千の天使がバスケットボールする

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ストラディバリが3億9千万円で落札

2006-05-18 00:07:42 | Classic
イタリアの名匠アントニオ・ストラディバリ(1644ごろ~1737年)が製作した「ハンマー」と呼ばれるバイオリンが16日、ニューヨークで競売にかけられ、354万4000ドル(約3億9000万円)で落札された。
(→「ハンマー」)
競売商クリスティーズによると、楽器では過去最高の落札額だという。

このバイオリンは1707年製作の名器で、米国を拠点に活動するバイオリニスト竹沢恭子さんが貸与を受け、約1年前まで使用していた。落札者は明らかにされていない。
これまでの記録は昨年4月に203万2000ドル(約2億2000万円)で競り落とされたストラディバリ製作の別のバイオリンだった。(5月17日)


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ストラディバリウスに関しては、もはやその楽器の購入価格や落札価格では驚かない。楽器をこえて、希少性の高い優れた芸術品なのである。時計が単なる時間を知らせる道具から、ダイヤをちりばめて宝飾品になるようなものだ。
ヴァイオリンという楽器は不思議なもので、他の楽器のように傷ひとつない新品というのは、何故か見た目の魅力に欠けるのである。あるヴァイオリニストの方が、良い楽器は”顔”も良いとおっしゃっていたが、ストラディバリウスは圧倒的に顔がよい。竹澤恭子さんが使用していたという「ハンマー」の落札のニュースから1998年カナダ・イタリア合作映画「レッド・バイオリン」を思い出した。

会場はモントリオール。まさにこれから今夜のオークションの最大の呼び物ロット・ナンバー72、ニコロ・ブソッティ1681年の作品といわれている名器バイオリンがオークションに登場する。この「天使のように優しく語り、悪魔のように淫らに誘う」という伝説の名器「 レッド・バイオリン」を競り落とそうとしているのは、高名な音楽家ルセルスキー、中国人ビジネスマンのミン、そしてオーストリアの修道院の代理人であるポープ財団の代表者だった。なんとか楽器を競り落とそうと必死な彼らを見守る男性がいる。
それはチャールズ・モリッツ(サミュエル・L.ジャクソン)だった。彼には、胸に秘めた決意があった。

1681年月の光が室内を輝かせるイタリア、クレモナの工房。バイオリン職人ニコロ・ブソッティ(カルロ・セッチ)の妻アンナ(イレーネ・グラツィオーリ)は、月の光に誘われるかのように子守歌をうたう。そのおなかの中には、まもなく誕生する新しい命が宿っていた。臨月のおなかをなでるアンナの表情は、このうえなく優しい聖女のようだ。けれどもアンナはこどもを死産し、難産のために命まで落とす。こどもに贈るために最高のバイオリンを製作していたニコロは、亡き妻をしのび最後のしあげにニスを塗る。そのニスには、妻のカタミともいえる仕掛けをする。
「奥様は、将来永い旅をするでしょう」
家政婦の占いは、バイオリンの数奇な運命を予言していた。

やがて「レッド・バイオリン」は、1792年オーストリアの修道院、音楽の才能を認められた孤児の手で弾かれるようになる。このバイオリンから離れられないほどとりつかれた少年は、王家主催のオーディションに出場するほどの腕前になる。しかし、突然の不幸が少年の命を落とす。そして、イギリスの作曲家であり演奏家であるフレデリック・ポープ(ジェイソン・フレミング)、文化大革命に荒れる中国・・・と、楽器は使用者とともに数奇な運命をたどるようになる。

そしてとうとうこの日、楽器はこのモントリオールで競売にかけられる。オークションに出品するために、ニューヨークから鑑定家のモリッツが招聘されていたのだ。彼は、「レッド・バイオリン」が、ブソッティの最高傑作であることを確信し、その秘密に気がつくのである。そして、ある事を思いつく。

この映画の主役は、楽器である。人でなく楽器を主人公にしたその発想に、まず意表をつかれる。彼、あるいは彼女は、数人のひとに抱かれ、歌い、虜にさせてしかも相手の人生を狂わせて行く。「悪魔のバイオリン」なのか、それとも至上の幸福と美をもたらすバイオリンなのか。この楽器のようにドラマチックではないにせよ、海を渡り、国境をこえた長い旅は、”オールド”と呼ばれるバイオリンの多くも同じような運命をたどっていると想像される。この映画の壮大なドラマもあながち虚構とばかりはいえない。実際パガニーニが使用していた楽器、ヤッシャ・ハイフェッツ愛用の楽器(諏訪内晶子さん所有)が現存して、現代の日本の最高級のホールに足を運べば、最高の演奏家(すべてとは言わないが)による名器のまばゆいばかりの輝かしい音に、ため息をもらすことができるのである。
こうした題材をモチーフに扱うからには、演奏家の一流、バイオリン演奏は14歳でカーネギ・ホールでデビューしたジョシア・ベル。彼はまた、パガニーニをモデルにしたと想定されるヴァイオリニストの背後から、実際に演奏をするというもうひとつの”超絶技巧”も披露している。

楽器と五ヶ国に渡る時代と風景が、美しい。服装、修正される楽器とともに時の移り変わりと長さを感じさせる演出は、よくできている。非科学的かもしれないが、やはりバイオリンにはあかるい音を出す楽器、暗く情熱的な音をだす楽器とさまざまである。昔から、そうした楽器にまつわる伝説は多い。最後のモリッツのとった行動は、観客に強い印象を残す。物語は、まだこれで終わっていない。まるで、「レッド・バイオリン」そのものが命をもち、またあらたに人間の意志を操作しているかのように。

督: フランソワ・ジラール
製作: ニブ・フィッチマン
バイオリン演奏: ジョシュア・ベル
演奏指揮: エサ=ペッカ・サロネン
オーケストラ: フィルハーモニア管弦楽団

http://www.interq.or.jp/classic/classic/data/perusal/etc/violin.html

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2 コメント

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ストラディバリ ( romani)
2006-05-20 14:53:44
こんにちは。

先日落札された楽器は、「ハンマー」と言う名前なんですね。

「ハンマー」ってあの金槌のような道具のことなんでしょうか?名前の由来も大いに興味あるところです。



レッドバイオリン、WOWWOWで私も見ました。

登場人物の描き方と展開が巧みで、とても面白かったです。

ただ、なぜレッドなのかについては、ある程度想像していましたが、さすがに「うーん」という感じも・・・。
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ドミニク・サンダ (樹衣子)
2006-05-21 13:24:54
「ハンマー」の名前の由来は、クリスティーズによると19世紀所有者のスウェーデン人からくるそうです。私は、音色からピアノをイメージするのかと思っていましたが違うようです。

竹澤さんがこの楽器を貸与されていた時は、1年に1回演奏者としてふさわしい技量と音楽性があるかを所有者に聴かせる演奏会があったと記憶しています。

新しい所有者が気になるところです。これだけの財力があるなら、投資目的に金庫にしまわれないようにと願っています。



>登場人物の描き方と展開が巧みで、とても面白かったです



よくできていますよね。「レッド・バイオリン」という名前の由来には、ちょっと安直な印象もしますがね。^^

あの施しは、科学的に楽器に悪いと思います。

ところで、貴殿のブログで懐かしい女優のお名前を発見!

「ドミニク・サンダ」

私は「家族の肖像」でその名前を知りましたが、世界でもっとも美しい女優です。「暗殺の森」も一度観たいですね。
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