【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

石川達三『傷だらけの山河』新潮文庫

2010-02-15 00:40:22 | 小説
石川達三『傷だらけの山河』新潮文庫、1969年

 この作家の小説づくりのうまさには毎度,感心させられます。

 主人公は,巨万の富みを貯えた事業主(西北電鉄),有馬勝平。新たに滝山線の敷設計画を構想。秘密裏に東京近郊に電車を通す総合発展計画を目論み,土地を買い占め,レールをひき,団地,商店街を作り,地価上昇が齎した利益で,いわばただ同然で鉄道を通そうとうします。

 政治家と癒着があり,したい放題です。それを都市開発,住民へのサービス提供という大義名分で推進するのです。

 勝平は妾を3人もち,新たに貧乏画家の同棲相手,民子に条件づきで(画家をフランスに留学させる)手をつけます。勝平とその妻(順子)と息子たち,妾とその子(2人の異母兄弟),民子との関係を絡め,話は展開していみます。

 勝平はライバル関東開発公社の香月,また地元住民の反対運動を蹴散らし,電車開通に漕ぎつけます。

 他方で教育に関心を寄せ,専門学校をもスタートさせますが,入学式直前に息子で精神に異常のある秋彦が放火。都市開発の帝王が国土(土地)を荒廃させ,個々の人間をも蹂躙し,犠牲にしていくさま,物神化した資本の剥き出しの本性を暴いた大衆小説です。575ページ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿