・おろしや国訪問記④
・「エルミタージュの緞帳」小林和男著
・「1プードの塩」小林和男著
・「ロシアの声」トニー・パーカー著
・「完全なる証明」マーシャ・ガッセン著
・今時のモスクワっ子住宅事情
・歴史の不可避性とソビエト的礼節
・映画『モスクワは涙を信じない』
この日、プーチン首相はモスクワでロシア大統領選の勝利宣言を行ったのだが、支持者を前に壇上で涙を流した。
・・・おろろいたっ!
冷徹で現実主義の彼が涙を流すとは。この人はそういう人ではなかったと思っていたのに。あの涙は何だったのか。
ここで浮上しているのが、プーチン首相の個人蓄財疑惑である。
ひそやかにささやかれている噂が、ロシア銀行の元幹部が、夜の帳にまぎれてこっそり鞄につめてもちだしたとされる書類の存在だ。そこには銀行の急成長の秘密とプーチン政権とのつながりが読みとれるそうだ。
そもそも、ロシア銀行は旧ソ連時代の1990年にソ連共産党地区支部を大株主にして創設されたが、現在の大株主はすべて首相の旧友。2000年にプーチン政権の誕生とともに飛躍的に業績がのび、04年に天然ガス事業「ガスプロム」の保険部門子会社「ソーガス」を底値で買収、06年には年金基金「ガスファンド」、翌年には金融部門子会社「ガスプロム銀行」を次々と傘下においた。買収時のガスプロム会長はメドヴェージェフ大統領、社長は腹心のアレクセイ・ミレルと用意周到だ。
首相の旧友たちは、ヤクーニンがロシア鉄道社長、アンドレイ・フルセンコが教育科学大臣と次々と出世して幹部となっていき、ロシア銀行や関連企業の株主にプーチン首相の友人や親族が名を連ね、まさに一族郎党のファミリーバンクのようだ。又、日本の柔道家も本物と認める黒帯保持者のプーチン大統領だが、柔道の稽古相手だったローテンベルグ兄弟はパイプライン建設会社を創設して、資源外交の旗印のもと、次々と伸ばすパイプの契約を獲得し続けて、今では35億ドルもの資産を保有する大富豪に成り上がった。今年の11月に開催予定のAPEC首脳会議に100億ドル、2014年のソチ冬季オリンピックには150億ドル使われ、主な契約は首相の関連企業が取った。これまでクリーンさを装っていたプーチンだが、さすがに利権構図は隠しようがなくなってきた。以前、プーチン首相がロレックスの時計をしていたのが話題になったが、そんな彼らの公表年収は1000万円台。しかも、首相や大統領官邸で26もの邸宅や敷地があり、プーチン宮殿と呼ばれる豪奢な邸宅もあり、ロシア銀行の元幹部の内部告発も銀行の収益がこれらの貢物に流れていったからだそうだ。ロシアのことわざ「魚は頭から腐る」のように。
今回の大統領選をめぐり、現地に国際選挙監視団を派遣していた全欧安保協力機構によるといくつかの重大な問題があったと不正を公表している。昨年の下院選挙では、各地でデモが多発し、数万人もの人々が参加した。勝利宣言の一方で、プーチン王朝の終焉がはじまっていると言えよう。
毎日1~2時間もの筋肉トレーニングを欠かさず、鍛えた肉体を披露したり、マッチョで力強さをアピールしてきたプーチン首相の涙に、「人間味のぞく」と評する報道も見かけたが、はっきり言ってそんな甘いことではないと私は思う。「モスクワは涙を信じない」。西側外交筋は、彼が長期政権にこだわるのは、政権を去った後に待っている刑事訴追をさけるためであり、自己保身とカネが目的と語っている。
あの涙は、ただの安堵の涙だ。本人は、風が目にしみたと弁明したそうだが、その風の向きが変わっていくのを一番実感しているのはプーチン首相かもしれない。
■アーカイヴ
・強権政治を実行するプーチン大統領の笑顔
・プーチン批判の露・元中佐が重体
・プーチン大統領が長期国家戦略を発表
・映画『ローラーとバイオリン』
・映画『父、帰る』
・映画『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』
・映画『12人の怒れる男』
・映画『静かなる一頁』
・映画『人生の祭典 ロストロポーヴィッチ』
・映画『エルミタージュ幻想』
・「自壊する帝国」佐藤優著
・「国家の罠」佐藤勝優著
・おろしや国訪問記④
・「エルミタージュの緞帳」小林和男著
・「1プードの塩」小林和男著
・「ロシアの声」トニー・パーカー著
・「完全なる証明」マーシャ・ガッセン著
・今時のモスクワっ子住宅事情
・歴史の不可避性とソビエト的礼節
・映画『モスクワは涙を信じない』
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