千の天使がバスケットボールする

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『ある公爵夫人の生涯』

2009-04-13 23:06:25 | Movie
18世紀後半の英国。ジョージアナ・スペンサー(キーラ・ナイトレイ)は、本来恵まれた美貌と健康に、母親(シャーロット・ランプリング)の営業トークも功を成し、英国の貴族社会のなかでも最も裕福とされるデボンシャー公爵(レイフ・ファインズ)の妻に選ばれた。とんでもなく大きな大きなお城の邸宅、年長で落ち着いた夫、期待に胸をふくらませる17歳の新妻のジョージアナだったが、初夜の営みも後継ぎの男児懐妊のためのオツトメだった。つまり、彼女は女、妻である前に、お後継ぎを産むため重要な任務を果たすために選ばれた”性”の存在でしかなかった。所謂名門の家に嫁ぐのは21世紀の今だってけっこう大変なんだからね。
やんごとなき身分の殿方は、おおむね他人の心に忖度したり相手の立場を考えるよりも、自分のコト、自分の関心事の方がはるかに大事。繊細で知性もある公爵夫人の感情に思い及ばず、スキャンダラスで自己中心的な行動や言動を次々と行使する。ここで反旗を翻したのが、さすがに故ダイアナ妃の祖先のジョージアナである。散財するおしゃれだけでなく、政治活動にも関心をもち、持ち前の行動力と知性を英国政治の近代化を推進するホイッグ党の応援で発揮し、やがて社交界の華として君臨していくことになったのだが。。。

今最も旬で輝いている女優といえば、全くタイプが異なるスカーレット・ヨハンセンと本作の主人公を演じたキーラ・ナイトレイだろう。豊満まお色気がはじけるスカーレット・ヨハンセンに比較し、透明感のある陶器のような美貌で華奢なキーラ・ナイトレイ。この映画は、なんと言っても1メートル以上もあるウィッグをつけたり、重いし着るのにたいそう時間もかかったという豪華な衣装と装飾品をまとい、悲しみや怒り、絶望と再生を見事に演じたキーラ・ナイトレイのまさに大輪の百合の花が咲き誇ったばかりの美しさの記録でもある。映画『プライドと偏見』では、これほどまで感じなかった美しさ、女性としての魅力に、スクリーンに吸い込まれそうである。衣装やメイクの効果ばかりではないだろう。本当に、綺麗な女性なのである。一時、拒食症と中傷されてしまった細いスタイルも、たくましく豊かな胸を誇らしげにつきだしているハリウッド女優の中では、逆に新鮮にも感じられる。

世間知らずの少女が波乱の人生の中で、しかも女性の地位がなかった時代に、才気煥発に自分の世界を切り開いていく姿は、定番とはいえ豪華絢爛の絵の中で”鑑賞”の娯楽を味わうにはうってつけの映画である。後に英国首相になる野心あふれる若い恋人チャールズ・グレイ(ドミニク・クーパー)は、私の好みではなかったのがちと残念だが。

ところで、私が一番関心をもったのが、ジョージアナの親友でありながら、彼女を裏切り、後にデボンシャー公爵の愛人になってしまうエリザベスの存在である。
感情を率直に表すジョージアナに比べ、エリザベスは暴力をふるう夫にとられた子どもたちと会うためにカラダをはって?公爵を利用しながら、”愛人”という立場を充分にわきまえ、最後は彼女のために力になりアドバイスまでする。デボンジャー公爵もジョージアナも、考えも行動も常に”I”が中心にくる。身分の差であろうか、エリザベスはいつも相手の立場にたって考え、それぞれの悲しみを引き受けて、理性的にふるまうという人間として最も成熟した役どころである。愛人・エリザベスの存在を不潔で憎い悪女に描かなかったのが、幅広い女性層の支持をえる秘訣である。ヘイレイ・アトウェルが好演。複雑な性格のデボンジャー公爵役を演じたレイフ・ファインズも適役か。それにしても、歴史は繰り返すではないが、現代の英国王室を彷彿させるようなダイアナ妃の先祖のストーリーの展開だったのはちょっとした驚きだった。

監督:ソウル・ディブ
2008年英・仏・伊製作

■綺麗!キーラ・ナイトレイのアーカイブ
『プライドと偏見』
『つぐない』


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