千の天使がバスケットボールする

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『あなたは私の婿になる(原題:THE PROPOSAL)』

2009-10-18 11:21:34 | Movie
40歳になるマーガレット・テイト(サンドラ・ブロック)は、ニューヨークにある大手出版社の編集長を務めるカナダからの移民の成功者。彼女の地位にふさわしくとびきり優秀でやり手だが、これまで仕事ひとすじに邁進してきた日本では典型的なアラフォー世代と言われる独身女性。鼻っ柱と上昇志向の強さは、ヘアスタイル、化粧から黒いセンスのよいスーツまで完璧に装った彼女がはくマロノ・ブラニクのハイヒールの高さによく現われている。(余計なことだが、こんなに高いハイヒールをきれいにはくにはそれなりの”デカ足”がなければ決まらない。いかにも足の大きそうなサンドラ・ブロックをちょっと微笑ましく感じる。)彼女を恐れる部下たちからついたあだ名は、名誉ある”魔女”。
ところが、万事すきのない彼女が迎えたのが、ビザの更新手続きを怠ったために国外へ強制送還されるはめになりそうだという人生一大事の大ピンチ!窮余の策で思いついたのが、なんとこれまでさんざんあごでこき使ってきた12歳年下のアシスタント君のアンドリュー・パクストン(ライアン・レイノルズ)との偽装結婚。彼を狡猾にも脅すパワハラを発動して、なんとか永住権を取得し難を逃れようとする彼女は、入国管理局の追及を免れるための証拠固めに2人でアンドリューの出身地はるかアラスカ州はシトカへ結婚の報告に行くのだったが・・・。(以下、内容にふれておりまする。)

この手のラブコメに、意外な展開や予想外の結末なんぞ誰も期待しない。誰もがハッピーになれるお約束にたどり着くまでの紆余曲折の笑いどころと、最終コーナーで胸キュンのプチ感動ものを用意されていなければ映画として成功しない。いくら草食系男子とはいえ、憎い上司のパワハラにねじふせられて偽装結婚を承諾するのは不自然だと思っていたのだが、そこはアンドリュー君にとっても自分の夢を叶えるステップを用意するという利害関係の一致をひきだして、その後のストーリー展開もよくできていると感心する。マーガレットがアンドリューのことを何ひとつ知らないのは、仕事ひとすじで部下への無関心への現われであり、それが彼女の孤独な生活をも想像させる。一方、アンディは誰からも好かれそうな人畜無害なイケ面の好青年。そんな彼はマーガレットのことをよく知っていたのは、秘書役としてこれまで一生懸命仕事をこなしてきた意外と骨のある奴というポイントが、自分のフィールドであるシトカでは断然優位になってくる。エルメスのバッグを片手にヴィトンの旅行カバンを引きづりながらハイヒールでよたよたと船に乗り込むマーガレットの姿が滑稽である。従来の男女観の逆転の発想が笑いのツボであるが、フィールドの変更に伴う上司と部下の優位性の逆転という仕掛けの趣向もこらしている。偽装結婚という嘘からはじまった物語の結末は、安易なハッピーエンドともちょっと違ったひねりもあり、同じく嘘からはじまるラブコメの『お買もの中毒な私!』に比べてその後味はよい。

特別な美人ではないが、サンドラ・ブロックは男性からも女性からも人気が高い女優だそうだが、部下から魔女と恐れられつつ憎まれているように見えるが、誰もが認めざるをえない優秀な編集者であり、実は嫌いになれない魅力的な人物像を好演している。確かにメグ・ライアンに継ぐ”ラブコメの女王”という評価にふさわしい。実生活でもスカーレット・ヨハンセンとの格差婚を実行中というライアン・レイノルズが、ただ若い体とルックスだけの男のイメージに見事にはまっている。アンドリューの両親や可愛いおばあちゃん、ふたりを追及するまるで旧共産圏のKGBのような入国管理局の陰気な調査員、おっと忘れてはいけないシトカ唯一のストリッパーまでキャスティングがきちんとはまっているのも、全米で3,362万ドル(33億6,200万円)の興行収入を記録してナンバーワン映画に輝いた秘訣だろう。

厚生労働省によると初婚夫婦の4組に1組が年上妻だそうだ。女性の社会進出に伴い、旧来の夫に尽くす内助の功的な可愛い妻よりも、頼れる人生のパートナー的奥さんへの結婚観の変遷が年上妻歓迎(?)の結果だろうか。最後のサンドラ・ブロックの言葉には、女性としてもけっこうどきっとさせられた。傷ついた心を癒すのは何も家族の存在だけでなく、ひとりになることだ、、、ということもある。既成の価値観にとらわれがちな日本の社会では、結婚するにせよ、未婚・非婚を通すにせよ女性はなかなか生きにくいものだ。土曜日の初回で館内は空席だらけだったが、予想よりもずっと楽しく笑えるこの映画は、肩こりにお悩みの方にはとってもお薦め。私にとっては前ラブコメの女王のメグ・ライアンが路線変更して以来のイチオシのラブコメ。林を走るバーチャルな映像を眺めながら、早朝、自室で自転車をこいでカラダを鍛えるよりも、本物の自然の中でのんびり自転車を乗る方がはるかに肩こりには効くと思うよ。

監督:アン・フレッチャー

■アーカイブ
『幸せになるための27のドレス』


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