千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

『プライドと偏見』

2006-02-08 22:00:55 | Movie
瑞々しいベルベットのような新緑の草地に、静かに眩しい朝日が淡い光りを投げかけている。今日も、小鳥のさえずりとともにベネット家の5人姉妹が目をさます。やがて起床後のにぎやかさは、この田園地帯に響き渡るような騒々しさである。時は18世紀末の英国。いつの時代でも、年頃の娘たちのおしゃべりは実にかしましいものだ。そして彼女たちの目下の関心事は、ロンドンから遊びに来ているお隣の大富豪の独身男性ビングリーだった。なんといってもこの時代の女性には財産の相続権がないために、経済的な問題解消のための一番手っ取り早い解決方法は、結婚だった。だから俗物の母親にとっては、娘たちを本人の意志よりも相手の経済力を優先して適当なところに嫁がせることが、最重要課題だった。またそんな妻の気迫に押されて、穏やかで読書家の夫は逃げ腰である。そこへ、やってくる本物の独身貴族。母と娘たちの気合の入れ方は、それはそれははんぱなわけがないっ。

翌日、屋敷で盛大に開かれた舞踏会。母のたくらみとは別に、慎み深い美しさをたたえた長女のジェーンとビングリーは、ひとめ会った時から互いに惹かれていき恋が芽生えていく。そんな姉をかげながら応援しながらも、快活で賢く自分をもっている次女エリザベス(キーラー・ナイトレイ)は、ビングリーの親友であるダーシー(マシュー・マクファディン)の存在が気になっている。しかし踊りの輪にも加わらずにこりともせず、ダンスに熱狂する民衆を冷ややかに眺めている彼の態度と仏頂面は、なんと高慢に見えることか。やがて、彼に関して”高慢”という悪い噂が、村中に広まる。
ダーシーは、簡単に人に打ち解けられる性格ではなかった。気難しいタイプ、とも言える。ただ、彼が舞踏会でたったひとりでいたのは、そんな気性だからであり、本当は妹や友人思いでまっすぐで純粋、という高貴な身分にふさわしい美徳を兼ね備えている人物だったのだ。気にはなりながらも、エリザベスはなかなか真実のダーシーの姿を見つけることができない。そこへスキャンダルとも言える大事件が、ベネット家に勃発する。

女性が自立することがかなわなかったこの時代、女性にとって結婚が人生のすべてだった。だからエリザベスの27歳になってしまった親友は、誰も相手にしないさえないイケテナイ、もてない男のサンプル品のような従兄弟でも、結婚という合理的な手段で、両親と自分の生活を安定させる決意をする。また身分の違いが結婚の障害になりうる当時、それを乗り越えて女性が自らの意志で恋を成就させることは難しかった。そして携帯電話もパソコン通信もなく、偏見をなくして相手の真実を発見することもまた難しい。たとえ似たもの同士だとしても。
伯父夫婦と旅にでたエリザベスが、偶然ダーシーの生家を訪問する場面が、この映画の真骨頂だ。広壮な敷地に建つ大きな屋敷に入ると、そこには数多くの大理石の彫刻が静かに並んでいる。それらをひとつひとつゆっくり鑑賞していきながら、おだやかで淡い輝きを放つ芸術品に圧倒され、その芸術性の真髄にふれるうちに、彼女はダーシーを理解していく。この純粋で気高い真の芸術性が、ダーシーの”高慢”な精神と重なっていく。自分の愚かなプライドと偏見を後悔し、下品で問題のある家族と、自分の母や妹たちを辛辣に批評したダーシーをその正直さと誠意ゆえにゆるす気持ちになるのである。
そして胸にこみあげてくる真実の愛を感じながらエリザベスが部屋の奥に最後に見つけたのが、ダーシー自身をモデルとした彫刻だ。自分が知っている高慢にみえる表情を刻まれたダーシー・・・。これが、彼だったのだ。

英国の美しい田園地帯に咲いた恋の花。舞台は、豪奢なお屋敷と長身で辛口だが魅力的な男性との恋物語。これはバレンタインシーズンという季節もののお約束のような、女の子の夢見る玉の輿ヒストリーでもある。そんな手のみえた演出方法にもさめずに酔えるのは、全編を奏でるピアノの清潔で気高く、そしてたまらなく優しい響きにもある。最後の最後まで、慎ましく、けれども生まれたての朝露のような美しく品格のあるイギリスらしい映画だった。

監督:ジョー・ライト
原作:ジェーン・オースチン
『映画』 ジャンルのランキング
コメント   トラックバック (7)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「ディズニーランドという聖... | トップ | 映画「ゴジラ」テーマ作曲の... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

7 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
『プライドと偏見』 (ラムの大通り)
----これってワーキングタイトル作品なんだね。 あの『ブリジット・ジョーンズの日記』を手がけた……。 「うん。そもそも『ブリジット・ジョーンズの日記』が この原作『高慢と偏見』を現代版に仕立てたものだからね。 でもこれを観ているとき、ぼくの頭に浮かんでいたのは
プライドと偏見 (迷宮映画館)
18世紀末から、19世紀にかけて活躍したイギリスの女流作家ジェーン・オースティンの最高傑作と言われる『高慢と偏見』。「プライドと偏見」という邦題になり、『プライド』という言葉が、すっかり日本語となって、理解の助けになっている。当時の女性の生き方が、本当に
『プライドと偏見』 (フミセイロのなんちゅうことない日々。)
なぜか英国コスチューム映画大好きのヨメ。オースティンの「プライドと偏見」とくりゃ、行くしかないでしょ!今回のヒロイン役はキーラ・ナイトレイ。旬のオナゴやね。 さて、劇中何が起こるかというと…何も起こらないです。姉妹の結婚話の行方をひたすらみんなで案じる映
プライドと偏見 (腐ってもあやぽ)
(\\\'A`)<字幕で最前列は更にきつい・・・・・ この作品はテレビCMやこの作品を追った番組を見るまで見るつもりはありませんでした。ですが上記のものを見て見ることを即決しました。そして見て良かったと思いました。<B>ネタバレがあります。注意してください
プライドと偏見 (まつさんの映画伝道師)
第339回 ★★★(劇場) (核心に触れる文面あるので、ご注意あそばせ)  人気女性作家は常に時代の先を行く。  それは「流行」という意味ではなく、時代における「普遍性」を先取りするということだ。  もともと作家は「無頼」な存在だった。型にはま.
プライドと偏見 (☆彡映画鑑賞日記☆彡)
 今日は、コチラを観て来ました。興行ランキングでは下位の方だったのでゆったり観れるかなぁと思っていたんだけど、小さな劇場だったからか満席で立ち見も出てるほど。客層的には、若いカップルよりもちょっと年齢層高め?な感じ。何でも65年ぶりの映画化なので、流石...
mini review 06161「プライドと偏見」★★★★★★★☆☆☆ (サーカスな日々)
「ブリジット・ジョーンズの日記」の基になった、ジェーン・オースティンの小説「自負と偏見」を美しい田園風景を背景に映画化したラブストーリー。主演は『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』でブレ...